たかはし・けんいち / 岐阜県出身。大学は法学部で離婚に関する問題を研究。独立志向が強かったが、何事も営業力が重要と考え自動車ディーラーに就職。女性客をメインにトップ営業となり、独立。写真撮影にヒーリング音楽鑑賞、読書と多趣味。
離婚公正証書の作成実績は「岐阜県ナンバーワン」と役所の担当者に言われたほど。オリジナルの相談書をつくり、カウンセリングしやすいよう工夫している
開業準備に1年間かけました。行政書士の資格を取ったからといっても、あくまでも資格取得のための勉強をしたにすぎませんから。実務書を読んだり、セミナーに参加したりと、仕事で使える知識や経営ノウハウを学んでいきました。また、少しでも行政書士事務所で修業ができればと考え、カーディーラー時代に身に付けた営業力を生かして、タウンページで「あ」から始まる中部地方の行政書士事務所に片端しから「従業員を募集していませんか?」と電話をかけていきました。
結果は全没。やはり行政書士事務所はひとりで運営しているところが多く、「従業員を雇うほどでもない」と。しかし、この電話営業は無駄ではありませんでした。電話をかけた中に岐阜県行政書士会の会長さんがいらして、若手の行政書士が集まる会を紹介してくれたんです。その会に入って、現役の先輩からノウハウを学んでいきました。
オフィスはアクセスの悪い立地だが、遠方から訪れる顧客も多く、遠くは中国・上海からも。離婚問題を多く扱っていることで、母子家庭支援も始めた
一方、独立準備しながら行っていたアルバイト先のギフト商品の販売会社では、ボランティアで離婚相談に乗って実務経験を積んだり、前職のカーディーラーから車庫証明の書類作成の仕事を任せてもらえる確約を取るなど、経験や人脈を生かすことも忘れませんでした。
さらに、異業種交流会にも積極的に参加して、先輩起業家たちとの人脈を構築。また、読んだビジネス書の著者が講演をすると聞くと、必ず参加。吸収できることはすべて吸収しようという意気込みで1年間を過ごしました。ところが、そこまで独立準備をしても、独立後はなかなか仕事がなかったのです。
独立してすぐ立ち上げたWebサイトは、集客のためというよりも告知程度のものでした。扱う業務をとにかくたくさん並べて一覧にし、クールだろうと思って背景にした黒色は、今思えば怪しさ満点(笑)。それを大幅リニューアルしました。離婚問題に特化して専門性を大きく打ち出すことに決め、離婚の多い世代を調査。離婚カウンセラーを職業にする人のサイトを多数見て特徴をつかんだり、顧客はどんな情報を欲しがっているのかを調べたりと、徹底的にマーケティングしたうえで、サイトをつくり直したのです。
それが功を奏しました。サイトをリニューアルした途端、田舎の小さな自宅兼オフィスの行政書士事務所に、毎日、離婚相談が持ち込まれるようになったんです。たくさんいる行政書士の中で自分を選んでもらうには、しっかりとしたマーケティングを行って専門性を打ち出すことが重要ですね。それはきっと、どんな事業でも同じといえるのではないでしょうか。
もともと独立志向が強いほうでした。大学では離婚の法律や判例を専門に研究していましたし、自動車ディーラー時代は女性客からのウケが良く、知識を生かして離婚の相談に乗ることもあったんです。また、行政書士は資格が取りやすく、独立しやすい。また、契約が絡んだ仕事がしたかったんですね。そんな自分の特性と、やりたいこと、独立しやすい環境を考え、離婚問題に特化した行政書士として独立する道を選びました。
30万円です。行政書士の登録費用で20万円。パソコン周辺機器や名刺の印刷代などで10万円です。自宅兼オフィスだからと甘く見て、運転資金を用意しなかったのが痛かった。後で、ジャブのように効いてきました(笑)。
会社員時代の貯蓄と、資格取得のために勉強していた期間にしていたアルバイトでつくった貯蓄です。
両親や親戚は大反対! 親戚の多くは公務員ですし、安定した仕事に就くよう望んでいましたから、かなり止められました。しかし、祖母が「取りあえずやらせてみたら」と説得してくれて、どうにか押し切って始めたという感じです。独立後、地元の新聞に大きく取り上げてもらったことで、やっと認めてもらえました。
仕事があるかどうか。これ一点ですよ。勉強のために起業しようとしている人の物件探しに同行したりして、独立直前の準備をリアルに体験させてもらったんです。ところが、私が独立する時にその先輩起業家に連絡したら、「いや、実は倒産したんだ」と逆に報告されて……。こちらは独立直後ですからやる気満々なのに、その報告でかなりブルーになりました(笑)。営業力もあって、この人は成功するに違いないと思っていた人だったので、めちゃくちゃビビリましたね。
地元の商工会議所で開催された経営セミナーや異業種交流会。また、経営コンサルタントの栢野克己さんなど、読んだビジネス書の著者講演などに積極的に参加して経営ノウハウを学びました。また、実務などは行政書士のメーリングリストが役立ちました。行政書士はスタッフを雇わずひとりでやっている人がほとんどで、資格取得後すぐ独立する人が多いんです。私も行政書士として勤務経験なく独立したので、自分の同じ状況で独立して3年くらいの人の話は非常にリアルで参考になりました。
所属していた異業種交流会のメンバーや、セミナーなどで出会った講師の方々です。また、社会保険労務士が友人にいたので、同じ士業として、しょっちゅう相談に乗ってもらっていましたね。
仕事がなかったことです。「資格取っても、仕事なし」とは、我々士業を指す言葉ですが、本当にそう。最初の1年はなかなか……。そこで、Webサイトをリニューアル。女性のクチコミ威力は絶大で、サイトで訪れた人の紹介の紹介と、遠方からも顧客が来てくれるようになりました。
自分のペースで仕事が組み立てられることと、お客さまからダイレクトに感謝の言葉をいただけることです。お金をもらっているのに、毎日、感謝の言葉がもらえるんですよ! こっちがお金をお支払いしたいくらい(笑)。これは本当に嬉しいことですね。
地方の行政書士は、Webサイトを持っていない人がまだまだいますが、集客には必須ですよ。こちらから出向く営業では顧客獲得は難しい。ブログやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)など無料で使えるものもありますから、マーケティングノウハウをよく勉強して、そういったツールを使い倒しましょう。また、これは誰にでもいえることですが、他人よりも秀でていることが必ずひとつはあります。自分としっかり対話してこれまでの人生の棚卸しをすることで、自分の特性や特技を見つけてください。私が女性の相談に乗るのが得意であるという強みを発見して、それを事業に生かしたように。
独立した先輩の体験エピソード&独立支援情報