新しい経済価値創造グランプリ ビジネスプラン大会(2015年12月12日)

昨今さまざまな場所で開催されているビジネスコンテスト。ビジネスコンテストでは参加者自身がビジネスモデルをつくりだし、その優劣を競い合う。2015年12月12日、同志社大学で「新しい経済価値創造グランプリ ビジネスプラン大会」が開催された。同志社大学経済学部・経済学会が主催するこの大会は、学生の能力向上を目的として3年前から開催されている。ビジネスの第一線で活躍するプロフェッショナルを審査員に迎える中、独立・起業の専門家としてアントレ編集長が審査員として参加した。

今回の大会のテーマは『京都の経済と社会をよりよくするアイデア〜京都の未来を考える〜』。京都の街にとって、京都の人にとって、また世界から見た京都にとって、必要な事業とはなにか。また新しいプロジェクトとはどんなものか。京都の未来を支える学生たちがビジネスプランを発表した。審査には5つの基準(1.社会貢献性・公共性、2.事業持続可能性、3.新規性・独自性、4.市場性・経済性、5.プレゼンテーション力・共感力)があり、この基準で審査されて第2次審査を通過した5チームがプレゼンテーションを行った。最優秀賞に輝いたのは『EnECOS(Enjoy ECO shopping)』だ。京都のホテルや飲食店、小売店をスポンサーとしてクーポン付きエコバッグを販売することで、レジ袋の消費を抑制し、京都の環境を守るアイデアで1位を獲得した。環境問題という大きなテーマに、エコバッグという身近で取り込みやすいアイデアが評価された。そして2位を獲得したのが『HALAVEGE』だ。京都の外国人観光客の中でもとくにイスラム教徒とベジタリアンという食事に制限のある観光客をターゲットにした飲食店の情報サイトをつくるアイデアが評価された。『HALAVEGE』はビジネスモデルの新規性が高く評価され、アイデア賞/リクルート特別賞も受賞。他に特別賞として日本政策金融公庫特別賞、umehara特別賞、ANA特別賞、審査員特別賞/エクス特別賞があり、それぞれが各チームに授与された。

「HALAVEGE」提案メンバー

同志社大学経済学部の学生9名からなる『HALAVEGE』。ビジネスプラン大会ではチームリーダーの風岡さんを筆頭に、落合さんがプレゼンターを務めた。仲の良いあたたかな雰囲気のメンバーで構成された『HALAVEGE』は今回のビジネスプラン大会で2位を獲得。ビジネスの新規性を重視したアイデア賞/リクルート特別賞も同時に受賞し、ダブル受賞となった。

参加メンバー:落合 元大さん、風岡 孝輔さん、菅谷 遥さん、近本 瑠理子さん、林 亮子さん、古澤 実梨さん、波多野 聖人さん、森 一輝さん、山中 皓輝さん(敬称省略)

アントレ編集長 菊池保人

1987年4月リクルート入社。企画・営業を経て、HR領域(新卒・中途・アルバイト・パート)、住宅領域(分譲・仲介・注文・賃貸)、進学、学び、結婚、自動車、旅行、飲食・美容領域にて事業のIT戦略立案・実行部隊責任者を担う。2009年4月〜ネットマーケティングにおけるリクルート全社横断の戦略立案・実行部隊責任者、2012年4月〜リクルートキャリア 新規事業開発、2013年4月〜現職

受賞したことでみんなの努力がカタチになった

菊池:総合2位とリクルート特別賞のダブル受賞おめでとうございます。率直な感想を聞かせてください。

落合:ストレートにうれしかったですね。

菊池:そうだよね。うれしいよね。うれしい以外の言葉で表すとどんな感じ?

古澤:驚きました。なんで私たちなんだろうって。けっこう審査員に厳しくつっこまれたのになって。

菊池:審査員がつっこむのはね、関心を持たれてるってことなんだよ。

古澤:なるほど。そうなんですね。

菊池:『HALAVEGE』のプレゼンはとても具体的だったから、審査員もイメージしやすかったんだね。

近本:夏からがんばってきたので報われたというか、カタチになって良かったなって思います。

菊池:たしかに受賞してカタチになったよね。最後評価されないとピリオドが打てないし、次にいけないんですね。
ビジネスプランを評価されて良かったなぁで終わるんじゃなくて、何を改善したらもっと良くなったのか。
それをこれからみんなで振り返ってしっかり検証していくと、これから社会人になってもきっとこの6ヵ月間のみんなのがんばりが活きてくると思う。

イスラム教徒とベジタリアンをターゲットにした斬新なビジネスプラン

菊池:なぜイスラム教徒の方とベジタリアンの方、2つをターゲットにしたの?

森 :最初はイスラム教徒の方だけをターゲットとして考えていたんです。でもイスラム教徒の方向けサイトがすでにある中で、どう差別化しようという話になって、ベジタリアンの方も入れてみようってことになりました。

菊池:そのときのみんなの意見はどうだった?すぐにそれでいこうってなったの?

菅谷:最初はユダヤ教徒の方も入れたらどうかという意見もありました。

古澤:あとアレルギー対応にしようかという話もでました。

菊池:リーダーの風岡くんはその辺りの葛藤は何かありました?

風岡:けっきょくは食事に不安のある人に食事の環境を整えたいというベースの考えは変わらないので、特に葛藤はなかったです。

菊池:なるほどね。でもなぜ食に対して負を持った人たちをターゲットにしようと思ったの?

山中:日経新聞だったかな。日本に観光に来たイスラム教徒の方とかベジタリアンの方が食事で困っているという記事がでていて、そこから考えたのがきっかけです。

菊池:新聞記事がきっかけなんだね。なるほど。
審査員たちはけっこう厳しいコメントをしていたけど、あれは逆に誰もこの市場には入ってこないことを表してるんだよね。つまりレッドオーシャンじゃなくてブルーオーシャンのビジネスプランなんですよ。
だから審査員たちが指摘したことを突破する何かを見つけられたらおもしろいと思うな。
リクルートはいつもそこを突破する何かを見つけて新事業を立ち上げてきたから、
みんなのビジネスプランはリクルートっぽいなと思って、なんだか熱くなったよね。
後で聞くと、審査員はみんなけっこう『HALAVEGE』を推してたんですよ。

山中:えー!そうなんですか!?

菊池:他のチームは日本に来る外国人全員をターゲットにしてたよね。
でもみんなはイスラム教徒の方をターゲットにする、ベジタリアンの方をターゲットにするって言ったんだよ。
ターゲットの選び方からして頭ひとつ飛びぬけてるよね。
だからこそ、そこからもっとシャープに考えていけばさらにおもしろくなると思う。
まずはどのぐらいの規模でやればビジネスにできるのか考えてみて、その規模で成功させてから徐々にビジネスの幅を広げていけたらいいんじゃないかな。
今の時代、成功への道筋はそういうところにあると思うから。

仮説を立てて検証することの大切さを学んだビジネスプラン大会

菊池:『HALAVEGE』のプランに決定する前はどんなアイデアがあったの?

近本:もうひとつ一次審査を通過したビジネスプランがあったんです。レンタサイクルの事業だったんですけど、観光客とレンタサイクルをつなぐというアイデアでした。ただ競合他社も多いのと、レンタサイクルにiPadをつけて地図など観光案内の情報を入れたらおもしろいかなって考えたんですけど、そうするとiPadの保証金とか、駐輪場の維持管理費などの問題がでてきて。

菊池:そっか、設備産業の話になっちゃったんですね。じゃあそういう事業に関してはいったんトレーニングは終わってるんだね。

落合:そうですね。2つとも一次審査を通ったときに『HALAVEGE』でいこうってなりました。

菊池:『HALAVEGE』はイスラム教徒の方とベジタリアンの方の食事の不安を解消する、飲食店情報を掲載するサイトを運営するというアイデアだけど、このサイトの効果の検証が難しいよね。
『HALAVEGE』のサイトから飲食店に来訪したという確認が取れる仕組みが必要だけど、プレゼンでそういう話はでなかったよね。
サイトの効果を検証できる仕組みを考えてみるとさらに良くなったと思う。

森 :最初はサイトにクーポン機能をつけようとか、1品料理がつくような特典をつけて店舗でサイトの来訪を確認しようという意見もあったんですけど、最終的にできなかったんです。

菊池:なぜダメだねってなったの?

風岡:ダメというよりも、自分たちが海外に行ったときのことを考えてみると、旅行先でクーポンを使おうという気分にはならないよねってなったんです。
旅行だからお金を使おうって気分になってる可能性があるなって話がでて。

菊池:それが仮説を立てるってことだよね。外国人観光客はクーポンをいっぱいもらっても使えきれないよねっていう「クーポンうれしくない仮説」にみんなが同意したんだね。
そういうことを議論していくといろんな仮説がでてくると思う。仮説から新しいビジネスは生まれるからね。

学生たちに「独立すること」について聞いてみた

菊池:「アントレ」って媒体はみんな知ってる?

皆 :知らないです。

菊池:ミドルシニアの世代を中心に「雇われない生き方」を提案している媒体なんだけどね。
ミドルシニアを応援しながらじつは若者を応援してるんだよね。
就職しなくたって、もし雇用が切られたって生きていく社会はある。それが雇われない生き方なんです。
たとえば今日のビジネスプラン大会で司会をされてた方。彼もたぶん個人事業主なんですよ。
ようは雇われない生き方を自ら選択した一人です。自分で営業して司会の仕事を開拓してるんだよね。

皆 :なるほど。

菊池:こういう人たちが自由に生き生きと働いていたら、会社にいって失敗しても、会社で出世できなくても大丈夫なんだってなるよね。
みんなは独立するイメージってできる?『HALAVEGE』のビジネスでもいいし、こういうビジネスプラン大会は将来のトレーニングの一環でやってると感じたりしてるのかな?

落合:ビジネスプランを考えてるうちに、みんなでこれやってみたいねって話はけっこうでました。

菊池:え、そうなの?なるほどなぁ。

落合:僕は公認会計士を目指してるんですけど、最初は監査法人に勤めてゆくゆくは独立したいと思っています。

菊池:そうなんだね。

風岡:僕は起業よりは務めた会社で企画とかを出していきたいなと思ってます。

菊池:事業開発などかな?

風岡:そうですね。

菅谷:私も起業は考えてないですけど、ビジネスプラン大会に取り組む前よりは考える力が付いたと思うので、会社に勤めていろんな企画を積極的に発案していきたいと思ってます。

近本:私は独立よりも、安定的にいきたいです。

菊池:なるほどね。それぞれいろんな考え方があるよね。
ただ世の中がずっと安定するかはわからないんだよね。常に変化するものだから。
大会の冒頭でどなたかが言ってましたね。世の中が変化するから自分も変化しないと安定しないという逆説を。
これから生きていく上で今日の経験がどこかで役に立てばいいなと思います。
学生のときにあんなことやったなぁってね。僕は学生のときから30年近く経ってますけど、学生のときに鮮明に覚えたことは今でもちゃんと役に立ってるんですよ。
みなさんもしっかり振り返りをしていただいて、今日の経験をどこかで役立ててくださいね。

今日はありがとうございました。

全員:ありがとうございました!