たむら・みえ / 大阪府出身。夫の転勤で関西から東北・仙台へ移転。慣れない土地と育児でストレスを抱えたことも。苦手な家事を何とかこなしながら、施術の仕事で自らを癒しているという。近頃はパワーストーンの販売にも力を注ぐ。
本番開業した後、思い切って自宅を新築。1階部分をサロン&ショップスペース、2階を生活の場と、公私はきっちりと分けている
むちゃして大きなサロンを構えるのは、リスクも大きいですからね。本格的に開業するまでに、私は2度のお試し独立をしています。最初は看板も出さず、宣伝もなしで、自宅の一室でスタート。ご近所のお友達にお客さまになっていただいて、おひとりさま500円でリフレクソロジーを施術し、勉強させてもらいました。それを半年間ほど続け、少し自信がついた頃1000円に値上げ。その後、本格的にオープンしました。
やはり、お客さまの体に直接触れる仕事ですから、いくら施術のレッスンを受けたからといって、すぐ本番開業するのは危険だと考えたのです。そこで、プレオープンというかたちで、いろんなタイプの人の体を実践で知ることで、本番に向けて技術を磨いていきました。
最近は、タロット占いなどのスキルも磨き、「タロットアロマリーディング」として、体と心の両方に癒しを提供している
その一方、仙台市内にある、あらゆるサロンをお客さんの立場で視察し、そこで気づいたことを大学ノートにレポートしてまとめていきました。この時期、100軒近く回っていますね。これは今でも続けていることですが、オススメですよ。
「意外に、この壁紙の色は落ち着くな」「やっぱり、施術の後はシャワー浴びたいよな」「ベッドが並んでいて、ほかのお客さまの姿が見えてしまうのは、現実感がありすぎてちょっと……」など、他店をたくさん見ることで、自分のサロンのイメージがどんどん固まっていきますし、差別化できるポイントもわかってきます。最近はあんまり回りすぎて、地元では面が割れちゃったので(笑)、研修に行くついでに、東京など他の地域のサロンを回って研究しています。
とにかく、夢の達成を焦りすぎないことを重視して準備していきましたね。備品に関しても、お試し独立時に、500円、1000円と少しずつ稼いで貯蓄して、いくら貯まったらフットバスを買う、ベッドを買うと目標を立てて実践していきましたから。本番開業の際にはまったく資金がかかりませんでした。
長い目で見れば、準備に時間をかけたほうが断然安全ですし、むちゃな借金をして開業していたら、技術が未熟だからお客さまが定着しない、なのに毎月、返済はしなきゃいけない、と大変なことになりますから。着実に段階を踏んで少しずつ夢をかなえていくのが、リスクも低いうえに実は長続きの秘訣でもあると思いますね。
仙台に移転したばかりの頃、知人もいない土地や、慣れない子育てでひどくストレスが溜まってしまったんです。それで、子連れで通えるリラクゼーションサロンを探したのですが、なかなかなくて。帰省した際、友人のサロンへ行ったら心身共にリラックスして、これだ!と。まだ、現在のようにリフレクソロジースクールもない時代だったので、マッサージサロンを開業した人たちが集まって勉強するグループに入り、そこでみっちりレッスンを受けました。
0円です。プレオープンした時もまったくのゼロから始めています。4万円貯まったらフットバスを購入し、10万円貯まったら施術用ベッドを購入し……と少しずつ買い足していきました。なので、本格的に開業する時には、特に開業資金としてお金を用意していないんです。
そういうわけで、開業資金は0円なので集めていません。自宅の一室で始めるつもりでしたし、借金をしてまでして開業しようとも思っていませんでした。主婦ですし、むちゃな開業は家族も望まないですからね。
今振り返ると、子どもも小さかったので、寂しい思いをさせてしまったかなと思うのですが、夫も息子も娘も協力的でした。ママつながりのご近所の方も、お友達をお客さまとして連れてきてくれたりして、周りの方にずいぶん支えられました。
特になかったですね。不安な部分を失くすために、たくさんのお店を回ったり、プレオープンをしたわけですし。それにお金をかけて開業したわけでもないですから、ダメだったらしょうがない。そんな気持ちでした。
『アントレ』さんが別冊で出されていた『独立事典』は本当に役に立ちました。これはお世辞でも何でもなくて、ホントに(笑)。掲載されていた事業計画書のひな型に書き込んでシミュレーションして、おっ、これならイケそうだぞ!と思ったりして。あとは、セラピストを支援するネットワークの「セラポート」さんが開催するセミナーもとっても役立ちました。
私が独立するきっかけになった、地元、神戸でリラクゼーションサロンを開業した友人が一番の相談相手ですね。当時、今ほどにはメールが発達していませんでしたから、メニューや値付けの相談など、ファクスでやりとりしていました。その友人は、私とやりとりした当時のファクス用紙をいまだに思い出として保管しているらしくて、それを聞かされた時は、急にその頃の思い出がよみがえってきて、顔から火が出ました(笑)。
回数券を用意していた当時の話です。あるお客さまから予約を受けたのですが、その方の希望日は埋まっていたので謝りました。しかし、その方はそれで怒りだしてしまい、半分以上使った回数券でしたが全額を返してほしいと。未使用分を返済するのが筋ですが、あんまり怒るので全額返しましたんです。その後、偶然にもその方があるブランド店で買い物している場面に遭遇して。私が返済したお金がブランド品に変わっていると思うと、ホント悔しい!
この仕事は天職といえるのではないかと思うのですが、お客さまを施術しているのが、本当に楽しいんです。こんな楽しいことを自分の自由にさせてもらって、しかも、スキルを磨く研修など、自分が大好きなことに後ろめたさを感じずに、経費としてお金が使える。それはやっぱり幸せなことだと思います。
女性の独立は「幸せを求めて」というのが多いですが、「独立=成功」でも「独立=幸福」ではないですし、家族など周りが幸せであるからこそ、自分も幸せなんじゃない?と。かたちのない自分の幸せばかりを追い求め、周囲に見向きもしないで独立しても、幸福はやってきません。人と自分を比べると、つい焦ってしまうもの。自分は自分流の進み方でいいのですから、タイミングを見計らって焦らず少しずつ夢をかなえてほしいと思います。
独立した先輩の体験エピソード&独立支援情報