CASE65人材育成コンサルタント

外資系企業の看板とポストを捨て心から楽しいと感じる講師業に

“生きがいといえることを、独立後の仕事に選んだ”。そう言い切れる人は、とても幸せだと思う。今年1月に独立を果たした小森さんも、やっていて楽しく生きがいを感じるというセミナー講師の仕事を将来にわたり続けていくために、プロワーカーという働き方を選択した。

「会社員として雇用されている限りは、自分の思いどおりにならないこともたくさんあります。私は20年以上会社勤めを続けてきた中で、17年ほどは営業の第一線にいましたが、心から楽しいと感じたのは3年間従事したトレーナー業務でした。セミナーやOJTで自社の営業担当者のトレーニングにあたる仕事に自分の適性を感じましたし、天職だと思えたほどでした」



小森さんがトレーナー業務に就いていたのは、世界的な大手消費財メーカーであるP&Gでのこと。入社して3年目、日本市場のさらなる開拓を目的に営業担当者、営業マネージャーのスキルアップトレーニングが行われた際、全国から4名のトレーナーが選抜され、小森さんは一番手で辞令を受けた。

「P&Gで当時世界のトレーニング部門のトップであったボブ・ヘイドンが来日し、私たちトレーナーにコミュニケーションスキルとマネジメントスキルを直接伝授してくれました。彼から学んだことを全国の営業担当に伝えていく活動をしたのですが、私自身がボブから受けた影響も大きかったのです。この3年間の経験が、将来の独立のきっかけにもつながっています」

営業の前線に戻った小森さんは、同社のアジアパシフィック最優秀マネージャーとなるなど、常にハイレベルな売り上げ目標を達成してきた。その後、外資系企業で2度のヘッドハンティングを経て営業マネージャーのキャリアを積むが、転職先でもトレーナーや講師の仕事に未練があった。そこで、並行して自らコーチングのスキル習得に励んだ。

「クリントン前大統領はじめ多くの著名人も教えを受けている世界No.1サクセスコーチ、アンソニー・ロビンズのコーチングスキルを習得しました。これにより、大学の客員教授としてリーダーシップ・コミュニケーションを講義する機会を得ることにつながりました。また外資系3社で培った営業・トレーニングスキルに、コーチングスキルをミックスすることで独自の強みができ、人材育成コンサルタントとして独立する自信を持てました」

独立後7カ月間で40回の講演・セミナーを開催するなど精力的に活動を続けている。そんな小森さんは、ビジネスSNSサイト「wizli(ウィズリ)」で全国人気ランキング1位を維持する「kevin」(ニックネーム)としても活躍中だ。マイウィズリ(SNS上の友人)は3500名とダントツの数を誇り、そこからビジネスでの人脈形成、クライアント獲得に結びつけている。

「積極的に交流の機会を持つように働きかけています。そうした人脈の中から声が掛かり、wizliをビジネスで活用するノウハウをまとめた著書を、今年の冬に刊行することに。またひとつ、ビジネスの新しい芽が出て、楽しくなってきました」



PROFILE

小森 康充さん(46歳)

1962年、大阪府生まれ。大学卒業後、P&Gに入社。エリアマネージャー、ディビジョナルトレーナーなどに従事。その後2度のヘッドハンティングを経て、外資系企業2社に勤務。2007年に神戸学院大学の客員教授を務め、翌年1月に独立。現在、厚生労働省認可の社団法人総合経営管理協会にて講師を務め、東京・大阪を行き来する日々を過ごす。

取材・文●岩見浩二 撮影●松本朋之

[ 2008.08.22 ]

営業ツールの写真

20年ほど前からライフセービングが趣味でよく海に行く。携帯電話も耐水機能に優れたG-SHOCKタイプを愛用

POLICY

「仕事=人生」と考えられるようになった。会社員時代は自分の価値観と会社の価値観が一致しないことも多々あった。

HOLIDAY

今は休みを返上し一回でも多くセミナーを開催したいと考えている。実績をつくるまでは休んでいる暇はない。

MONEY

高給取りだった会社員時代と比べ、当面の収入減は必至。今まで気にしなかった食事代まで節約するようになった。

SATISFACTION

誰かにやれと指示されるのではなく、自分のやりたい気持ちを優先できる。選択基準がすべて自分にあることが心地よい。