起業を選ぶ女性たち ENTRE WOMAN

ファーストクリエイト(有) 代表取締役高橋 麻希子 さん(37歳)

「自分が欲しいと思ったサービスは、きっとほかにもニーズがあると思い、始めたのがきっかけでした」

家事代行サービスを行っているファーストクリエイト求Bその代表を務めるのが、高橋麻希子さんだ。

高橋さんは、学生の頃から将来起業することを夢見ていたというが、4年制大学を卒業後は、まずは社会勉強を積みたいと大手旅行会社に就職。

「どうせなら業界最大手で学びたいと思って飛び込みましたが、大企業ならではの縦割り仕事で、パーツごとの業務ばかり。社内にしか通用しないスキルでこのままではいけないと、4年目で退社を決意しました」

今度は実力勝負の外資系マーケティング会社に転職をする。

「ここでは富裕層向けのサービス開発を行っていましたが、結果がすべての実力主義。今までの仕事との違いは大きく、慣れるまではかなりストレスもたまりました。でも、成果主義という方法は自分に合っていたようです」

楽しみながらハードな毎日を過ごすが、やがて、「起業したい」という心の奥底に眠っていた思いが高まっていくのを実感。自分の心に素直になりたいと、すぐに起業準備に取り掛かる。そこまでの行動は、気負いもなく全く自然な流れだったという。会社勤務をしながら女性起業セミナーに通い、起業のノウハウを学び始めた。ただし、この時はまだ、彼女の中には具体的にどの業種で起業したいという目標は定まっていなかった。

「セミナーに通っていた頃は、まだ事業内容が決まっていなかったので、事業計画書をつくっていても、どこか身が入らなかったんです。その頃、一人暮らしでしたが、多忙な毎日で家事をするのがとても苦痛でした。そこでふと、家事を代わりにやってくれるサービスがあったらいいなと考えるようになったんです。私みたいな一人暮らしではハウスクリーニングは大げさだし、家政婦までは必要ない。その中間の家事代行サービスはどうだろうと」

マーケティングの仕事をしている強みもあり、早速、家事代行業界の実情を調べ始めた。思ったとおり料金体系が明確でなかったり、広告宣伝もほとんど行われていないのが現状だった。

「ここに商機がある!」と確信した高橋さん。今までのマーケティングの経験を生かし、集客に結び付けることができると考えたのだ。

まずは、仕事内容を知るために、同業の家事代行サービス会社でアルバイトを開始。合理的な清掃方法や、スタッフ教育のノウハウを学んだ。彼女はターゲットを、30代前後の共働き夫婦に定めた。ある程度収入はあるが時間がない人たちを狙おうと考えたのだ。

「だから宣伝はネットしかないと考えていました。ホームページをきちんとつくって、サービス内容と料金を明確にする。決まった時間内でどんなことができるかをきちんと出しました」

次に取り掛かったのは、人材集め。新聞折り込みやハローワーク、知人のツテなどで探し始めるが、想像以上に苦戦を強いられた。

サイト準備と人選、スタッフ教育を同時に進めて、2004年6月、ファーストクリエイト有限会社を設立した。

サービス開始前には、必ず派遣スタッフと共に顧客宅に伺い、細かな業務の打ち合わせを行う。このマッチングがかなり重要

「思ったよりサイトからの反響もよく、仕事の依頼は入るのですが、人手不足で断ることも多いです。でも、ムリしてスタッフを増やし、サービスの質を落とすようなことになったら致命的ですから、泣く泣く依頼を断りました」

家事仕事は、普通にこなせて当たり前。顧客から見れば、そのプラスアルファを求めるため、当然厳しい目で評価されてしまう。事前の打ち合わせで、いかに顧客の求めているサービス内容を引き出せるか、その家庭に合った人材を派遣できるかがポイントになる。

「清掃ひとつを取っても、その家庭ごとにやり方は全く違います。できるだけそういった部分もくみ取って、満足の高い仕事を目指しています」

留守宅の清掃を依頼されることも多く、顧客とは信頼関係が大切。だからこそ、仕事内容に満足してもらえれば、必ずリピーターにつながるのだ。

「お客さまから喜びの声を聞くことはもちろんうれしいですが、母親と同年代のスタッフたちが、『やりがいのある仕事を見つけられてよかった』『自分の能力を発揮できてうれしい』と話してくれることが一番の喜びです」

50代を中心としたスタッフたちとは考え方の違いもあり、初めのうちは意見が合わず苦労も多かったという。しかし、そんな言葉を聞くと、その苦労も無駄ではなかったと思えるだろう。

今後は、スタッフ教育をさらに強化して人材を増やし、エリア拡大にも挑戦していくという高橋さん。起業を目指す女性たちにアドバイスをもらった。

「やる気があれば、道はどうにでも開けるはず。新たにいろいろな人と知り合えたり、会社員時代では味わえない楽しさがいっぱいありますよ!」

取材・文
浅子 百合(クレッシェント)
撮影
内海 明啓
PERSONAL DATA
開業資金
資本金の300万円は、前職でためていた貯蓄を使って、全額自己資金でまかなった
技術の修得
家事サービスのノウハウは、起業前に他社でアルバイトを通して習得。集客方法はマーケティングの経験を生かした
労働時間・休日
週1回は休みを取るよう心掛けている。平日は、夜遅くまで仕事をしていることが多い
収入
外資系のマーケティング会社だった頃より、収入はずいぶん減ってしまっているが、仕事のやりがいは今が上
会社概要
所在地 :東京都
開業年月 :2004年6月
資本金 :300万円
売上高 :非公開