先輩たちの独立事例集

先輩たちの独立事例集


柏木 珠希さんの写真

独自の経験を後進に
提供するエステティシャン

Salon de Loge(サロン ドゥ ロージュ)/東京都中央区
山田 陽子さん(48歳)

やまだ・ようこ/青森県出身。大学卒業直後に結婚し、岩手県で家業を手伝いながら子育て中心の生活を送る。それが落ち着いた時に離婚することになり、美容の世界で経験を積むために上京。2カ所のサロンでの勤務経験を経て、エステティシャンとして独立。

独立準備のがんばりどころ

離婚を機に憧れだった美容の世界を目指して上京

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ボディートリートメントのほか、染色メイクなどのアイメイキング®(登録商標取得)も提供。タオルや専用ガウンなどは、ベージュや茶色のものを使い、大人っぽいシックな雰囲気に

40代後半でエステティックサロンの開業というのはちょっと遅い独立といえますよね。ですから、エステティシャンとしての技術でサービスを提供する以外、さらに私にしかできない付加価値とは何かを考えて独立しました。というのも、そもそもエステティシャンとして仕事をスタートしたのが40歳過ぎ。勤務先では年齢なりにたくさんのことを任せてもらえたため、そこで経験してきたことが独立後に大いに生かせると思ったのです。

私は大学卒業後すぐに結婚しましたので、仕事の経験といえば嫁ぎ先の家業を少し手伝うくらいしかありませんでした。当時からメイクやネイルなど、美容に関することには興味があって、雑誌などを参考に「いつかこんなことが仕事にできるといいな」と、見よう見まねで勉強していたんです。でも、住んでいたのは岩手県の中心地から離れたとある地域。エステティックサロンなど一軒もないところで、現場で美容に関する知識や技術を得たいと思っても無理。そうこうしているうちに離婚することになりまして、それを機に東京に出て、憧れの美容の世界で仕事をしようと決めました。幸い、ふたりの子どもたちが進学のために先に上京していたこともあり、孤独感もなく、逆にワクワクしていたことを覚えています。

勤務先のサロンで新店舗の立ち上げに奔走。その経験が後の開業に役立つことに

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サロンは凹凸の多い変形のワンルーム。その出っ張りになった4畳ほどのスペースを施術専用に使うことで、手前のスペースをカウンセリングの場として使い分けることが可能に

40歳をすぎての上京です。わかってはいたのですが、未経験の私がエステティシャンの仕事に就きたいと思っても雇ってくれるところはありません。それでも、会社の一般事務としてパートで働きながら、どこか雇ってくれるサロンはないかと探し続けました。最初に私を採用してくれたのは、エステティシャンの養成スクールも運営しているサロンです。ちょうど私が入社した年に日本エステティック協会の認定校になったこともあり、オーナーから「あなたもさっそく認定資格を取って」と。

仕事をしながら資格取得に挑戦することになったのですが、スクールに通っているのは私より若い女性ばかり。オーナーは「あなたが資格を取った暁には、若い人たちに指導をする立場になってほしい」と、大きな期待を寄せてくれました。無事、資格を取得できて、そのサロンには4年間勤務。その間は、お客様への施術以外に、新店舗の立ち上げや新人教育にも挑戦させてもらいました。その当時は、土日にも地方へ出張することが多く、とても忙しい日々を送っていましたが、体で覚えたノウハウが後の開業のために大いに役立ちましたね。

サロンとしてのスペースを、美容の世界で活躍する若い人たちにも提供したい

サロンの立ち上げをいくつも経験し、自分もいつかはサロンオーナーにと考え始めました。でも、もっといろいろな技術を身につけようと、アートメイクの勉強も。さらに、それまでの勤務先とは違ったコンセプトのサロンで経験を積んでみようと、東京・青山に本店がある、富裕層向けのサロンに転職しました。そこはアートメイクも提供するサロンだったので、技術を身につけたばかりの私を即戦力として歓待してくださいました。以前のサロンは、あらゆる層のお客様を受け入れる敷居の低いサロン。一方、新しい勤務先はお客様にお出しするお茶のグラスさえも、高級レストランのように一点の曇りもないようなサロン。同じエステティックサロンでもこんなにも違うのかと、とても勉強になりましたね。

やっと開業を決意したのは、「山田さんにやってほしいから、自宅に出張してほしい」と言ってくださるお得意様が増えてきたからです。要望に応じてちょこちょこと通っていたのですが、通いだとサロンに設置してあるスチーマーなど大型の機材は運べません。そんなこともあって専用スペースを持つことを決意し、本格的にサロンを開業したというわけです。このスペースは今後、エステやネイルなど美容業界でフリーランスとして頑張っている若い人たちに提供していくことを考えています。私がこれまで培ってきたノウハウも、たくさん教えてあげたいですから。今、そのネットワークづくりの真っ最中ですが、いつかここで出会った仲間たちと一緒に、企業に出向き短時間のエステやネイルアートを提供しようと企画しているところです。

取材・文 / 田村 康子 撮影 / 加納 拓也

ちょっと気になる10問10答

  • なぜ独立した?

    エステティシャンとして働き始めてからいつかは独立することを夢に描いていました。独立を決意したのは、「ぜひ山田さんに」と、私個人の技術や人となりを信頼してくれるお客様からの要望に背中を押されてという感じです。また、サロンの立ち上げや後輩の指導など、勤務時代に培ったものを若い人たちに還元するのも私の使命だと。そんな思いもありましたから。

  • 開業資金は?

    約100万円です。サロン用のワンルームマンションの物件取得費、それと施術用ベッドを2台、電話機とディスプレー棚の購入費。100万円はほぼ使い切りました。運転資金を用意しなかったのは、知り合いのサロンのリニューアルや出張サービスの仕事などで確実な収入の見込みがあったから。当初からその収入を運転資金とする計画でした。

  • 開業資金はどう集めた?

    すべてそれまでの貯蓄です。借金をしてまでという思いはまったくなく、あくまでも自己資金の範囲内でと考えていました。

  • 周囲の反応は?

    誰も反対する人はいませんでした。兄からは「お前は商売向きではない」と昔から言われていたのですが、そんな兄でさえ「頑張ってやってみなよ」と。兄は、開業することを私が伝える前に実家の母から聞いていたようです。母が「本気で取り組もうとしているから応援してやって」と兄に言ってくれていたのだと思います。

  • 不安だったことは?

    実は、お金の計算が大の苦手……。幸い税理士をやっている友人がいろいろとフォローしてくれました。「毎月必ず出ていく経費は家賃だけじゃなくて、電気代や水道代なんかもあるんだからね」などと、ものすごく当たり前なことまで念押ししてくれて(笑)。また、帳簿付けの際に課目をどのように分けるのかなど、経理の基本も教えてもらいました。今後も経理に関しては頼りにしていこうと思っていますが、そんな仲間がいることにとても感謝しています。

  • 役立った情報源は?

    起業関連のセミナーで得た情報が大きいですね。ノウハウ的なことはもちろんですが、もっとも大切だと感じたのは、あれもこれもとあらゆることに手を出すのでなく、自分自身の強みを見つけ、そこに集中すること。参加者全員がどうするかを考えて発表したのですが、業種は違えど、たくさんのアイデアを聞けたことがとても参考になりました。その時の仲間たちとの交流が今も続いており、電話やメールで近況報告するなど、お互いに情報発信することも刺激になっています。

  • 相談相手は?

    今も、最初の勤務先のサロンの社長には何かと相談に乗っていただいています。たとえば接客方法に迷いが生じたら、「こんな時はどうしたらいいでしょうか」とメールで相談。また、アイメイキング®(登録商標取得)の先生は大阪にいらっしゃるのですが、上京される機会も多いので、その時には必ずお会いして食事をしながらあれこれとヒアリング。自分が経営者となってからも、先輩、そして先生として、気軽に相談に応じてくださるんです。本当に感謝しています。

  • 独立して一番困ったことは?

    開業からそんなに時間がたっていないので、泣きたいほど困るようなことはまだないですね。何に困っているのかがわかっていない状況なのかも(笑)。そうそう、実はパソコンも苦手でして……。メールのやりとりや情報の検索くらいはできるのですが、今後は業務管理のソフトを使いこなしたり、ホームページもつくりたいので、本格的に勉強しなければと。これも、パソコンに詳しい友人たちに力を借りることになりそうです。

  • 独立して一番良かったことは?

    エステティシャンとして勤務していた頃のお客様に、「これでいつも山田さんにやってもらえる」と喜んでいただけたことが一番嬉しいです。それと、開業を決意してから今日まで、様々なことを深く細かく考えることで、自分の進むべき方向がはっきりとしたことです。私がやるべきことはサロンで大勢のお客様を迎えていかに収益を挙げるかではなく、同業者の仲間とネットワークをつくって、お互いの仕事をいい方向に導いていくこと。独立を決意しなければ、気付かなかったことだと思います。

  • 独立を志す人へのメッセージ

    開業のためにいろいろと準備を進めて、あとは決意するだけというタイミングで躊躇してしまうとしたら、時期尚早だと思ったほうがいいです。ただし、自分に足りないのは勇気だけだとわかっていたら、ちょっと背中を押してくれそうな人にあえて近づくようにするといいですよ。また、「自分の考えていることや準備はこれでいいの?」と不安になったら起業関連のセミナーに参加することをお勧めします。私が参加したセミナーの受講期間は3カ月間。最初は、「3カ月ってけっこう長いな」と感じたのですが、始まってみるとあっという間のこと。その短期間で、自分の進むべき方向が確認できたり、一緒に開業を目指す同志ができたり。セミナー参加で得るものは、知識やノウハウ以外にもたんさんありますから。

開業
2008年6月

開業資金
100万円

従業員数
1人

年間売上高
開業1年未満のため実績なし

アクセス
yoko422.yaya@estate.ocn.ne.jp


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