33年間の看護師経験を生かし
在宅看護事業に挑戦中!
「『家に帰りたい』と言いながら、病院で亡くなる患者さんを見て、何とかしたいといつも思っていました」
と話す、(株)アイナース代表取締役の八木京子さん。
秋田で高校を卒業後、理系が得意だった八木さんは看護師の道を選択し、東京都内の看護学校へと進学。卒業後、都内総合病院に勤務した。24歳で結婚し、その後出産。仕事にブランクができるのを恐れ、ほぼ休まず働き続けた。
そんな日々の看護の中、患者さんの意思に、応えてあげられない歯がゆさを感じていることがあったという。
「末期がんの患者さんは、最期に自宅に帰りたいとおっしゃるんです。でも、病院にいた方が安心だし、ご家族の方々がすべて背負うのは怖いという気持ちがあるので、なかなか実現できません。お互いの気持ちがわかるので、つらかったですね」
彼女は、そんな両者の苦しみを緩和できる方法はないかと苦悩していた。
その頃、彼女は病院外にも目を向けたいと、自分の資格や経験を生かせそうな社会福祉士の資格取得を目指す。
「その講座で資格取得に向け一生懸命努力する仲間と出会いました。自分は看護師という資格があったので、多少みんなより知識があるとタカを括っていましたが、その真剣な姿に自分の甘さを実感。そして自分も何か打ち込めるものに挑戦したいと考えたのです」
長男の成人をきっかけに、看護師の資格を生かした独立への道を歩み始めた。そして、以前から気になっていた、在宅・訪問看護事業を決意。
看護を病院外で行うには法人格が必要なため、会社を設立することに。
「事務所契約の大変さ、チラシやサイトの必要性など、分からないことばかり。知人にサイトをつくってもらうなど、いろいろな面で助けられました」
派遣スタッフは看護師の有資格者が必要だったが、結婚や家庭の都合で辞めていった以前の仲間たちが賛同し、すぐに集まってくれた。
こうして、2006年5月、在宅・訪問看護を行う(株)アイナースを設立。開業したものの、営業の仕方など全くわからず、手当たり次第、開業医を回るが手ごたえなし。都内ほとんどの大病院に営業するが、芳しくはなかった。
「営業実績がないことが、信頼性に欠けるようでした。人の命を預かる大切な仕事ですから、当然ですよね」
その後、急な依頼が入り、八木さんが対応すると、その丁寧な看護と彼女の患者さんに対する姿勢が評価され、徐々に仕事が増え始めた。今は「できるだけ患者さんのそばにいる」という彼女の思いを心行くまで実践できていることに幸せを感じているという。
「患者さんが、自宅に戻ると笑顔になるんです。そんな時、この仕事を始めて本当に良かったと思えます。看護以外何も知らない自分でしたが、経験を生かしてできることもあるんだと実感。あきらめないでチャレンジすることが大切なんですね」