起業のヒントになる!? 米国発☆ビジネス最前線

起業のヒントになる!? 米国発☆ビジネス最前線 / 月2回更新

取材・文 / 田中秀憲

プラスアルファに特化した
富裕層向けの収納サービス

狭い中に数千万人の人々がひしめくニューヨーク。連日どこかでパーティが行われ、またオペラやバレエなどドレスアップして出かける機会も多い。特に裕福な人たちは、ドレスやそれらに合わせた靴を選ぶのも一苦労だ。そんな富裕層に特化したサービスをちょっと変わった形で提供している会社がある。それが今回ご紹介する「Garde Robe, Inc(以下、ガード・ローブ)」である。

前回のリポートでは米国のストレージサービスについてお話しした。このようなサービスは狭い部屋の収納に悩む一般市民だけではなく、衣装が膨大な量となって困りはてた富裕層にも非常に便利なサービスとなっている。「ガード・ローブ」は収納+アルファの、ある特別なサービスを提供することで新しい市場を見いだしている。

収納プラスアルファの発想

HP1

同社のビジネスの基本となるのは衣料品の収納だ。顧客が所有する大量のドレスや靴、そしてアクセサリーなどを丁寧に保管してくれる。対象とする顧客は富裕層に限られ、預かるドレスやアクセサリーも高価なものが多くその管理には特に注意を必要とするものばかり。そのような品々を安心して預けられることが可能な点が同社のメリットである。

しかし同社の真骨頂はここからだ。同社が提供するプラスアルファのサービスとはこのような仕組みになっている。
1.預かったすべの衣料品を、フォトグラファーが見栄え良く撮影。
2.撮影画像のデータベース化を行い、種別ごとに分類。
3.すべての商品をオンラインでチェックできるようにして、顧客にそのサイトを公開。

顧客はそのサイト上で自身の預けたドレスを確認し、次回のパーティに必要なドレスにチェックを入れる。そうするとガード・ローブはそのドレスを自宅まで配送してくれるというわけである。

同社が考える顧客層は大きく2つに分かれているという。ひとつはニューヨーク市およびその近郊に住む富裕層。そしてもうひとつは旅行などでニューヨークにやってきた人々だ。前者は、自宅のクローゼット内であれやこれやと悩むことなくリビングルームのテーブルでコーヒーを飲みながらドレス選びができる。自宅内で保管する場合に比べ、湿気や虫食いなどに悩まされずに済み、またどこに収納したのか忘れてしまったなどというケースからも解放される。

後者は重たい荷物を引きずって移動をするのではなく、事前に同社あてに洋服の詰まったスーツケースを送っておけば身軽な旅が楽しめるというわけだ。同社では荷ほどきと品々のチェックの後に撮影を行い、サイトにアップ。旅行者にはパーティの前日に、事前に選んだドレス一式がホテルの部屋まで配送される。また州外に在住の顧客も宅配便での配達などで同社のサービスを利用しているケースも多いという。

また配送時は、ちょっとした仕立て直しのためのお針子さんや足ツボマッサージ、ドレスとアクセサリーのコーディネイト、ドレスにあったメイクアップやマニキュアなど、様々な付帯サービスも提供している。毛革など特殊な品の場合は温度管理などの可能な場所に収納し、自宅での保管に比べ安心していられることのメリットも大きい。すべての収納品は監視カメラで厳重に管理され、盗難などの不安もない。ガード・ローブの「ガード」とは、衣類を守ることのほかに、それにまつわる様々な面倒から顧客を守ることにも通じているのだ。配送は基本的に年中無休。事前に予約を入れておけば指定された時間に自宅まで配送をしてくれる。商品の撮影前には掃除やしわを伸ばしたりと丁寧な作業も含まれている。

コストよりも利便性

言うまでもなく同社のサービスを利用するには、それ相応のコストが発生する。50着ほどのドレスと10足の靴を預かってもらった場合で、費用は月当たり350ドル程度から。最低6カ月からの契約となっており、やはり比較的裕福な層が対象であることがうかがい知れる。実際に多くの顧客は最低単位どころかその数倍のスペースを利用している人がほとんどだと言い、毛革など特殊な管理をするものも多いことから毎月の経費はさらに上昇することが多いのだそうだ。しかし同社の顧客の多くはそのような経費などは全く気にならないのだという。

HP2

また、自宅クローゼット内の整理やオンラインカタログ化などに魅力を感じて同社のサービスを利用する顧客も増えているという。同社の収納サービスは「サテライトクロゼット(同社広報より)」という概念で運営されており、事実、自宅のワードローブが膨大になりすぎたが故に同社へ依頼し、その整理と分類/保管を代行してもらう、という利用者も多いのだという。旅行前であれば衣料品のパッキングの手伝いやシャツ類のクリーニングまでもが同社のサービス項目に並べられている。また不要なドレスの委託販売なども受け付けており、まさに至れり尽くせりのサービスだ。

しかも顧客のアイデアからビジネスの展開が広がっているという。例えばラスベガスでショーを観劇に行く女性は、前日になってようやくノートPCを広げ、現地の天気や体調なども見据えたうえでドレスを選ぶだけ。本人は身軽な軽装で現地へ赴く。FEDEXを利用すれば一両日中にドレスが届き、颯爽とパーティを楽しむ。もちろん帰りもドレスは別便でガード・ローブへ直送。このようなサービスの利用をするお客も出てきているのだという。重い荷物を旅行先のタクシーに押し込む手間などからは一切解放されるわけで、なるほど人気が出るのもうなずける。

言うまでもなく同社の顧客には著名な資産家やその夫人、女優やアーティストなど、いわゆるセレブリティと呼ばれる人々が名を連ねているという。彼らのコネクションがさらに顧客を呼ぶこととなり、現在同社のビジネスは急成長中とのことだ。高価格を維持することができ、また優良な顧客の選別の可能となるこの新ビジネスだが、そのスタートに何らか特殊な要件があったわけではない。顧客はセレブでも、ビジネスを始めた本人は資金もコネも技術も必要としなかった。ちょっとしたアイデアと労をいとわない「やる気」さえあればこのような成功を収めることが可能なのだ。

次回は2007年10月19日更新予定。お楽しみに!

ページの先頭へ