CASE61マーケティング戦略コンサルタント

独立目標を延期し準備に注力。力を蓄えマーケティングのプロに

“40歳で独立する”という目標を立てて会社員時代を過ごしてきた向川さんは、昨年6月に41歳で独立した。30歳前半で立てた目標だったが、独立を先送りにしてあえて準備期間にあてたこの一年間が、貴重な時間になったと感じている。

マーケティング戦略コンサルタントとして独立した向川さんは前職でWebマーケティング、リサーチ、コンサルティングなどに従事してきた。実務で携わってきたマーケティングプロセスを理論で体系化させたいという思いから、平日の夜間に開講されるビジネススクールに通った。



「会社の実務を通して学んだことは、その会社のクセが身につきがちです。それを正攻法だと思っていると、ほかの会社では通用しないことがよくあります。私も大手メーカー系の会社で働いていましたので、視点や考え方が偏ってはいないか不安に思ったのです。ビジネススクールで受けた講義や、他社から来ている同業者たちとの交流から多くを学ぶことができたこの期間を、独立前に設けておいてよかったと実感しています」

独立前の準備期間には、週末起業のスタイルでマーケティング・コンサルタントとしての仕事を体験し、また人脈開拓も行った。そこで大きく活躍したのが「mixi(ミクシィ)」だ。向川さんはネット業界で働く人たちが交流するコミュニティをmixi上で設け、「ネット上で物事を考えてはダメ。リアルとネットを融合させなければ本当に企業の役に立つ戦略はできない」というメッセージを発信していった。

「今の取引先のほとんどが、このコミュニティで出合っています。私自身、東京と大阪でオフ会を主催しましたし、ほかの人が企画したオフ会にも参加し多くの人脈を築けました。コンサルティング会社やセールスプロモーション会社に勤める人たちからはマーケティングの仕事を依頼され、ネット上でアドバイスしたり、参考資料をつくって提供したり。当時は無償で請け負いましたが、彼らは私が独立した後のクライアントになってくれています(笑)」

独立から1年たった今年6月には、前職で一緒に仕事をしていた友人と株式会社を設立。現在はマーケティング戦略コンサルティング事業の執行役員として、事業拡大を目指し共同経営にあたっている。

「独立したマーケターの共通の悩みだと思うのですが、相談相手がいないため、どうしても試行錯誤する時間が長くなってしまいがちです。法人化したことは、社会的信用度を上げる効果もありますが、相談できるパートナーを身近に持てたということが、私にとって大きなメリットだと感じています」



PROFILE

向川 敏秀さん(42歳)

1965年、北海道生まれ。大学を卒業後、不動産デベロッパーに入社。不動産活用の事業企画に携わり、その後ファイナンシャルプランナーに転身。ITベンチャー企業に転職し事業開発やWebマーケティングを軸としたチャネルミックスのプロデュースに従事。その後、メーカー系マーケティングサービス会社勤務を経て、2007年 6月に独立する。

取材・文●岩見浩二 撮影●松本朋之
協力●NPO法人インディペンデント・コントラクター協会

[2008.06.20]

営業ツールの写真

一週間見開きタイプのスケージュール帳は、社会人4年目から同じものを使っている。予定記入には3色ペンを活用

POLICY

独立後はやりたいことがすべてできる半面、そのすべてにおいて“自己責任”であることを肝に銘じている。

HOLIDAY

月曜日は家族と夕食を取った後、娘に勉強を教える時間と決めている。土日に働いても平日に代休や半休で調整できる。

MONEY

独立初年度の年収は会社退職時の年収とほぼ同額。今年は法人化したため役員報酬に。初年度年収とほぼ同額で設定。

SATISFACTION

マーケティングプロセスの全工程を通して見る“ゼネラリスト”の立場で、企業や組織に縛られず働ける喜びがある。