ワッフルに笑顔を添えて
心の交流を楽しんでいます
「ネパールを旅したことが人生を変えたきっかけ」と話す角井さんは、大学卒業後、自分をリセットしたいとネパールへ向かった。約3カ月間のホームステイを、自分の将来について考える時間に充てた彼女は、以前から興味のあった飲食業界を目指す決意をして帰国。日本茶専門カフェでアルバイトを始めた。しかし、ホール責任者になった頃から毎日が忙しく、自分の時間が持てなくなってしまったことに不満が募る日々。彼女が望むのは、老若男女問わず気軽に入れて、お客さんとの触れ合いを楽しめる店。しかし、勤めていた店は繁盛店ということもあり、そんなスタイルとはかけ離れていた。
「組織の歯車ではなく、もっと自分らしく働きたい。その思いは次第に強くなり、カフェを辞めました。自分らしく生きながら、飲食の仕事に携わっていこうと決意したんです」
どんなスタイルで飲食業を始めるかを思案した時、資金や生活スタイルを考えると店舗を持つのは厳しいと判断。
「その時、ネパールで見た自転車の移動販売を思い出したんです。あれなら開業資金も少なく、地域密着でお客さんと交流しやすいと考えました」
ネパールで地元の人たちから影響を受け、自身もベジタリアンになった角井さん。商品は体に良く、つくりやすいものにしようと考え、自分が好きな玄米を使ったワッフルにたどりついた。
ワッフルをつくっては家族や友人に試食をしてもらう毎日。それと並行して保健所に営業許可を取ろうとしたが、なかなか下りずに苦労したという。
最後は担当者に熱意が伝わり、何とか許可をもらうことができた。
2005年12月31日に、やっとのことで営業許可を手にした彼女。大晦日の夜の初詣で客を狙って、近くの神社の前でワッフルの移動販売「夕焼けこやけ」の開業を果たした。
「初めての販売はとっても緊張しましたが、友人たちが手伝いに来てくれて、用意した60個がすぐに完売しました」
彼女のつくる玄米ワッフルは、卵や牛乳を使用せず、国産の豆乳を使っているためアレルギーのある子供でも安心して食べられるのが特徴。
人懐こい角井さんの笑顔に誘われて、子供連れのお母さんや学生、老人など、リピーターは多い。
「暑い日には『大変だね』って、パラソルや冷たい飲み物を持ってきてくれたり、営業日に会えないと営業場所のそばの木に手紙を置いていってくれたりするんです。そんな温かな交流こそ、私が望んでいた飲食業の形ですね」
彼女は、毎朝4時に起床して、ヨガや散歩をじっくり楽しむ。仕込みを8時から開始して、販売は正午から2時間程度。収入は同級生の会社員にはとてもかなわないと笑うが、その代わりに、彼女は自分らしく生きる時間を手に入れたという。
「いいお客さんに囲まれて、自分の目指していた生活スタイルがかないました。毎日がとても幸せです!」