おしゃれな農業を始めて
若い人たちにも就農を広めたい
短大卒業後、役者を目指し演劇の道に進んだ井波さん。しかし、1年後には別の夢を追うために方向転換。
「学生の頃から海外志向が強く、留学の夢があきらめきれなかったんです。ちょうど、国際的な農業交流体験の募集をしていたので参加を決めました」
短大で園芸生活学を専攻していたこともあり、元から農業に興味を持っていた。スイスを選んだのは、有機栽培の先進国であり、露地栽培も手がける複合農業だから。現地では、野菜づくりや家畜の世話など、初めて経験することばかりでワクワクする毎日。
「スイスでは、農業という職業が子供にも自然に受け入れられていたんです。日本では就農の道を選ぶ人は少なく、楽しみながら農作業をこなすスイスの人たちの姿がとても印象的でした。こんな自然なスタイルの農業なら私にもできるかも……という思いが膨らんでいったのです」
スイスから帰国する時には、すでに就農への道を決意していたという。
早速、実家のある山梨で準備を開始。
「就農にあたっては、県の就農支援センターに相談をしました。まずは、休耕地となっていた畑を1枚借りて、30種類の野菜をつくりました。収穫した野菜は『道の駅』というドライブイン施設で販売。結構評判がよかったので、さらに畑を5枚ほど借りて、作付面積を増やしていったのです」
この経験で自信をつけた井波さんは、2003年4月に就農認定を受け、本格的に農業をスタート。おしゃれで、若い人たちにも注目してもらえる農業を目指し、たった1人で「KINOCAFE」を立ち上げた。
「最初は周りの人たちも『若い子が続くわけない』と全然相手にしてくれなくて。1年以上たって、やっと認めてもらえたって感じです(笑)」
井波さんは他の農家と差別化を図るため、スイスやイタリア、フランスなど、国内外の珍しい野菜づくりに挑戦。スイスでの経験を生かした。まだ経験も浅く、大規模な農業ができない分、珍しい野菜を扱うことで、少量でも売り上げを確保できるものをと考えたのだ。販売方法はネットを利用したり、朝市で販売するなど、若い彼女だからこそできる独自路線を築いた。
「でも最初は失敗ばかり。就農センターからのアドバイスで、売り上げが確保できるトマトをつくるといいと聞き、2000株を栽培しましたが、空梅雨で管理ができずダメにしてしまったり、虫にやられて破棄したりと、トラブルの連続でしたね」
そんな失敗もすべてはいい経験と笑う彼女。今では1ヘクタールの畑を耕し、50種類もの野菜や
彼女の取り組みはそれだけでは終わらない。若い人にも農業の楽しさを分かってもらいたいと、就農体験の受け入れも行っている。
「今後、スタッフを増やしてもっと規模を大きくしたいですね。若い人たちが気軽にチャレンジできるよう、おしゃれな農家を目指します!」
最近ネットでの注文が多くなり、発送準備は時間との戦い。就農希望の女性と箱詰め作業を行っていた
八ヶ岳を望むことができるKINO CAFEの作業場