起業を選ぶ女性たち ENTRE WOMAN

ラムネ屋敷  オーナー青木 恵 さん(24歳)

思わず「かわいい!」と言いたくなる雑貨が、所狭しと並べられている。この雑貨ショップ「ラムネ屋敷」を営むのが、オーナーの青木恵さん。  中学生の頃から雑貨が大好きで、友人の誕生日プレゼントを探すために多くの雑貨ショップを回っていた。そのうち「自分でも店を開きたい!」という思いが強くなっていった。

「高校生になると、一刻も早くショップを開業したくて、時給の高い飲食店で働きました。雑貨ショップは休日に回って、情報を収集していましたね」

高校卒業後、すぐにでも雑貨ショップを開業したかったが、周囲から猛烈な反対にあってしまう。

「店を持つにはまだ早すぎると……。そこで、雑貨店でアルバイトをしながら、専門学校の雑貨ショッププロデュースコースに2年間通ったんです」

後に、この学校での経験が、とても役立つことになる。ここで、同じ夢を持つ仲間と情報交換をしたり、困った時には助け合えるような人脈も築けた。講義ではディスプレイの仕方や経営実務などを学ぶ。

「どれも実践的で、ショップを開業したらすぐに役立つものばかり。アルバイト経験からは、商品のセレクトや仕入先の探し方、個性あるショップの演出方法などを学ぶことができました」

卒業後はバイトを続けながら、物件探しを開始。店舗賃料の手頃なエリアを探していたが、やはり若い人が集まる下北沢や吉祥寺は魅力的。ある日、不動産屋から耳寄りな情報をもらった。

「下北沢に雑貨店や服飾店の集合物件が出ることを教えてもらいました。スペースは狭いものの、賃料も安く、お客様が集まりやすいと思い、企画書を運営企業に提出しました。自分の思い描く店のコンセプトをわかりやすく盛り込んだり、学校で学んだことを参考に売り上げ計画なども入れました」

彼女は、在学中から店のコンセプトを「和メルヘン」にしようと決めていた。和雑貨が好きだったこともあり、着物などの柄を利用して、ド派手でおしゃれなデザインセンスの高い雑貨を目指していた。そんな彼女の目指す店づくりが評価されたのだろう。競争率の高かった応募を勝ち抜き、見事、下北沢の駅近くにある集合物件の入居権利を手に入れた。けれども、そこからが大変。その物件は、入居が決定してからわずか1カ月半後にオープンが決定しており、急ピッチで開業準備を進める。以前から自分が興味のある雑貨にアタリを付けていた青木さんは、それらの雑貨を卸してもらえるよう、すぐに交渉を始めた。

「専門学校の時に、商品の仕入れ方法や交渉の仕方を勉強していたので、戸惑うことなく、すぐに行動できました。それに、学校時代の友人たちがいろいろなショップに勤務していたので、その人脈から商品の仕入れができたケースもありました」

開業のために高校生の時からためていた貯蓄が600万円! 資金的な心配がなかったのが彼女の強みだった。

内装はディスプレイのための棚やレジ台など、すべて父と手づくり。そのため、材料費も含め制作は8万円と格安でクリア。開業準備は大きな問題もなく、順調に進めることができた。。

店の一番人気商品のケーキ型オルゴール。本物そっくりの商品に「かわいい!」と叫んでしまう。写真は3段L4000円

こうして2004年10月、下北沢の東洋百貨店内に雑貨ショップ「ラムネ屋敷」をオープン。

「最初はお客さんが来なくてかなり焦りました。でも、1年頑張ってダメなら店を閉めればいいやって思っていたので、気持ちはラクでしたね」

とはいえ、集客のために何か行動を起こさなければとあらためて奮起。

「告知にはあまりお金をかけたくなかったので、雑誌の編集部にリリースを送りました。すると、その中のいくつかから取材の申し込みが入り、その反響で来店者数が伸び始めました」

仕入れ商品はすべて買い取るという青木さん。リスクはあるが、自分が売れると思うものなので、自信を持って仕入れている。そうすることで作家との信頼関係も生まれ、安定的に商品を仕入れることが可能になった。また、青木さんのショップはコンセプトがしっかりしているため、仕入れ商品がぶれることなく、リピーターの満足度を高めていることも人気の秘けつ。

「紙粘土でつくったケーキの形をしたオルゴールの評判がよく、ほかの雑貨店に卸したりしています。今は、アルバイトのスタッフたちも商品づくりに励んでくれて、商品の回転が早いのもいいですね」

以前は一人で店を切り盛りしていたため、作品づくりはもっぱら休日や閉店後の深夜。それでも待っているお客さまのためを思えば苦ではなかった。

そんな彼女に今後の夢を聞いた。

「本当のケーキショップのように、ケーキ型オルゴールをショーケースに並べた専門店を出店したり、趣の異なるお店をもう一店出したいですね。そのためには、法人化して、しっかりと経営もしていきたいです」

取材・文
浅子 百合(クレッシェント)
撮影
内海 明啓
PERSONAL DATA
開業資金
高校生の頃から、雑貨ショップをオープンすると決めていたので、ずっと貯蓄をしていた。開業時には600万円の貯蓄
技術の修得
ディスプレイ方法や接客、経営については専門学校をはじめ、アルバイトなどを通して学んだ
労働時間・休日
平日の夜は、注文が立て込んでいれば店が閉店した後に商品づくりを行う。休日は月2回で、雑貨ショップ巡りもしている
収入
商品の卸業務なども行っているので、店の売り上げ以外にも収入はあり。まだまだ上を目指したいという
会社概要
所在地 :東京都世田谷区
設立年月 :2004年4月
開業資金 :110万円
売上高 :非公開