先輩たちの独立事例集

先輩たちの独立事例集


高梨和幸さんの写真

新システムを開発し続ける
フリーエンジニア

Rainbow Network / 静岡県沼津市
高梨和幸さん(35歳)

たかなし・かずゆき / 静岡県出身。小学校時代からプログラミングを行い、当時からソフトウエア会社での起業を目標に掲げる。17言語を操り、専門学校時代は講師よりも熟知していて周囲を驚かせたほど。現在は新規開発に向け、黙々と作業を続けている。

独立準備のがんばりどころ

値付けの知識もなく独立。実践で苦労しながら必要な知識を習得

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現在、研究・開発に力を注ぐ「フィードナビ」はRSSなどのフィードに特化し、検索やユーザー評価などが行えるWebサイト。2008年以内にオープン予定

独立して10年になりますが、この10年間こそが独立準備だったといえます。勤務先が倒産し、その流れで独立したのですが、私は技術以外のことはまったく知らないまま独立してしまったんです。当初は業務委託というかたちで精密機器の製造会社一社にベッタリ付き合いながら、人の紹介などで他社からの仕事も多少受けていました。が、苦労の連続です。経営に必要な知識や情報は、実践で覚えていきました。

値付けの知識もなかったんです。勤務時代は給与ですから、毎月同じ金額をもらっていたわけです。しかし独立したら、当然ですがひとつの仕事に見合った報酬をもらいますよね? それをいくらにすればいいのかまったくわからなかったので、いつも相手の言い値。後々になって相場を知り改善しましたが、当初はずいぶん安く仕事を受けていたと思います。請求書の存在も知らなかったんですよ。だから、独立して半年間は無収入。「何で入金されないんだろう?」って悩んでました(笑)。

自作の契約書で契約した取引先が倒産し、2000万円以上の負債が

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ITは日進月歩で進化しているため、購入した専門誌などは1年も経たずに使えなくなる。年間、200?300冊は書籍や雑誌を購入するとか

本来は独立前に行くべきなのですが、私は独立して2年後、地元の商工会議所で開催していたビジネスセミナーに参加。経営についてしっかり勉強し、自信を付けていった矢先に、業務委託で仕事をしていた取引先が倒産してしまった。オリジナルのソフトウエアを開発し、その会社とライセンス契約していたので、なんと2000万円以上の売掛金が残ったまま……。もちろん、契約書は交わしていたのですが、本を見ながら自分で作成したものでしたから、契約書の不備を責めたてられて……。役所で無料相談に乗ってくれる弁護士にも相談したのですが、契約書を見て一言「これは無理ですね」と瞬殺でした。

不毛な争いごとに時間を取られ、その間、仕事にまったく集中できず、精神的にもまいってしまいました。それからは貯蓄を取り崩す日々。やっと決着がついたのは倒産から何年もたってからです。しかも、売掛金の4割分を10年かけて返済するといった内容でした。こういった契約書は多少費用がかかっても、やはり弁理士や弁護士などのプロに依頼しておくべきですよ。

10年間の経験を肥やしに変えて、真の起業道へ

技術に自信があるエンジニアの方は多いと思いますが、起業するとなると、技術力だけでは継続できません。技術仕事3割、折衝仕事7割くらいに考えておくべき。ですから、リスクを低減するためにも経営の勉強を独立前にしっかりしておくことです。

トラブルを解決した今、やっと本腰を入れて仕事に集中できるようになりましたが、本当にこの10年間は修業期間だったと思いますね。今、新たなソフトウエアの研究・開発に心血を注いでいますが、これまで経験したことがすべて肥やしになっていると考え、この先10年、20年、本当の起業道を歩んでいきたいです。

取材・文 / 石田恵海 撮影 / 刑部友康

ちょっと気になる10問10答

  • なぜ独立した?

    小学校時代から、ソフトウエア会社の社長になると周りに豪語していました(笑)。知識や情報といったモノではない商品をつくり出したいという気持ちが強かったんです。もともと20代のうちに独立しようと思っていましたが、きっかけは勤務先のハードウエア会社が倒産したからですね。ただ、独立後4年間は、精密機器製造会社一社の仕事にベッタリでしたし、その後もトラブル対応に追われて仕事に集中できなかったので、私の中では2007年が本当の意味で独立・起業の年だと思っています。

  • 開業資金は?

    100万円です。開発用ソフトを10種類ほど購入して50万円。残りの50万円はパソコンや周辺機器、コンピュータ関連の書籍や雑誌などの購入費です。

  • 開業資金はどう集めた?

    会社員時代の貯蓄です。

  • 周囲の反応は?

    昔から「世界一のソフトウエア会社をつくる!」って周囲に言っていたくらいですから、みんな当然起業するだろうと思っていたでしょうね。だから、独立すると友人などに話した時は「やっとか」という反応でしたね。それでも独立したのは24歳でしたから、一般的に考えても早いほうだと思うんですけど。

  • 不安だったことは?

    恥ずかしながら、「自分は無敵だ」と思っていました(笑)。だから、不安なんてまったくありませんでしたね。勤務先では誰よりも待遇を良くしてもらっていましたし、未来は明るいぞ!と思っていましたよ。

  • 役立った情報源は?

    独立して2年後に商工会議所で開催する起業家向けビジネスセミナー「創業塾」に行きました。これは非常に勉強になりました。独立前に通っておくべきだったと思いましたね。また、簿記3級も独立後に取得しましたが、これは資格取得が目的ではなく、経理の勉強のため。経理を学びたい人にはオススメですね。コンピュータの技術に関しては、やはり専門誌などが一番。独立前後は本当にたくさん買いましたよ。

  • 相談相手は?

    いなかったです。というよりもむしろ、何を相談すればいいかすらわからなかった、というほうが正しいかも(笑)。独立には、どんな知識が必要で、何に気をつければいいのか。そういったことを考えずに独立してしまいましたから。後に、経営者が集まる交流会やビジネスセミナーなどに行くようになって、異業種の経営者やセミナー講師などに相談するようになりました。

  • 独立して一番困ったことは?

    何といっても、取引先の会社が倒産し、5年分のソフトウエアライセンスの代金が回収できなかったことです。債権確保の戦いのおかげで精神的にも消耗しましたし、本当に無駄な時間だったと思っています。

  • 独立して一番良かったことは?

    やっぱり、自由なことですかね。すべては自分の責任で、人のせいにしない生き方ができますから。たとえば、取引先はA案が欲しくても、私はB案がいいと思えば、その仕事は引き受けません。そうやって、私の発想を買ってくれる人とだけ仕事が思いっきりできるのが嬉しいですね。

  • 独立を志す人へのメッセージ

    私もそうだったわけですが、技術畑でずっと働いている人は、経営ノウハウが乏しい人が多いのでは。営業活動の仕方や、自分の仕事の値付けくらいはしっかり考えておいたほうがいいでしょうね。ひとりフリーランス的な立場で独立する人は、仕事場などにこもって孤独になりがちです。異業種の経営者やフリーランサーなどが集まる勉強会などにも積極的に参加して、仲間を見つけることも大切ですよ。最後に、夢はあきらめないこと。夢に壁があるのは当然です。少しずつ、できることから準備をして、楽しみながら夢を実現してください。

開業
1997年5月

従業員数
1人

年間売上高
非公開

アクセス
takanashi@niji.com


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