先輩たちの独立事例集

先輩たちの独立事例集


山下朋美さんの写真

少人数制でプロ養成も行う
チョークアート教室

ARTiSTiC・ChAlk(アーティスティック・チョーク)/名古屋市北区
山下朋美さん(33歳)

やました・ともみ/三重県出身。短大卒業後、6年間続けた医療事務を辞め、チョークアート発祥の地オーストラリアに留学。普及と発展を目指す協会を2005年に仲間と立ち上げ、2007年に独立。同年に長男・隆之介くん出産。書道も趣味で師範格の腕前。

独立準備のがんばりどころ

将来の起業を前提に、オーストラリアでチョークアートを学ぶため留学

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メニューボードや店舗の看板、婚礼のウェルカムボード、インテリアにも人気。特殊なチョークで描き、コーティング仕上げをするので触っても色落ちしない

手に職を付けたいとずっと考えていたんです。もちろん医療事務も専門的な仕事ですし、やりがいもありました。でももっと自分にしかできないことで、まだ確立されていない新しい分野に挑戦したかったんです。そう思ったのは、勤務先の病院で患者さんと接していたから。自分は健康で何ら問題なく生きている。健康に感謝しつつ、もっともっとこのエネルギーを使って生きないといけないと思ったんです。

留学を考えた時に、何か将来の職につながるもの、生き方が変わるようなものを探そうと。それで出合ったのが、カフェのメニューボードなどに文字やデザインを描くチョークアート。その瞬間、「これだ!」って思ったんです。そして、オーストラリアのゴールドコーストにある作家さんのアトリエで1カ月半、朝から夕方までみっちりプロフェッショナルレッスンを受けて卒業。すぐ描き始めないと感覚が鈍ると思い、観光もそこそこに予定を早めて帰国しました。

最初は様子見から副業でスタート。創作活動&飛び込み営業で徐々に認知へ

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教室は名古屋のアトリエで開校。1クラス4人までの少人数制で個々のレベルに合わせて指導。楽しく学ぶ基礎コースから独立を目指すプロコースまである

すぐに独り立ちできるとは思っていなかったので、まずは副業で制作活動しようと決め、医療事務の仕事をしながら練習と営業活動に励みました。クラフト展やクリエーターズマーケットなどに出店して反応を見たのですが、「キレイ」とか「面白い」とか言ってもらえるけれど、オーダーは取れなくて。「そもそもチョークアートって何?」という状態。ひとりでも多くの人に知ってもらうしかないと、休みの日にチラシとサンプルを持ってカフェなどに飛び込み営業。もちろん、今でも暇を見つけては営業を継続しています。

これまで営業などしたことありませんから、試行錯誤ばかりで、最初の頃は冷遇されて落ち込んだり……。でもそのうち、「木曜日の午後かランチの前が比較的会いやすい」という独自の法則を見つけましたよ(笑)。東急ハンズ名古屋店にも営業へ出向き、フロアにサンプル作品を置かせてもらうことに成功。その効果ではないのですが、Webサイトを見た人から「習いたい」と依頼があったのをきっかけに、四日市の知合いに場所を借りて教室を開始。オーダーも徐々に入るようになり、早く本業として専念したい、自分のアトリエを持ちたいと思っていました。

アトリエを持ったことを機に正式に独立。チョークアートの普及を使命に邁進

チョークアートはスプレーも使用するので、アトリエ用の物件探しにきっと時間がかかると余裕を持って下見を始めたら、意外にもすぐにぴったりな物件が見つかって、思い切って正式に契約し、独立しました。その時は知らなかったのですが、実は妊娠していたんです。独立を延期しようとは考えずに、産休は4カ月と決めて予定どおりに復帰。「そんなに頑張らなくても」と、言われたこともありますが、自分の本気度を常に自問自答する性格なんです(笑)。 21歳で始めたスノーボードでは、ハーフパイプの大会に出場したり、プロと一緒にキャンプで練習したりしていました。恐怖心は滑りにすぐ影響するので、「気持ちで負けたら終わり!」ということを学んだのでしょうね(笑)。

私の場合は独立日を決めて計画的に準備したのではなく、反応を確かめながら、できる範囲内で少しずつ今の状態をつくってきたんです。計画が立てづらく、孤独に感じることもありましたが、一歩ずつやるしかなかったですから。まだまだより多くの人にチョークアートの楽しさを広めなくちゃと思うし、いつか、ワンポイントレッスンと作品集を兼ねた本を出す夢もあるんです。

取材・文 / 岡部 恵 撮影 / 鈴木 貴志

ちょっと気になる10問10答

  • なぜ独立した?

    副業で教室を始めたのは、ウチのWebサイトを見た人から「習いたい」という問い合わせがあったからです。チョークアートの魅力を私ひとりで広めるには限界がある。教室で描く楽しさを知ってもらえば、生徒さんからも広めてもらえる。認知度も向上すると思いました。それから徐々に生徒数が増えて責任感も増大。アトリエが見つかった時に「もうけじめを付けよう!」と思い、医療事務の仕事を辞めて正式に独立を決断しました。

  • 開業資金は?

    開業資金は50万円です。アトリエの賃貸契約料で36万円、運転資金10万円、残りはイスや机などの備品購入費です。独立する以前にさかのぼれば、オーストラリアの留学費用で56万円(航空券など含む)、画材購入費などで30万円ほどかかっています。

  • 開業資金はどう集めた?

    すべて貯蓄です。ちなみに留学費用は退職金を充てています。

  • 周囲の反応は?

    家族も夫も驚いてはいましたが、特に何も言われませんでした。結婚式の日取りを決めてから留学しましたし、結婚後の活動に関しても、私の性格をよくわかってくれているからでしょう。出産後、平日のレッスン日は実家で子どもを見てもらっています。日曜日もレッスンがあるので、その日は夫が子守をしてくれます。家族の応援が何よりありがたいですし、家族の協力なしでは今の私はありません。

  • 不安だったことは?

    日本ではチョークアートがほとんど認知されていなかったので、どうアプローチしていけばいいか手探り状態で不安でした。でも、ともかく自分で動いて、まずは知ってもらうしかないと。今でもそう思って行動しています。

  • 役立った情報源は?

    商工会議所の起業セミナーに参加しましたが、利益を出す計算式や仕入れの方法など、私のビジネスに当てはまる内容ではなかったですね。正式に独立してからは、名古屋の女性交流会に入会しましたが、これをもっと早く知っていれば(笑)。起業前からいろんな立場や業種の集まりに参加して、人脈を広げて情報を交換し合うことはきっと役立つと思います。

  • 相談相手は?

    家族や友人にはあまり相談しませんでした。「結局は決めてあるんやろ」とよく言われますが、そのとおりですから(笑)。現在の相談相手というか仲間は、私が副会長を務めている「CAA日本チョークアーティスト協会」のメンバーたちです。2005年10月に、チョークアーティストの熊沢加奈子と共に、この協会を立ち上げたんです。会員数は現在40人で、年に1回グループ展を開催したり、会員専用サイトのBBSで叱咤激励し合ったりしています。

  • 独立して一番困ったことは?

    時間が足りないことです。自分が描きたいものを描いていればいいというわけにはいきませんから。教室だけでなく、オーダーもありますし、帳簿を付けたり、案内のDMを出したり、Webサイトも自分でつくりました。何もかも自分ひとりでやっているので、困ったというか大変です。各業務の時間配分と効率化が、今後の課題でもあります。

  • 独立して一番良かったことは?

    徐々にですが、チョークアートが知られるようになってきたことです。教室を運営していて嬉しいのは、生徒さんの喜びと頑張りを共有できること。愛知県内だけでなく大阪や滋賀から新幹線で通ってくれる熱心な生徒さんもいるんですよ。責任も充分に感じてますし、「その思いに応えたい!」とやる気が出ますね。また、プロ養成コースを卒業して、作家さんとして独り立ちしてくれた卒業生も5人ほどいるので、そういう存在も嬉しいです。

  • 独立を志す人へのメッセージ

    やりたいことに出合ったら、とにかく何かひとつでも具体的にアクションを起こすことです。誰かに話してみるのもいいし、資料を集めてみるのもいい。頭の中にアイデアだけがあっても、何も動かないでいたら、結局はどんなアイデアがあろうと、ないのと同じことですから。小さな子どもを持つママにも、少しずつ準備すればいいとエールを送りたいですね。私は、人生はリハーサルじゃない、と思っているんです。そう考えると、前に進めないってことがなくなりますよ。

開業
2007年1月(副業開始は2005年1月)

開業資金
50万円

従業員数
1人

年間売上高
220万円(2007年12月実績:4カ月間産休)

アクセス
http://www.artisticchalk.com/


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