勇気と知恵を注入します!独立ビタミンの「増田堂」
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  第9回 成功より成長を!
振り返ってみる

 「ご自身のこの一年を振り返ってみてどうですか?」。そんな質問をよく耳にする時季ですね。それを聞いて、ふと、思うんです。「なぜ1年単位で振り返るのか」と。まあ、なぜもへったくれもないんですが。一般的にそういうもんですから(笑)。

 でも、誰かに聞いてほしいんです。例えば「この20年を振り返ってどうですか?」とか。もちろん15年でも26年でも33年でも何年でもかまいません。

 一瞬、そんなロングスパンで聞かれたら答えられないのでは、と思うんですが、実際そんなことはないんです。自分の年齢から聞かれた年数を引けば、何歳から何歳までの人生について質問されているのかすぐにわかりますから。

 私の場合だと、今47歳ですから、27歳から今日までの20年間がどうだったのかと尋ねられているわけです。「まあ、大変なこともあったけど、総合的には良かったし、だいぶ成長したと思う。あ、だけど体力は落ちたな」。そんな感じでしょうか。


「成長したと思う」ことの価値

 大した答えじゃないですよね(笑)。「うん、大した答えじゃない」と同感した方、ブッブッブッー! それは間違いです。私、重要なことを答えています。「体力が落ちた」という部分ではありませんよ。それはそれで何とかせねばと個人的には思っていますが。

 重要ポイントは「成長したと思う」です。27歳の時の私よりも成長している自分が今いる。私はそう思っているのです。もちろんすぐに解決しなければならない目先の課題や、近い将来、達成しなければならない目標、命のあるうちに成し遂げなければならない理想など、今後に目を向ければ悩ましいことでいっぱいです。でも、振り返ればそこには我が成長の軌跡があります。

 特定の時期の成功や、特定の案件の成功ではなく、あれもこれも、それこそ成功も失敗もひっくるめて、「成長してきた」という実感があります。

 肉体的な成長は人類おしなべて10代でピークに差しかかるのでしょうが、トータルの能力(それは人や社会の役に立つ力という意味)は、心掛けと取り組み次第で無制限に高まっていくのではないでしょうか。少なくとも私は今、過去のどんな時期の自分よりも存在価値が高まっていると感じます。つまり成長し続けているのです。

 そう思えれば、今後に対する不安も吹っ飛びます。自己の成長力を実感できれば、来年、再来年、あるいは5年後、10年後、もっとイケてる自分になれるだろう。そう信じられるのです。いくばくかの金銭や資産などより、よっぽど当てになる財産です。


成長力を維持する方法

 では、いったいどうすれば成長力をキープできるのでしょう? 簡単です。成長せねばならない環境に自分を置くことです。

 もうちょっと詳しく言うと、「成長しなければ失墜し、半面、成長すれば確実に豊かになれる」。そういう環境に身を置くことです。


成長しなくてもいいと思う日本人

 私はニート問題に詳しいわけではありませんが、彼ら・彼女らのことを考えると、どうも「成長しなければ失墜し、半面、成長すれば確実に豊かになれる」とは、正反対の環境にいるのではないかと感じます。「成長しなくても食っていけるし、成長したところで豊かになれるわけではない」。そう思っているのではないかと。

 確かに親が建てた家に住み、食事も出してもらい、多少必要なモノは100円均一の店で入手すれば十分暮らせるのですから、努力して成長しなくてもいいのかもしれません。また、頑張って学校を出て、会社や役所に入ろうとしたところで狭き門ですし、運良く入って必死に働いても、彼らの親の世代のように、将来的に賃金が上がっていく保証もありません。「成長なんかしなくたっていい」。全くそうですね……。

 ニートと呼ばれる人に限らず、似たり寄ったりの心境の日本人が、今かなりの数いるような気がします。でもね、と私は言いたい。「いつまでも あると思うな 親と国」です。これからの日本、成長力を失った人間には、相当つらいものがあると思いますよ。いや、つらいだけならいいんです。その時々がつらくても、希望が持てるのなら心配ありません。


希望こそが成長力の源泉

 だから私は皆さんに起業しませんかと、声を掛けるのです。希望が持てるからです。起業すれば、起業したなりの苦しいこともつらいこともあります。ですが、希望があるからそれを乗り越えようと頑張れるのです。そして、困難を乗り越えていくから成長できるのです。それを続けていれば、成長し続ける生き方のコツみたいなものがわかってきます。そうなれば、もう怖いものはありません。

 成功は一時のものです。成功したと思った直後から、次の課題が現れてきます。そもそも目標のバーを下げれば成功など簡単に手に入ります。しかし、成長は間違いのない成果です。もちろん簡単に手に入るものでもありません。だからこそ成長には価値があるのです。他人がどう言おうと、「以前の自分より今の自分のほうが伸びている」という実感。それは生きていく、生き続けていくための大きな力になります。


「人生は楽しいもの」ですよね?

 私は大した財産を築いたわけでもありませんし、すごい発見や発明をしたわけでもありません。普通の人間です。挑戦と失敗と反省と学習と再挑戦を繰り返しているだけの人間です。でも、それで十分に幸せです。その日々が私に成長をもたらしてくれるので。

 2006年の12月で、私が会社を設立してちょうど20年になります。起業して良かったと心底思います。そして今からの20年。きっと、もっと素晴らしい歳月になると思っています。人生は楽しいもんです。成長し続ける限り。
Profile
増田氏写真
増田紀彦
株式会社タンク代表取締役
1959年生まれ。87年、株式会社タンク設立。97年、「アントレ」創刊に参加。以降、同誌および別冊「独立事典」編集デスクとして起業・独立支援に奔走。また、経済産業省後援プロジェクト・ドリームゲートでは、「ビジネスアイデア&プラン」ナビゲーターとして活躍。講演やセミナーを通じて年間1000人以上の経営者や起業家と出会う。現在、厚生労働省・女性起業家支援検討委員、中小企業大学校講師、(財)女性労働協会・女性起業家支援セミナー検討委員などを務める。また06年4月からは、USEN「ビジネス・ステーション」のパーソナリティーとしても活動中。著書に『正しく儲ける「起業術」』(アスコム)、『小さくても強いビジネス、教えます!起業・独立の強化書』(朝日新聞社)。ほか共著も多数。



   

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