かとう・くみこ / 静岡県出身。食品メーカーで品質管理を担当し、出産を機に退職。フランチャイズに加盟して学習塾を開業した6年後、独立。一時期はパソコン教室も行っていたが、現在は学習塾と英会話教室に絞っている。双子の娘の母でもある。
教師ひとりが、生徒3人を受け持ち、個別で指導。授業では、国語を学ぶ子、テストを受けている生徒と様々。小学生クラスは親子のような会話で授業が進む
以前、加盟していた学習塾のフランチャイズ(FC)は小学生が対象でした。当然ながら、小学生で塾に入った生徒も時がたてば中学生になる。中学生になっても、私の塾に通いたいと言ってくれる子が大勢いたんです。こういった声から、確実に中学生や高校生のニーズは高いと考えました。
しかし同じエリアに、中学生を対象にしたタイプの違う2店舗目の出店は許可が降りず、NGでした。ニーズがあるのに……と、もどかしさを感じ、FCから独立して自分で学習塾を立ち上げることにしたんです。FCだと教材も用意してくれるし、ブランド力で生徒集めもスムーズ。ノウハウも提供してくれますが、自分でやるとなると教材探し、生徒集めのチラシ制作・配布……と大変でした。
独立準備中に出会った、教材販売代理店のアドバイスで製作したオリジナルバッグ。リュックサックとショルダーバッグになる2WAYで、生徒にも大人気!
まず、教材の販売代理店から教材を取り寄せた後に、数種類の教材を返本したんです。そしたらいきなりその代理店に怒られました(笑)。今まで教材は返本可能でしたが、それはFCのルール。通常は、返本は厳禁なんですね。悪いことをしてしまったと思った私は、名古屋にある代理店に即、お詫びの手紙とお茶を送りました。すると状況は一転、その真摯な対応を気に入ってもらえ、塾運営の様々なノウハウを教えてもらえるように。
中でも、オリジナルバッグとロゴ製作の必要性は、目からウロコでした。バッグは子どもたちが持ち歩くので、バッグ自体が広告となる。でも、塾名が入ったバッグだと子どもは持ってくれないので、デザインしたロゴをバッグに印刷しろと。そうすれば子どもも使ってくれるという提案になるほどと思いましたね。その教えに倣い、ロゴ入りのオリジナルバッグをつくりました。
また、生徒集めには新聞の折り込み広告を頻繁に活用するのですが、印刷コストもバカにならない。相見積りを数社から取りましたが、自分で印刷したほうが安いと判断し、輪転機を購入してコストを下げることに成功。現在は低価格な印刷会社に依頼していますが、当時、輪転機の導入を勧めてくれたのは、学習塾を経営する先輩経営者さん。同業、異業種含め、先輩経営者から教えてもらったことが本当に役立ちました。
最近、夜が物騒ですから、塾帰りの子どもを迎えに来るなど、親の負担も大きくなっています。また、子どもも習い事が増えていますから、ストレスが増えている。それらの問題を何とか解決したいと、今、作戦を練っているところ。ここでも異業種の経営者さんの意見が非常に参考になっています。そっちの業界では当たり前のことでも、こっちの業界にはなかった素晴らしいアイデアやノウハウが見つかることが多いんです。事業を成長させたいなら、異業種との交流が欠かせないと思いますよ。
勤務先を出産退職して、いざ仕事復帰!という時には、再就職が厳しい年齢でした。自力の独立も考えましたが、ノウハウがない。そこでまずはフランチャイズ(FC)に加盟。公民館の部屋を借りて、小学生対象の学習塾を始めたんです。しかし、小学生だった生徒も中学生へと成長していきます。生徒の親からも中学生になっても教えてほしいと言われることが増えていきました。でも、私が入っていたFCでは、中学生を対象にした教室をもう1軒出店することができなかったんです。そこで思い切ってFCから独立。自分で教室を立ち上げる道を選びました。
440万円です。教室用の店舗取得費と生徒用の机など備品費などで50万円。チラシ制作用に50万円の輪転機を購入。また、有限会社の法人設立手続きの費用で40万円かかっていますね。あとはオリジナルバッグの製作も。その残りが運転資金です。
290万円はFCで得た利益の中から。150万円は「小規模企業共済」の貸付制度を活用しました。「小規模企業共済」というのは、個人事業主などのために国がつくった退職金制度で、私はFC加盟時代に加入していました。この制度は、個人事業を辞める時に積立金が受け取れるのですが、それだけでなく、途中でどうしても資金が必要な時、積立金の範囲内で貸し付けが受けられるんです。それを私は活用したというわけです。ちなみに、月々の掛け金は「小規模企業共済等掛金控除」として課税対象所得金額から控除されるというメリットもありますよ。
う?ん、……特になし(笑)。FC加盟の時も、そこから独立した時も夫から反対されることはありませんでした。教室用の物件契約は夫が保証人になってくれましたから。FCで始めた時は自分の子どもも一緒に教室で教え、育児もバッチリ。FCから独立した時には子どもたちも大きくなっていましたしね。ちょっとは反対されたほうがよかったかしら?(笑)
なかったですね。FCを辞める場合、本部と同じ内容の事業をしてはいけない、という規則が最近はあるようですが、当時はそういった契約条件もありませんでした。なので、けっこうスムーズに独立できましたよ。
学習塾の経営者の中にはビジネス感覚が希薄な方も多いのですが、私はしっかりしたビジネス感覚を身に付けたかったので、経営コンサルタントが講師を務めるビジネスセミナーに通いました。あとは、一般のビジネス書や学習塾向けのノウハウ本などを読んだことでしょうか。それは今も続けていることですが。
独立する時は、FC時代から税務を手助けしてもらっていた税理士さんに相談しました。現在は、学習塾への指導を行っている経営コンサルタントに相談に乗ってもらっていますが、ほかにも異業種経営者さんなど、相談相手はいっぱいいますね。
FC時代、経営の勉強をしっかりとしていなかったので、その甘さが業績に反映してしまったと反省しています。独立前に、最低1年間は経営の勉強をすべきでした。独立当初も今も、講師集めには苦労しています。教えることが得意な講師はたくさんいるんですが、生徒集めや広告・宣伝など、授業以外の仕事までしっかりできる人がなかなかいなくて……。
学習塾の世界は狭いので、様々な業種の経営者と会うようにしています。異業種の先輩社長からアドバイスをいただけることが増えたのが嬉しいことですね。
独立準備は綿密にすること。これが第一でしょうね。これまでやってきた仕事だから、独立してもうまくやれるだろうと思っている人は大間違いです。私の場合、FCでの経験が逆に足かせになってしまい、業績を伸ばすまでに時間がかかりました。事前に経営者感覚をしっかり身に付けておくことが大切だと思いますね。また、感情だけで動かないこと。情熱は大切ですが、情熱だけでは事業はできませんから。事業を大きくしたいと考えるなら、人材の育成に早くから取り組んでおくことをオススメします。
独立した先輩の体験エピソード&独立支援情報