ながお・りか / 千葉県出身。海外旅行で体験したカフェに興味を深め、妹と共に企画したカフェをオープン。ブログでは、店のことだけでなく、お気に入りのスィーツや雑貨などを愛情を込めたコメントで紹介し、顧客とコミュニケーションを取っている。
カウンター横のラックは小さな雑貨コーナー。マロネのオリジナルリネン類や、契約している作家たちの手づくり雑貨など、このコーナー見たさに通うファンも多い
妹と海外旅行に出かけるたびに、おしゃれなカフェや雑貨屋さんをはしごしてたんです。もちろん、パリやロンドンのカフェも素敵でしたが、特に台湾のカフェで出された料理やお茶に大感激。こんなメニューが出せるお店をやりたい、インテリアには北欧の家具を取り入れたいよね、などと、ふたりの理想のカフェを思い描いていきました。
当時、歯科衛生士として病院に勤めていたので、仕事はとても安定していたんです。それでもカフェを開業したいという思いが常に心の中にありました。そんな時に妹が、「私も20代のうちに自分がやりたいと考えていたことにチャレンジしたい。一緒にカフェをやろうよ!」と背中を押してくれました。まず着手したのは物件選びです。駅近くの繁華街ではなく、車でも来店しやすい、広い通りに面した1階の店舗ということにターゲットを絞り込みました。
オープン以来の人気メニュー。卵にチーズを入れた「チーズ入り!ふわふわオムライス」。放し飼いで飼育されている鶏の、低コレステロール卵を使用
不動産会社から現在の物件を紹介された時のことです。希望通りの路面店だったことはもちろんですが、案内されてシャッターを開けたら、正面のガラス張りの窓からパーッと日差しが注ぎ込んで、店の中が温かさに満たされた瞬間に「ここにしよう!」って決めていました。また、たまたまですが、店内から見える住宅街の小道がかわいい散歩道という感じで、その風景も気に入りました。ランチやティータイムにのんびりとくつろいでいただけるカフェを目指していましたので、南向きで明るい日差しをという条件は、ぜひ実現したかったんです。
その頃、妹は短期間でもカフェで経験を積みたいと、勤務していた通信関連の会社を退職し、地元のカフェでアルバイトを始めました。そこのオーナーからは、保健所の許可を得るためには厨房の床を排水溝に向かって傾斜をつけなければならないことなど、改装前に知っておくべきことをたくさん教えていただき、とても助かりました。節約のために自分たちでできることはやってしまおうと、什器や照明器具などはインターネットで探して購入しました。業者さんのカタログだけだとデザインや価格がどうしても限定されますからね。
近くに駐車場があることも条件のひとつでした。幸い、通りを隔てた斜め前の広いスペースが駐車場として貸し出されていたので、3台分を契約しました。また、店内のディスプレーには、父が日曜大工でつくってくれたラックなどを活用しています。お客様の評判も良く、父も頼まれるのが嬉しいみたいです。また、両親が以前からやっている家庭菜園から旬の野菜などをたびたび届けてくれます。新鮮な食材を季節限定のメニューなどに惜しげもなく使えるので感謝しています。
開業前、お客さんは若い女性が多いだろうと思っていましたが、意外にも年配のご夫婦や、子連れのお母さんなど、その幅が広いことに驚いています。誰もがリラックスして長時間過ごしていただける店づくりをモットーにしているので、子どもやお年寄りの方に来ていただけるのは本当に嬉しいことです。
もともと私は海外旅行が好きで、妹と一緒によく出かけていました。外国のカフェ巡りを繰り返しているうちに、いつかは自分でもカフェがオープンできるといいなと、漠然と思うようになったんです。それと、前職は歯科衛生士だったのですが、勤務医の若い先生たちがどんどん独立して開業していくのを見送っているうちに、やりたいことを、自分の意思でかたちにできる仕事がうらやましくなっていきました。そんなことを妹と話しているうちに、「カフェを一緒にやろう!」ということになったのです。
300万円です。物件取得費に約50万円、内外装費に約100万円、什器や備品の購入、雑貨などの仕入れに約150万円。当面の生活費は別に確保していました。
私も妹もそれぞれ150万円ずつ。貯蓄から出しています。
ふたりとも勤務先を退職するわけですから、両親を心配させるといけないと思って、事前の相談はせずに、いろいろなことをきちんと決めてから事後報告しました。最初は不安だったようですが、私たちの意志の固さをわかってくれ、「応援するから頑張ってやってみなさい」とエールを送ってくれました。友人たちは、「わー、楽しみ! オープンしたら行くからね」と、何だか私たち以上にワクワクしている感じでしたね。
それほど大きな不安はなかったのですが、やはり、本当に自分たちでできるのか、お客さんは来てくれるのかといった、漠然とした不安が時々頭をよぎりましたね。でも、何もやらないで失敗もしないより、まずは頑張って行動する方がいいと思っていたので、不安はあまり感じませんでした。
妹がカフェでアルバイトをして、そこのオーナーさんからいろいろなことを教えてもらったことが一番役に立ったと思っています。あとは、いろんな「カフェ開業本」でしょうか。店舗の内外装に関することや、保健所への届け出にはどんなことがあり、どんな準備が必要かなど、掲載されている先輩たちの事例を大いに参考にしましたよ。また、カフェオーナーたちのサイトやブログもよく見るようにしていました。
共同経営者の妹が一番の相談相手です。特にお店の広報に関してですが、私がこんなPRツールがあるといいけど、どうしようか……と相談すると、すぐかたちにしてくれるので助かっています。妹はパソコンの操作が得意なので、たとえば季節のメニューやイベントを案内する豆本のような超ミニサイズのブック型広告なども、パッとつくってくれました。ホームページづくりなどは、相談というよりも、妹に任せきっています。また、メニューに関しては、友人たちや両親に試食してもらいながら意見を聞いて決めていきました。参考になったのは味や盛り付け方ではなく、意外にも量に関してだったんです。女性は量が多いと感じているものを、男性は少ないと思っていたり。結局、その中間を通常の量とし、大盛りをオーダーできるように設定しました。
私も妹も会社勤めできちんとお給料をいただいていたので、開業当初の売り上げの不安定さに少しドキドキしました。また、困ったというか、一番残念なのは、海外のカフェ巡りができなくなったことです。まだ経営が安定しないうちから「視察のためにお休み」というわけにはいきませんからね。オープンして間もなく2年ですが、今年(2008年)の2月にやっと台湾に行って、カフェ巡りや雑貨の買い付けをすることができました。
何といっても、毎日が楽しいことです。温めていた計画でもひらめきでも、自分たちがやりたいことをすぐ具体的なかたちにできるのは、やはり自分のお店だからなんですよね。また、お客さんが、「女性がひとりで入れるカフェが近くにあったらいいなと思っていたんです。嬉しい!」などと言ってくださると、それが私たちの目指していたカフェなのでとても嬉しいです。「おいしい」とか「また来ますね」という温かい言葉を聞く時も、お店を始めて良かったと思える瞬間です。
何の計画や企画もなしに無茶をするのは良くないですが、自分のやりたいことを実現できそうな環境がある程度整ったら、あまりためらわずに、ぜひチャレンジしてみてほしいです。また、実際にやってみると、思っていた以上に周りの人のやさしさや協力、応援を実感できて、やってみてよかった、これからも頑張ろうと思うことができます。やりたいことがあるのに失敗を恐れてやらないよりも、ともかく「行動」してみることに価値があると思います。
独立した先輩の体験エピソード&独立支援情報