任意整理とは?意味ない?しない方がいい?やばいの?メリット・デメリットと向いている人

債務整理の中でも比較的手軽に実践できる「任意整理」。借金問題に悩んだときに、任意整理をするとどうなるのか?メリットやデメリットが気になるところです。
将来利息をカットしたり、元本のみを3年ほどで分割して返済するといったことで負担を少なくして返済できるように借金減額を目指すものです。
でも、メリットだけなのかというと決してそうではありません。
任意整理をした方がいい理由(メリット)やおすすめタイプ、逆にしない方がいい場合(デメリット)について、わかりやすく解説します。
Contents
任意整理とは?債務整理の中で多く行われている手続き
借金問題を解決するために国が認めた救済措置である「債務整理」。あなたの借金も減る可能性があります!
「債務整理」には、以下のような手段があります。
- 過払い金請求
- 任意整理
- 民事再生
- 自己破産
それぞれが異なる特徴を持っていますが、制限が少なく比較的多く行われている債務整理の手続きが「任意整理」です。
任意整理の特徴と条件
【特徴】
- 裁判所を介さないで、債権者への手続き、交渉ができる
- 将来発生するであろう利息をカットし、元金のみ3〜5年で分割返済
- 整理したい借入先を選んで個別に交渉できる、したくない借入先についてはそのままでOK
【条件やできないケース】
- 残った借金残高を返済していく安定した収入がない
- 借入先によっては和解に応じてくれないところもある
- 保証人がついている借金の場合、保証人へ一括返済を迫られてしまう
- 借入先からすでに差し押さえにあっている
債務整理で、特に任意整理の手続きが選ばれるのには、やはりそれなりの理由があります。
任意整理をすることで、得られるメリット6つ
では具体的に、任意整理のメリットとは、いったいどこにあるのでしょうか。6つのポイントを、詳しく解説していきます。
最短即日で平穏な生活を取り戻せる!
借金の返済が難しくなってしまったとき、債務者を悩ませるのが債権者からの督促です。
督促を停止させるための方法の一つは、もちろんきちんと借金を返済すること。
そしてもう一つの方法が、債務整理の手続きをスタートすること。債務整理が完了しなくても、手続きを始めた段階で厳しい取り立てをストップさせることができます。
弁護士や司法書士に任意整理の依頼をした場合、弁護士や司法書士から業者に対して、受任通知が送付されます。
- 受任通知とは…
- 「この借金問題を、弁護士・司法書士が担当すると決定したこと。よって今後の連絡は、本人ではなく代理人を介するように」と伝えるための書類。借金問題を専門家に依頼した場合、最初に行われる通知。
これによりお金を貸す側の業者は、本人に直接取り立てを行うことができなくなります。
任意整理なら、その後の職業が制限されない!
債務整理によっては、その後の生活に一定の制限が設けられてしまいます。
職業制限は、その中の一つ。たとえば自己破産を選択すれば、その後、以下の仕事に就くことは不可能になってしまうのです。
- 弁護士
- 司法書士
- 公認会計士
- 税理士
- 宅地建物取引士
- 信用金庫
- 質屋
- 旅行業務取扱の登録者
- 警備業
※上記は一例。この他にも制限を受ける職種あり。
一定期間過ぎたあとに制限が解かれるケースもありますが、一度は職を離れる必要があり、何事もなくずっと働き続けることは不可能になってしまいます。
自己破産ではなく任意整理を選択すれば、こうした職業上の制限を一切受けることはありません。現在どんな職業に就いていても、不利益を被ることはないのです。
車や家を処分する必要はありません
債務整理を行った場合、自身が所有する財産をすべて処分しなければならないのでは?と思う方も多いのではないでしょうか。
任意整理の場合は、自身が保有する財産の処分をする必要はありません。
- 住宅
- 土地
- 車
これらの財産は、「処分されると困る!」と思う方も多いはずです。任意整理なら、不安を感じる必要はありません。
任意整理では対象とする債権者が選べるところも特徴です。
所有権留保がついている場合は、ローン会社に車などを引き上げられる可能性がありますが、車のローンを対象にせずそれ以外の借金だけを対象の整理にすればOKです。
ローンが残っていない自家用車であれば、何の問題もなくそのまま乗り続けることができます。
返済の負担を軽減し、生活の立て直しがしやすくなる!
借りたお金を返済する際には、実際に自分が借りた「元本」に、業者側の利益となる「金利手数料」をプラスして支払うことになります。
元本が増えれば増えるほど金利負担は重くなり、徐々に返済が厳しくなってしまうという特徴があります。
任意整理は「借金を整理して減らすための手続き」。多くの場合で実際に行われるのは、取引開始時にさかのぼり利息制限法の上限金利(15~20%)で再計算(引き直し計算)された元本を分割払いすることと、将来部分の利息をカットするための交渉です。
- 【将来の利息負担をカットすることで得られるメリット】
-
- 利息カットしない場合と比較して、総返済額が減少する
- 返済すればするほど、残高が減っていくのを実感できる
【特におすすめのタイプ】
- 借金の金額が大きい人
- 毎月返済していても、元本が減らないと感じている人
- 高い金利が設定されている人
将来的に支払う利息分が圧縮されるだけでも、借金返済の見通しは立てやすくなります。
基本的には専門家にお任せでOK!手間なく返済を楽にできる!
任意整理は、自分で手続きを行うこともできますが、弁護士や司法書士といった専門家にお任せするスタイルが一般的です。
依頼時には、これまでの借金履歴について詳細に相談をする必要がありますが、その後の流れは基本的にお任せでOK。
任意整理は、債務整理の中でも手間なく行える方法として知られています。
複数業者の中、任意整理するかどうかは自分次第!
借金問題で悩んでいる方の中には、一社だけではなく複数社から借入れを行い、それぞれ返済しているケースもあります。
任意整理の場合、これらの業者の中の、「一社のみの借金を整理したい」と思った場合でも対応が可能。
任意整理はメリットだけじゃない!デメリットを事前にしっかり確認を!
任意整理には数多くのメリットがありますが、少なからずデメリットも存在します。債権者に不利益を与える手続きのため、いたしかたないのですが、任意整理しなければよかった…とならないために、しっかりと知っておくことが重要です。
ブラックリストに載ってしまう
もっともよく知られているのが、ブラックリストへの登録。(ブラックリストなるものは実際には存在しません…信用情報機関への事故情報が登録されるということです)
下記3つの信用情報機関への掲載となります。
任意整理 | 個人再生 | 自己破産 | |
株式会社日本信用情報機構 (JICC) | 5年 | 5年 | 5年 |
全国銀行個人信用情報センター (KSC) | 5年 | 10年 | 10年 |
株式会社シー・アイ・シー (CIC) | 掲載なし※ | 掲載なし | 5年 |
※ただし代位弁済が行われた場合、返済状況「異動」となる期間が5年
任意整理の場合、返済完了から5年間は消すことができません。登録中は新たな借入や融資を受けること、ローンを組んだりクレジットカードを組んだりすることがとても難しくなってしまいます。
なぜなら、あなたが新たにローンを申し込もうとした時、ローンを組む金融機関はこれらの信用情報を確認するからです。事故情報が載っているため、審査に通る可能性は限りなく低くなってしまいます。
しかしながら、このデメリットを考慮しつつもやはり、返済できない借金をずっと抱えて借金地獄に陥るよりは、これ以上は借金をしない!という考えのもと、任意整理をして平穏な生活を取り戻していくことの方が重要だと考えます。
クレジットカードは強制解約…
任意整理を含む債務整理を行った場合、クレジットカードは強制解約となります。ローンと同じように、申込時に信用情報を照会されるため、登録中の5年間はクレジットカードの新規発行ももちろんできません。
クレジットカードに付帯しているサービス(ポイント、マイレージ、特典など)も全て解約となってしまいます。
一点忘れてはいけないのが、ETCカードについてです。こちらもクレジットカードに付帯しているサービスの一つであるため、強制解約の対象になります。
現金決済も可能ですが、高速道路を頻繁に利用する場合、新たな支払い手段を用意する必要があります。ETCパーソナルカードを発行するのがおすすめです。
ETCパーソナルカードの発行時には、信用情報は照会されません。だからこそ、任意整理でブラックリストに載った場合でも発行可能です。
どうしてもカード払いをしたい!という方に、代替案として、デビットカード発行をおすすめします。普通のクレジットカードのように使え、支払いと同時に銀行口座から引き落とされる仕組みです。銀行口座に必要残高がないと買い物できないので、残高チェックは必須です。
携帯電話の端末分割購入ができなくなる!
任意整理でブラックリストに登録されると、携帯電話の端末分割購入ができなくなります。一括購入するしか方法がなくなりますから、注意してください。
端末の分割購入ができない理由は、契約申し込み時に信用情報をチェックされるため。ブラックリスト入りがわかれば、当然「高リスクな人」と判断され、審査に通りにくくなってしまいます。
収入がないと利用できない!
利息をカットしてもらえるため返済が楽になる任意整理ですが、元本部分を分割して返済しなければならいため、安定した収入がない場合はそもそも利用することができません。
減額幅が少ない可能性がある
個人再生や自己破産よりも減額できる金額が大きくない点も注意です。
もちろん、任意整理する前よりは利息分カットと分割払いでかなり楽になると思いますが、借金の額がそもそも大きい人は、まだまだ返済金額が高額という場合も。
そういった場合は、自己破産や個人再生も選択肢に入れておく方が良いかもしれません。
債権者の合意がないとできない
利息はなしにしても元本は返して欲しい、返済期間を延ばしても、全額払って欲しいという思いから、任意整理に応じてくれる債権者が多い一方、任意整理は個人再生や自己破産のような強制力がないため、一部の貸金業者は任意整理にすんなり応じてくれない可能性があります。
債権者が任意整理に応じてくれる相手なのか確認が必要!さらに、こちらの希望条件が全て通るとは限らないという部分も要注意です。
任意整理が家族に与える影響は?
債務整理の一種である任意整理。家族への影響が気になるところですが、影響を受けるのは、あくまでも本人のみです。家族であっても、直接的に影響を受けるようなことはありません。
- 債務整理の事実が戸籍や住民票に登録される
- 進学や就職に影響が出る
- 家族もブラックリストに登録される
などといった問題は生じませんから、安心してください。
ただし、家族が保証人になっているケースは別です。任意整理をはじめ、債務整理をした場合、保証人のもとに借金を返済するようお知らせがやってくる可能性があります。
任意整理した後に、過払い金請求は基本的にはできない!専門家に相談が必須
任意整理の依頼を受けた司法書士や弁護士は、取引履歴を業者から取り寄せ、本来取られるはずだった利息制限法にのっとった利息で、計算をし直す「引き直し計算」を行います。
- 【引き直し計算後も借金が残る場合】
- 今まで払っていた利息分が免除されて、一般的には、新たに返済計画を組み直します。「総額◯円を、月々△円で返済していく」といった内容で書面を取り交わします。
- 【引き直し計算後、過払い金が発生していた場合】
- 「総額◯円を、△月□日に返金します」といった内容で書面を取り交わします。
どちらの場合も、取り交わす書面に「債権債務なし」という文言が入ることが基本です。
- 「債権債務なし」とは?
- 業者とお客様間で、「借金」以外に権利義務関係がないことを認めるというもの。これを結んでしまうと、過払い金請求がその後できない場合が多い。
なら、業者に頼まず自分で任意整理した場合は?と思う方もいらっしゃるでしょう。その場合、自身で業者と掛け合い、月額の返済額を減らしてもらったり、利率を下げてもらったりという「条件変更」をしていることもあります。
そんな時にも、「債権債務なし」という文言入りの書面の取り交わしがされていることが多いです。
そんなときには、「裁判」で正当な権利行使を行っていくことになります。
任意整理をした後だから、もう「過払い金請求」は無理…と自分で判断してすぐに諦めるのではなく、一度、法律の専門家である弁護士や司法書士に相談してみることをおすすめします。
保証人がついている借金の任意整理は多大な迷惑をかけてしまう…
保証人がついた借金を「任意整理」した場合、保証人が一括返済を迫られてしまいます。借り主である債務者が、「期限の利益を損失」するためです。
返済の期日までは返済しなくても良い、支払いを待ってもらえるという利益のこと。そして、「期限の利益損失」とは、その利益(期日までに支払えば待ってもらえる)を失うこと、つまり将来支払えば良かったものを、今すぐに返済しなければならくなるということです。
任意整理は整理する債権者をこちらで選べる手続きなので、可能な限りは保証人がついていたり、不動産などを担保にしている借金は別に残し、それ以外の借金に対してのみ交渉することが望ましいです。
- 保証人を必要としない借り入れ:カードローン、キャッシング、クレジットカードの返済など
- 保証人が必要な借金:住宅ローン、車のローン、奨学金など
しかし、どうしても保証人がついている借金を任意整理しないと…という窮地の場合もあると思います。
そんな時は、保証人と連名で任意整理を行うことで、期限の利益損失による一括返済を避けることは可能なのですが、保証人もブラックリストに載ってしまうというリスクがあります。一括返済は免れても、結局は保証人に迷惑がかかってしまうのです。
それでも、任意整理をどうしてもしたいというのであれば、誠意を持って事情を説明し、ブラック扱いになるなどのデメリットを保証人にしっかりと理解してもらい納得してもらっった上で必ず手続きを進めましょう。
自分も保証人も「こんなはずじゃなかった…」とならないためには、専門家に相談し、最善をつくすことが賢明です。
任意整理した方がいいのはこんな人!積極的に検討してみて
これらのメリットを踏まえて、任意整理を積極的に検討して欲しいのは以下のようなタイプの方々です。
- 借金の金額が、大きすぎない人(約30万円~200万円程度)
- 一定の収入があり、返済計画が実行できること
- 周囲に借金を知られたくない人
- とにかくできるだけ、手間や時間をかけたくない人
- 住宅ローンやカーローンを支払っていて、財産を手放したくない人
こうした条件に当てはまる方々であれば、任意整理のメリットをより強く実感できることでしょう。とはいえ詳細な条件については、それぞれの状況によって変わってきます。
任意整理について検討し始めたら、専門家に相談するのがベストです。最適な方法を一緒に考え和解交渉を代理人となって行ってくれます。!
任意整理のデメリットを納得した上で検討を!
借金で困っていてどうにかしたいけど、なかなか踏み出せないのが債務整理。よく分からないので、あまり積極的に検討していない方も多いのではないでしょうか。
でも、任意整理の内容にしっかりと目を向けてみれば、メリットが多々あることもわかるはずです。将来利息のカットや分割返済はやはり魅力でしょう。
任意整理のメリット・デメリットについてじっくりと検討してみてください。まずは自分自身の借金の状況を知る、減額できるかを知るところからスタートしましょう。





