ごらい・ちづる/山口県出身。結婚・出産を機に出版社を退職し、専業主婦に。その後、企画会社で各種販促企画を経験し、1999年にフリーランスとして独立。「広島SOHO’クラブ」「広島SOHO’オフィス」をスタート。2002年に「有限会社SOHO総研」設立。
2008年12月4日から「創造的事業拠点SO@R(ソアラ)」の社会実験事業を開始。そのオープニング見学会には、地元はもとより全国から大勢の人が訪れた
法人設立したのは2002年1月ですが、「独立したのはいつか」と聞かれれば、フリーのプランナーとして活動をスタートした1999年7月です。それ以前は企画会社に勤めて様々な販促企画に携わっていました。フリーランスとして動き始めて1年半後の2000年12月には、いわゆるSOHOといわれるフリーランスの仲間たちを集めて「広島SOHO’クラブ」を立ち上げました。私自身が、SOHOならではの孤独感や、交流不足を実感していたからです。毎月の交流会のほか、定期的にメールマガジンを発行するなど、今、その活動はますます活性化しています。
そして2001年には、SOHO仲間でオフィススペースをシェアしようと、「広島SOHO’オフィス」を開設。当初はビルのワンフロアで、10人でスタートしました。現在は3フロアを使い、そこに20強の個人事業主や法人が入居しています。しかし当初、この共同オフィス事業を自分でやるつもりはなく、空きフロアの活用方法としてビルのオーナーに提案したもの。でも、「ビジネスとして成り立たない」と断られるばかりで、ある方から「牛来さんがやればいいよ」と言われて。それで晩じっくり考えて、「よーし、自分でやっちゃえ!」と(笑)。私自身も、これはビジネスとは考えませんでした。だから私もオフィスをシェアリングしているメンバーのひとり。私が代表してビルのオーナーに家賃を支払いますが、家賃、管理費、設備費などすべての経費をメンバー全員で負担して、赤字にならなければいいという考えで運営しています。
社会実験事業は広島市西区の「広島フェスティバル・アウトレット マリーナホップ」のアミューズメント棟(旧セガゲームセンター)で行われている(2009年2月24日まで)
「有限会社SOHO総研」として法人を設立したのは2002年。SOHO事業者やフリーのクリエイター、起業家仲間が増えて、交流も盛んになってきたことから、それぞれの力を地域や企業につなげたいと考えての法人化です。その際に悩んだのは、営利法人にするか、それともNPO法人にするか、どちらがいいかということ。地域に貢献するという意味ではNPO法人、でもビジネスとしての活動も積極的にやっていきたいなら営利法人。結論を出すために、信頼している先輩起業家にアドバイスを仰ぎました。
それによって、整理ができたんですね。私が考えている事業は「新しいやり方を創出していく事業」。そのためにはかじ取り役である「強いリーダーが必要」。また、事業を発展させていくためには、「数値目標があったほうがいい」。さらに、「営利法人の代表になれば、強い責任感と高いモチベーションが保てる」という考えに至り、有限会社という営利法人の設立を選択したのです。この選択は間違っていなかったと思っています。
現在は、共同オフィス事業、SOHOコーディネート事業、セミナー事業の3つが当社の柱となっています。コーディネート事業は「SOHOプロダクション広島」という専用サイトをつくり、実績があり信頼性の高いSOHO事業者や、デザイナー、ライター、Webクリエイターなど、様々な分野のプロフェッショナル約700人と提携。必要な時に必要な人材をと、直接クライアントにつないでいます。セミナー事業は、SOHOや起業家を講師に、当社が主催するセミナーのほか、広島で開催される各種ビジネスセミナーについて専用の情報サイトで発信。また、講師の紹介も手がけています。
一昨年(2007年)には、有志のクリエイターらと発案し「竹炭入りもみじ饅頭“黒もみじ”」を商品化。昨年(2008年)の元旦から販売を開始しています。そう、あの広島で有名なもみじ饅頭の新商品です。そして、今年(2009年)は“赤もみじ”の発売も予定しています。実はこの新商品開発は、今年から本格的な活動をスタートさせる「SO@R(ソアラ)プロジェクト」の3本柱の一つ「ものづくりプロジェクト」の中で生み出されたもの。SO@Rプロジェクトとは、広島の新しい価値と魅力をつくり出すことを目的に、クリエイターなど創造的な事業者それぞれが有機的にかかわりながら、「人とモノを創造し発信する」ためのプロジェクトです。昨年の12月から今年の2月の間、広島市西区の「マリーナホップ」で社会実験(テストマーケティング)を行っています。クリエイターや企業向けの大小個室オフィスと共有スペース、作品の展示販売スペース、さらにはセミナーやイベントなどのスペース、音響スタジオやカフェなども開設しています。今は、SO@Rプロジェクトの本格稼働に向けて全力投球中です。
自分を成長させたかったからです。会社勤めでもステップアップはできますが、経営者になれる確率はとても低いでしょう。だったら自分の意思で経営者になって、やりたいことに挑戦して、苦労も経験して……と思ったのです。そういう思いばかりが先に立って、きちんとした事業計画なんて書いていません。でも今考えると「どうにかなるさ」という、危険なスタートだったのは確かですね(笑)。
フリーランスのプランナーとしてひとりで独立した時は、特に資金が必要ではなかったのでゼロです。有限会社SOHO総研として法人化したのは2002年1月ですが、その時の開業資金は300万円。それは資本金として用意したものですが、そのほとんどがスタッフの給料として消えました。
私と知人のふたりの共同経営でスタートしましたので、それぞれが自己資金を150万円ずつ出し合って用意したものです。
ごく自然に受け止めてくれましたね。特に反対するような人はいませんでした。
会社を設立した当時はとにかく必死で、何かを不安に感じるヒマさえありませんでした。最大のピンチは設立1年後に共同経営者が引退することになったことです。社内のシステムづくり、それに総務や経理も任せていたので、これからは自分ひとりでやらなければならないのかと……。でも、周囲の仲間たちの助けもあって、考えていたようなピンチに陥ることなく、うまく切り抜けることができました。
いろいろなことを調べるために使ったのは、やはり一番身近なインターネットです。ただ、絶対に信用できる情報を得たい時は、それぞれの分野に詳しい知人や専門家を頼りにしました。経営のことならあの人、経理のことならこの人と、その時その時に必要なことを、的確な情報をもたらしてくれる人に聞くようにしていました。それを機会に直接お会いすることが増えれば人脈もますます広がりますからね。
それは情報源とも重なりますが、法律なら弁護士、経理のことなら税理士と、それぞれの専門家に相談しましたし、今もそうしています。また、事業拡張のために協力をお願いしたい企業の代表者にお会いしたい時は、その方のことをよく知っている知り合いに紹介を頼んで積極的に会うようにしています。
困ったこと……ないですね(笑)。いつもどんなことでも切り抜けていこう、いけると考えているから、困ったと感じないのかもしれません。
「夢はかなう」ということを実感できたことです。具体的には、フリーランスとして独立を果たし、2000年に「広島SOHO’クラブ」を立ち上げ、2001年に「広島SOHO’オフィス」を開設し、2002年には「有限会社SOHO総研」として法人化と、目標を一つ一つ達成できたこと。そして昨年(2008年)には、「SO@R(ソアラ)プロジェクト」のスタートにこぎつけました。今もまだ助走期間と思っているのですが、これからの本格化に向けた“光”が見えてきたところです。
「これがやりたい」というしっかりとした意志を持って動き続ければ、本当に夢はかないます。途中で立ち止まってもいいけれど、あきらめてはダメ。それに、何か失敗した時は、「まっ、いいか」というくらいにクヨクヨしないことも大事です。深く落ち込むようなことがあっても、「今は充電期間」と考えて、心身共にリフレッシュするつもりで休息すればいいんです。「こんなことがやりたい!」と考えている人は、ぜひ独立にチャレンジしてほしいと思います。
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