THE INNOVATION 志こそが人を熱くする

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仕事・遊び・地元交流が一体の、持続的な活動拠点を提供する

寺井元一さんの写真

アーティストを地方都市に誘致すること。そこから街の再活性化戦略が始まる

(株)まちづクリエイティブ/千葉県松戸市

代表取締役社長
寺井元一さん(32歳)

1977年、兵庫県生まれ。2001年、早稲田大学政経学部卒業。同大大学院に進む(後に中退)と同時に、学生団体「KOMPOSITION」 を設立。翌年にNPO 法人化し、渋谷など都心部において若いアーティスト、アスリートのために、表現や競技の場を提供する活動を始める。その経験から、表現者たちが持続的に活動できる拠点の必要性を痛感。拠点づくりと街おこしを関連づけて考えるように。「脱東京」を掲げ、東京周辺で候補地探しに奔走する中、千葉県北西部の松戸市に着目。2010年5月、「まちづクリエイティブ」設立。松戸駅前に本拠を置き、今秋の本格始動に備える。

アート、スポーツ、ミュージック……。優れたパフォーマンスと“エッジの立った”才能を持ちながら、無名であるがゆえに活動の場にすら事欠く若者たちがいる。自らはアートともスポーツとも無縁だという寺井だが、そうしたクリエイティブな表現者たちには、強い共感を持っていた。だったら自分は彼らを支援する側に立とうと決めた。

大学院時代の2001年に、学生団体「KOMPOSITION」を立ち上げ、渋谷や横浜などで活動を開始する。街の建物や壁面を、合法的な絵画表現の場としてグラフィティアーティストたちに提供する「リーガルウォール」、代々木公園でのストリートバスケリーグの開催、セパタクロー(!)の大会運営まで――。寺井たちは周辺住民、地主、行政との折衝役・仲介者として活動を続けた。

その過程で、「表現者が持続的に活動していくには、しっかりと根を下ろせる場所が必要なのではないか」という思いが生まれた。それには活動拠点たる“街”そのものの創造から始めなければならない。寺井が目をつけたのは、千葉県松戸市。東京周辺の典型的な、つまり地味な(「矢切の渡し」はちょっと有名)地方都市だった。

渋谷から松戸へというのは、かなり大胆な決断ですね。

渋谷での活動をやめたわけではなく、KOMPOSITIONは残しつつ、新しいことも始めた。いわばスピンオフ起業です。渋谷ではこれまで様々なことをやってきたのですが、一過性のイベントと見られることが多かった。あそこは「根を張る」のが難しい街なんです。アーティストの活動を持続的に支援していくには、都心を離れて新たな場所を提供する必要があると思ったんですね。

しかし、アーティストのほうが離れたがらないでしょう。

もちろん、仕事の打ち合わせや情報交換の場として、東京はなくてはならない街です。ところが今、30代、40代で、ある程度地位を確立したアーティストたちは、鎌倉や外房といった地方都市に移住し始めている。いい環境の中で仕事をして、目の前の海で気の向くままにサーフィン。地元の伝統的な生活や行事、濃密な人間関係も、むしろ新鮮なものとしてとらえている。「東京でなければダメ」というのは、かなりの部分、思い込みなんですよ。だったら拠点はゆとりのある地方に置き、東京には必要な時だけ行けばいい。それが僕たちが掲げる「脱東京」なのです。

松戸に目をつけた理由は?

東京からの交通の便の良さに加えて、松戸にはいい意味での「危機感」があったんです。例えば、駅周辺の7つの商店街有志が力を合わせて街おこしをしている。一般に、地場の商店街同士というのは仲が悪いものです。それが協力して連合体をつくるというのは、街の将来にほどよい期待感も抱いているということ。僕が初めて松戸に来たのは昨年の6月ですが、9月には商店主たちに「これからは週1で来ます」と宣言しました。それが週2、週3、週4となり、飲み会にも誘われるようになって、この街の面白さがわかってきた。何より地元のおっちゃん、おばちゃんが面白い。それでここに肩入れしようと決めました。

具体的にはどういうことを。

街の活性化のインフラとなるような事業展開を考えていますが、まずは不動産業。アーティストやクリエイターを呼び込むためには、アトリエやオフィスが必要ですから。それに地元の不動産屋さんにとって、「アーティスト」なる人物が物件を探しに来ても不安じゃないですか。「大丈夫かいな」と(笑)。でも、僕たちが信用保証を付けることで、安心して契約ができる。また、作品発表の場として、将来はギャラリーやショップも必要になってきますしね。  それから遊びという部分では、鎌倉や外房の“海”に代わる魅力として、僕は“川”を考えています。近くに江戸川があって、その支流の両岸が原生林みたいで面白いんですよ。カヌー大会なんかもある。年に1回くらいですけど(笑)。今は地元の人たちと協力して、河川敷の不法投棄ゴミを撤去したり、整備や利用の方向性を話し合ったりしているところです。個人的には、川でのカヌー遊びをウリにしたいと思っているんですが。

アーティストの誘致で、本当に街は活性化するんでしょうか。

アートの分野でエッジの立った、例えば魅力的なアーティストやクリエイターが5人、松戸に活動拠点を置いてくれれば街が変わるでしょう。まず彼らのアートに関心を持つ人たちが、松戸という街にも興味を抱くようになる。そうなれば、しゃれたカフェやお店のひとつもできる。松戸が世間から「ちょっと面白そうな街」と思われだしたら、しめたものです。街づくりの方向性に選択肢が増えますからね。そんな誘因力のある、コアな人を呼び寄せる。そして街全体で、地に足の着いたサポートをしていこうということなんですよ

撮影/刑部友康 構成/内田丘子

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