THE INNOVATION 志こそが人を熱くする

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セラピーを相乗したグリーンツーリズムで、農村と都市を「ダブル再生」

豊島大輝さんの写真

眠っている地域資源を掘り起こし足りない部分を補い合う。それがWオンリーワンWのコミュニティを創造する

 

ホリスティックサポート/千葉県木更津市

代表
豊島大輝さん(36歳)

1975年、大阪府生まれ。高校卒業後、スポーツジムのインストラクターに。2001年、フランスに本部のあるタラソテラピーの老舗「テルムマラン」のスパセラピストとして、活動開始。2008年、伊豆の高級旅館グループ「石亭」に転職、営業責任者とスパ事業責任者を兼務する。その後独立し、2011年からは地域コーディネイターとして、千葉県鴨川市で地域資源「棚田」を活用した地域再生事業を展開。癒やしと健康をテーマにした講演活動も行っている。

タラソテラピー(海洋療法)のスパセラピストとして活動していた豊島大輝が、伊豆の高級旅館の再生事業にヘッドハンティングされたのは、2008年7月。スパを核にした経営立て直しを模索していた旅館側に、その能力と経験を買われての転身だった。意気揚揚と乗り込んだが、豊島はそこで、旅館街が外資系企業の"草刈り場"になっているという現実に直面する。マネーゲームに侵食された結果、旅館やホテルが「勝ち組」と「負け組」に峻別され、街自体が活気を失っているように見えた。何かが違う――。葛藤を抱えながらの日々に、リーマンショックが追い討ちをかける。その経験が、豊島に起業を決意させた。

地元の産品をスパやエステに活用した伊豆での経験は、豊島の心に「地域資源を生かしたコミュニティビジネス」への情熱を残した。2011年から、千葉・鴨川で、棚田の再生を軸に据えたグリーンツーリズムに着手。客足の減退に悩む地域の宿泊施設に大きく貢献している。さらに今年は、その鴨川と、高齢化の進展という地域の悩みを抱える東京・高島平団地との協働プロジェクトにも乗り出す。標榜するのは、「都市と農村部のダブル再生」だ。

なぜセラピーの道に?

父が"アウトドアマン"で、小学生の頃は、朝一緒に海で釣りをしてから学校に行くような毎日だったんですよ。ところがそんな父が、小学校6年の時に脳梗塞で倒れてしまって。ストレスからくる過食が原因でした。20年間の闘病の末、5年前に亡くなったのですが、父の姿を見てストレスとか健康というものに関心を持ったのが、そもそものきっかけですね。

伊豆の旅館の再生事業では、具体的にどのようなことを?

滞在型スパをテーマに、スパの設計と運営に携わりました。季節の体調変化に合わせた「旬」のあるセラピー内容です。で、お客さまを呼ぶために、伊豆独自の特徴を打ち出そうと。伊豆石をストーンセラピーに使い、伊豆七島のひとつ・利島の椿油や、特産品の黒文字という木から抽出した精油をアロマセラピーのオイルに採用したり。地域資源をできるだけ活用しようと、知恵を絞ったわけです。取り組みを通じて、地域の方々との結び付きが生まれました。ここにしかない伊豆石を守ろう、明治時代には香料として多く使われていた黒文字を復活させよう――そんな熱い思いのもと、地域活性化のために頑張っている人たちが、現場にはいたんです。金融バブルが弾けて、投資マネーは潮が引くように去りましたが、地域資源は確かにそこにある。地域の人たちとのつながりは、変わることがありませんでした。"持続可能"ってこういうことなのかと、初めて腑に落ちた。そして「僕のやるべきことはこれだ!」と思ったのです。

鴨川での取り組みは。

鴨川に、「二子棚田(ふたごたなだ)」という海の見える棚田があります。ご多分に漏れず休耕地が目立っていたのですが、地元農家さんと有志が保存会を結成し、オーナー制度をスタートさせたんですね。そのオーナーたちに田植えや稲刈りなどの農作業を経験してもらい、近くの宿に泊まっていただく。そして、夜はストレスを取り除くための瞑想会を開いたり、翌朝は海岸に出て気功をやったり。「農村体験にセラピーを相乗したグリーンツーリズム」というイメージで取り組んでいます。始めた頃は半ば手探り状態でしたけど、参加者からは「ただ泊まるだけではない」有意なプランとして、お褒めの言葉をたくさんもらっています。今年は、高島平総研のメンバーも交えて2地域交流事業がスタートします。高島平団地では高齢化率が40%を超えているんですけど、考えてみれば、高齢者ってこの上ない人的資源でしょ。例えば、棚田にやってきた子供たちに知恵を伝授し、団地住民同士の交流を持ち、自らも元気になってもらう。そんな機会が、希薄になりがちな都市のコミュニティ再生に結び付いたらいいなと思っているのです。鴨川と高島平はあくまでも一方通行ではなく、ないものを補い合う"ダブル再生"。どの地域にも特有の悩みがあり、同時に資源もある。いろんなコラボができるはずだし、それによってオンリーワンになれるのです。

法人化はしないのですか?

それも考えましたが、個人のほうが小回りがきくし、ヒエラルキーのもとになる組織図をつくらずに済む。特に社会事業の場合は、志をひとつにする人たちが、プロジェクトごとにフラットなコミュニティを形成するのが理想です。責任を分担できるし、みんなの意識も高いまま保てますから。そういうコミュニティって、発展途上国みたいなものだと思うんですよ。日本の各地に多種多様な途上国をどんどんつくって、互いにリンクしながら発展していく。日本にはそれを可能にする資源が、まだまだたくさん眠っているんじゃないでしょうか。

撮影/刑部友康 構成/内田丘子

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