NPO法人グリーンバード/東京都渋谷区
1972年、東京都生まれ。専修大学卒業後、博報堂に入社。JT、タワーレコードなど多くのクライアントを担当する。2002年に退社し、翌2003年1月、NPO法人グリーンバードを設立。原宿・表参道を中心に、ゴミのポイ捨て対策プロモーション活動を開始する。また同年に、東京・渋谷区議に初当選。「街のプロデューサー」として、幅広い活動を展開中。“地元”表参道で始まったグリーンバードの活動は、日本全国各地、海外でもパリ、スリランカ、ガーナなどで取り組まれている。
子供の頃からの遊び場だった原宿・表参道。長谷部健が、その街づくりのプロデュースに乗り出そうと、志を新たにしたのが30歳の時。7年間勤めた大手広告代理店を辞め、街の美化対策を扱うNPO法人を設立し、一方で渋谷区議会議員へと転身を図った。きっかけは、「地域のことをもっと深く知らねば」と参加した地元商店街の清掃活動で、ゴミ拾いのハッピーさに開眼したこと。
ゴミ拾いの活動? だがそれは、ひたすら道路の清掃に勤しむのとも、「ゴミの投げ捨てをやめて、街をきれいに」とがなりたてるのとも、ちょっと違う。目指すのは、道行く人が「ポイ捨てはしない」と自然に思えるような空間づくり。事実、表参道に捨てられるゴミは、NPO活動以前に比べると激減した。イソップ寓話「北風と太陽」を地で行くような表参道発のこの活動、今ではパリやスリランカなどの海外も含め、国内外各地で32チームが取り組むまでに広がった。活動資金は、会員から徴収したりするのではなく、基本的に企業からの寄付に依拠。広告代理店時代に培った経験やノウハウは、こうした資金集めや、活動の拡大に向けた仕組みづくりに余すところなく生かされている。
やってみれば、わかります。理屈抜きに楽しい。かつての表参道って、タバコの吸殻や空き缶などがあちこちに落ちていた状態だったんですよ。それが、見違えるようにきれいになるのだから。そして思ったんです。この感覚は多くの人たちと共有できるはずだと。楽しく活動して、それを通じてコミュニケーションの輪が広がって、おまけにきれいな街づくりに貢献できる。それってハッピーでしょ。実際、呼びかけで大勢の人が集まったし、作業が終わって文句を言う人は、まずいません(笑)。ちなみに掃除は自由参加で、毎回、メンバー以外の新顔がたくさん集まっています。メンバーというのも「ポイ捨てしない」と"宣言"すればOKで、そんな人が今、4700人ほどになりました。
たくさんのゴミを集めるのはやりがいがあるんだけど(笑)、拾った端から捨てる人がけっこういる。これじゃ、いたちごっこ。捨てる側にアプローチしなければダメだと気づいたんです。ポイ捨てしない人を増やすこと。それには「捨てるな」じゃなく、「かっこ悪いぜ」というメッセージ軸にしたほうが、人々の気持ちに届くと考えたのです。そして、ロゴマーク。「幸せの青い鳥」ならぬ「街をきれいにする緑の鳥」をモチーフに、アヒルを人型にアレンジしました。掃除をする時には、このロゴをあしらったそろいのグリーンのユニフォーム姿。アピール力抜群です。ほかにも協賛企業の製品にプリントしてもらったり、ロゴ入りのポストカードをカフェに置いてもらったり。そんな取り組みがだんだんメディアにも取り上げられるようになって、知名度はアップ。むろん僕らの活動がすべてなどとは言いませんが、今の表参道には「ゴミが捨てられない」空気が漂っていると思いますよ。
結果的にそうなったというのが正しいですね。活動を長続きさせるためにはスポンサーが必要だし、取れるはずだと思って、まずスポーツ用品メーカーにプレゼンに行ったんです。「金髪にピアスの若者たちが、街を掃除してるなんていいでしょ」って(笑)。担当の方は「それは面白い」と、ユニフォームの提供を申し出てくれましたが、「企業として、任意の団体に寄付はしにくい。法人格があるといいなあ」と言うのです。それで初めてNPO法人のことを調べてみたら、けっこういいシステムじゃないですか。活動の維持・拡大にかかわる費用が非課税だし、設立手続きも自分だけでできる。実際、すぐに申請書を書いて、半年ほどで認証を受けました。
一番の課題は、やはり安定的な活動資金の確保です。補助金もアリかなと。行政からもらうつもりはないけれど、財団とかからだったらOK。で、仮にいただいた補助金が余ったら、ちゃんとお返しする。「こんなの日本初、いや世界初ですよ」と話すと、その場ではウケるんですが……(笑)。
当面の目標は、100チームの達成。そこまで広がれば、知名度は格段にアップするし、ディビジョン制による独立なんかも視野に入ってくる。あと、次の仕掛けとして頭にあるのは、企業間のM&Aのように、NPOのそれがあってもいいんじゃないかということ。周りには、僕の目から見ても若くて面白いNPOがあるし、資金や人材面などで共通の問題を抱えたりしている。そんなところと合体できたら、すごいシナジーが生まれるかも。これも本邦初だけど、そういうことに挑戦するのが僕ら世代の起業家の役目なのかなと、思ったりもするのです。
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