先輩たちの独立事例集

先輩たちの独立事例集


北田耕嗣さんの写真

お茶を楽しみ旅の相談もできる
トラベルカフェ

journey(株式会社トラベルマーケット) / 岩手県盛岡市
北田耕嗣さん(34歳)

きただ・こうじ / 岩手県出身。観光ビジネスの専門学校を卒業後、旅行会社に入社。10年間、法人営業やツアーコンダクターなどを経験する。2年間の独立準備期間を経て、東北初のトラベルカフェを開業。趣味はもちろん旅行で、タイがお気に入り。

独立準備のがんばりどころ

タクシー運転手をしながら、起業と観光業について勉強

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元コンビニの店舗は40坪という広さ。アジアを感じさせる木製家具やヨーロッパのシャワー室のような空間も。旅行雑誌や書籍が並び、旅気分が盛り上がる

旅行会社を退職した時点では、自分らしい旅行業がしたいという思いくらいで、トラベルカフェをつくる構想はまだありませんでした。そこで、旅行会社時代に障害のあるお客さまをお連れする機会が多かったことから、福祉と旅行をつなげられないかと。まずは、介護ヘルパー2級と、タクシーの運転に必要な普通2種、バスの運転で使える大型2種の免許を取得することで、自分がチャレンジできる仕事の幅を広げました。

ただ、妻子もいましたし、仕事をせず準備ばかりすることもできませんから、タクシー運転手をしながら、起業セミナーなどに通うなどして情報収集していきました。タクシー運転手の仕事って、勤務時間がはっきりしているので、自分の時間がつくりやすいんですよ。それに、ご高齢のお客さまの中には行き先を旧町名で言われる方もいて。生まれ育った盛岡市の知らない一面が見られたりと、観光という面でも非常に勉強になりました。さらに、タクシーで街を走りながら物件探しもできるんです。一石二鳥以上のメリットがありましたね。

フェイストゥフェイスの重要性を感じ、トラベルカフェ開業を決断

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カフェスペースの横に、コンシェルジュスタッフが常駐する旅行カウンターを設置。お茶を飲みながらゆったり相談できると、女性やハネムーンの人気も高い

タクシー運転手をするかたわら、旅行の相談に乗るWebサイトにアドバイザーとして登録し、フリーランスとして旅行アドバイザーの仕事を開始。最初は自宅でやっていたのですが、子どもがまだ幼く仕事に集中できないことや、起業のアドバイスがもらいやすい環境をつくりたいと思い、盛岡市産業支援センターの「創業支援室」にオフィスを構えました。これが正解! 仕事にも集中できましたし、先輩起業家やインキュベーションマネジャーにも相談できましたからね。

そんな時、カフェ雑誌で東京にあるトラベルカフェの存在を知り、実際に見に行ったんです。Webで旅行アドバイザーをしたことでネットを使った利便性はよく理解できましたが、フェイストゥフェイスで旅の相談をすることもまた、こと地方都市においてはさらに重要だと実感。そして、トラベルカフェをすることを決断。その後、飲食店でホール係としてアルバイトをすることで、カフェ仕事の経験を積みました。

店内は旅に出たくなる気分を盛り上げる内装で、バリアフリーに

30・40代の方々に来てもらえる店にしたいと、店舗物件は若者の多い繁華街から少し離れたところで探しました。物件探しも周辺調査も、もちろんタクシーを運転しながらです(笑)。岩手県民は全国でも有数の「旅に出ない県民」といわれていますが、そんな人でも旅に出たくなるよう、内外装は外国っぽい雰囲気を出し、旅にまつわる本を置いたり、旅行グッズなども販売。最初の構想にもあった福祉も意識して、店内はバリアフリー設計をほどこし、ユニバーサルトイレも導入しました。

お客さまがゆったりコーヒーを楽しみながら、スタッフと旅の話題で盛り上がっているシーンを見ると、すごく嬉しくなりますね。最近は、県外の人には岩手の魅力をもっと知ってもらえるよう、歴史や伝統が堪能できる体験型の旅行プランも提案。地域の人には旅に出たくなるよう外国の伝統音楽のイベントを開くなど、県外の人とのつながり、地域のつながりを大切にしています。

取材・文 / 石田恵海 撮影 / 佐々木 浩

ちょっと気になる10問10答

  • なぜ独立した?

    私が旅行会社に勤めていた頃はネットも今ほど発達してませんでしたから、お客さまに勧める旅情報も古いというか……。10年前と変わらない現地情報を提供してる、なんてこともありました。また、たとえば社運をかけてつくったようなプランは、「お客さまにイチオシしなさい」といわれますが、それがお客さまの希望とマッチしない場合も当然あるわけです。旅は自由を楽しむものだし、お客さまが体験したいことはできるだけかなえたい。でも会社側の都合でそれができないのは、どうにももどかしくて。旅に出る前も帰ってきてからも旅を楽しめるような、そんな空間がつくりたいと思っていた時、東京にあるトラベルカフェの存在を知って、「これだ!」と起業を決めました。

  • 開業資金は?

    2350万円です。そのうち150万円が物件取得費で、1150万円は内外装と設備費などに充て、店づくりで1300万円使いました。残りの1050万円は運転資金です。

  • 開業資金はどう集めた?

    700万円は旅行会社時代の貯蓄で、400万円は家族と旅行会社時代の同僚の出資です。そして、その1100万円を元手に、起業家支援に熱かった岩手銀行から1200万円の融資を受けました。残りの50万円は、岩手県主催の事業プランコンテスト「いわてビジネスグランプリ」で、グランプリを受賞して得た賞金です。

  • 周囲の反応は?

    自分を追い込むためにも、友人たちに起業プランをずっと話し続けていたので、反対もなく、むしろ「早く始めれば」とせかされていたくらいでした(笑)。家族にも反対はされなかったですが、心配はされてましたね。なので、事業プランコンテストのプラン発表の場に家族を呼んで、事業を冷静に見てもらいました。グランプリを獲得できたことが安心材料になったようです。

  • 不安だったことは?

    トラベルカフェって、旅行業と飲食業のふたつの事業をするわけじゃないですか? いくら長く旅行会社に勤めた経験があっても、飲食店でバイトして経験を積んでも、どんだけビジネスについて勉強しても、「やっぱり一か八かの賭け」という不安感はありましたよ。ただ、旅行会社の営業職としてパンフを持って企業を回っていた時も邪険にされることはなかったですから、嫌われるような職業ではないなと。また、東北にはトラベルカフェはなかったですから、「そもそも受け入れられるんだろうか?」という不安もありましたしね。なので、まずは地元で認知されることを目標としました。

  • 役立った情報源は?

    『アントレ』や『独立事典』を長く読んでました。「雇用能力開発機構いわて」で実施していたセミナー「アントレプレナーDo it」に参加したのですが、その情報も『アントレ』で知ったんですよ。また、独立準備中は盛岡市産業支援センターにある「創業支援室」にオフィスを構えることで、インキュベーションマネジャー(IM)や入居する先輩起業家からアドバイスをもらいました。いわて産業支援センターではビジネスプランコンテストで賞金も! 情報源といったらたくさんありますが、自治体の支援は大きかったと思います。

  • 相談相手は?

    やはり、同僚や先輩起業家、盛岡市産業支援センターのIMですね。同僚からは出資を受けていますし、先輩からは起業家としての心得や大手企業とどう付き合えばいいかといったノウハウを、IMからは会社設立の手続きやダンドリなどをていねいに教えてもらいました。また、異業種交流会やセミナーなどにも頻繁に顔を出して、ビジネスのヒントを得るようにしていましたね。

  • 独立して一番困ったことは?

    先にも言いましたが、旅行業と飲食業のふたつの事業を運営するわけで、どちらも100%の力を発揮するのはかなり難しい。オープニング時は、どっちつかずになっていたような気がします。これが反省点ですね。もっとしっかりバランスを考えておくべきでした。

  • 独立して一番良かったことは?

    上司にお伺いを立てることなく、チャレンジしたいと思ったことを自分で決断して、自分で責任を取れるのが気持ちいいですね。起業してから、前勤務先の上司が言っていたリスクヘッジの重要性が理解できました。「会社員時代に理解しとけよ!」という話ですが(笑)、頭で理解していたことが体でわかったということでしょうか。

  • 独立を志す人へのメッセージ

    起業は誰でもできると思うんです。やるかやらないかだけで、紙一重。でもやるからには、失敗を避けたいですから、しっかりした準備が必要です。人からアドバイスをもらうことも大切な準備のひとつ。なので、アドバイスをもらいやすい環境づくりをすることを考えておくべきだと思いますよ。私は自治体の施設に入居して、先輩起業家やアドバイザーがいる環境に身を置いたり、交流会にマメに参加したりすることで、その環境をつくりました。起業後の人脈構築にも役立っていますよ。

設立
2005年11月(オープンは06年3月)

資本金
950万円

従業員
4人

年間売上高
1億1000万円(2007年12月実績)

アクセス
http://www.travelmarket.jp/


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