起業を選ぶ女性たち ENTRE WOMAN

有限会社アクションケイ
取締役社長 
阪部 智子 さん(51歳)

「社名のアクションケイは、英語で“行動”を意味するアクションと、ドイツ語で“力”を意味するクラフト(KRAFT)の頭文字からなっています。私は思い立ったらすぐに行動するので、この社名をつけました」

こう話すのが、有限会社アクションケイ・取締役社長の阪部智子さん。そのアクティブな行動は、会社員時代から変わっていないようだ。

大学卒業後、大手機械商社を経て電気炉メーカーに転職。入社当初は営業事務を担当するが、2年目になると、上司から営業への転属を命じられた。

「電気炉という堅いイメージの会社で、女性初の営業担当になりました。大変なことも数多くありましたが、新しいことにチャレンジできることや、多くの人と出会えるのは楽しかったです」

しかし、95年の阪神・淡路大震災の年に、阪部さんの心が動いた。

「自分はこのままでいいの?本当にやりたいことは何だろうか?と強く考えるようになり、自分自身を見直しました。すると、『女性をサポートする仕事がしたい』という答えが出たんです。自分が営業をしている時に、問題にぶつかってもなかなか相談する人が見つからず、苦労しました。きっと、同じように困っている女性はたくさんいるはず。ならば、その人たちをサポートするような仕事をしよう!と決めました。不安はなかったですね」

阪部さんは全く未経験の分野で独立しようと、決意したのである。

知人の会社に間借りして、当初はフリーランスでスタート。工業製品やパソコンソフト販売などを行っていたが、多くの企業と取引を行うには法人化のほうが信用を得やすいと考え、98年7月に有限会社アクションケイを設立。

「事務所は、京都リサーチパークのレンタルオフィスに応募しました。4平方メートルのブースですが、電話とパソコンを持ってくればすぐに仕事を開始できる。家賃が月5万円なのも魅力でした」

ベンチャー起業家が多く集まっているため、常に情報交換できることや、リサーチパークの相談サポートなどが心強く、メリットは多かった。

「ある時、友人の助産師からの依頼で、乳児の沐浴の際に楽な姿勢でできるよう、洗面台のシンク全面を覆えるシートが欲しいと言われ、沐浴シート『もっくよっく』をつくりました。販売は苦戦しましたが、新聞掲載されると一気に月間1000枚も売れたんです」

こういった潜在ニーズを掘り起こすべく、情報収集に励む日々。そんな中、助産師たちとの話の中で、出産のために入院する女性がつける、機能的でおしゃれなブラジャーがないと聞く。

「授乳中だっておしゃれをしたいですよね。デザインがよく、高機能なブラジャーを開発しようと思いました」

ネットでブラジャー生産工場を見つけ、開発を始めた。綿とパイル地の二重構造で、サイズの変化に対応でき、授乳しやすいようスライド式にもこだわった。助産師を通して30名ほどの女性たちに試用してもらうが、デザインが受け入れられなかった。

「その工場では、それ以上のものはつくれないと断られてしまい、新しく別会社に相談しますが、そこでも満足いくものができず断念しました。開発にかかる資金も底をつき、やはり実現は無理かとあきらめかけていました」

  「Oppai-bra」はデザイン・機能性がウリ。ブラックに加えピンクとイエローが新発売。¥6300(セット価格)

その頃、入居するリサーチパークから、大手企業とのマッチングの機会を提供してもらう。ただ、その時の商談は「もっくよっく」のシート素材について。でも、相手先にはこの仕事での業務提携は難しいと言われてしまう。

「商談の帰りがけに、ふと授乳ブラジャーのことを話したんです。そうしたら先方の新事業として、ぜひ一緒に取り組みたいと言っていただきました」

相手は大手紡績会社の日東紡績(株)。普段出会える相手ではない。まさに大きなビジネスチャンスをつかんだのだ。

「その後、1カ月で1回目の試作品が完成。すぐ出産後の女性たちに試着をしてもらい、様々な意見をもらって再度作り直し。そんな作業を5、6回繰り返しました。時には、モニターと制作側の板ばさみになって、苦しいこともありましたが、いいものをつくりたい、女性に喜んでもらえるものをつくりたいという一心で乗り越えました」

彼女のつくった授乳ブラジャーは、おしゃれにレースが施されショーツとセットになっている。アンダーやトップバストの微妙なサイズ変化に対応できるよう調節機能を付けたり、赤ちゃんを抱っこしたまま片手で開けられるカーテン式カップ付き。どれも女性の声を反映させて取り入れたものだった。

「自分だけの力では到底できないことも、誰かの力を借りることで何倍、何十倍ものパワーが生まれる。続けていれば、きっと協力者から手が差し伸べられる時がくると思います。やっぱり自分が愛せる商品を生み出さないとダメ。私は、女性が喜ぶ新しい商品を、今後も世に送り出していきます!」

取材・文
浅子 百合(クレッシェント)
撮影
笹木 淳
PERSONAL DATA
開業資金
300万円。今までの貯蓄50万円と、不足分は、親族たちから融資を受けた
技術の修得
情報収集はすべて助産師たちから。制作など、わからない部分は、ネットで調べて業者に聞きに行った
労働時間・休日
土日はセミナーに出かけることが多く、ほとんど休みはない。平日は20時頃には退社するようにしている
収入
自分の給料は、ほとんど開発費につぎこんできた。今年度から、やっと自分の給料として使えるようになった
会社概要
所在地 :静岡市紺屋町
開業年月 :2006年4月
開業資金 :50万円
売上高 :600万円