妻の借金、夫の借金で配偶者が受ける影響は?返済義務や離婚について

配偶者が自分に内緒で借金をしていたら…。どう対処するべきか、悩む方も多いのではないでしょうか。
納得いく答えを見つけ出すためには、「配偶者(妻または夫)の借金に対して、自分はどのような責任を負うのか?」という点について、正しい知識を身に付ける必要があります。
このコラムでは、配偶者の借金がわかった際の対処法や、保証人になっていた場合の影響、離婚や清算方法など、気になる情報をまとめて解説します。
Contents
妻(または夫)が借金をしていたらどうする?
配偶者が自分に内緒で借金をしていたら、ショックを受ける方も多いことでしょう。とはいえ、そのまま放置しても問題は解決しません。
まずは、以下の3つの行動を心掛けてみてください。
借金の全貌を確認する
何よりも先に心掛けたいのは、借金の全貌を確認することです。
配偶者が内緒にしてきた借金が、パートナーにバレるケースとしては、以下のようなものが考えられます。
- 借入や返済の明細が見つかる
- 利用中の金融業者から連絡が来る
- 見たこともないブランド品や、豪華な旅行の回数が増えた
- 配偶者の友人や知人から相談された(返済を迫られた)
- 本人の口から真実を告げられた
- 住宅ローンやカーローンの審査で落ちた
- スマートフォンやパソコンの検索履歴が見つかった
もっとも多いと思われるのが、ローン利用の際に発効される明細がきっかけになるケースです。最初のうちはきちんと処分していても、次第に扱いが雑になってしまうことも。
また、返済できないことがきっかけとなり、お金を貸している知人や友人、もしくは本人の口から打ち明けられる可能性もあります。
借金をしているのが夫の場合、別のローン審査に通らないなどがきっかけで、借金の存在が明らかになるケースも多くみられます。
借金の全貌を知るために、必要な情報は以下のとおりです。
項目 | 具体例 |
---|---|
借入先 | ローン契約を結んだ先の会社名、 友人知人から借りている場合は相手の名前や間柄について |
借入回数 | これまでに何度借入を行っているのか |
借入金額 | 問題が発覚した時点での借入総額 (複数の会社から借りている場合は、それぞれの情報を確認) |
これらの情報は、本人が把握しているはずです。口頭でうまく説明できない場合は、サイトの会員情報を確認したり、電話で問い合わせたりしましょう。
借金の理由を尋ねる
借金の全貌と共に、できるだけ早く明らかにしておきたいのが、「そもそもなぜ借金をしたのか?」という点です。
自分自身が、配偶者の借金問題とどう向き合っていくべきか判断するための、重要な情報だと言えるでしょう。どうにもならない理由があったのかもしれません。
ちなみに、妻の借金理由として多いのは、以下のようなものです。
- 生活費や養育費の補填
- 自身の趣味
- ギャンブル
- 買い物依存症
また、夫の借金理由として多いのは、以下のようなものです。
- 自身の趣味
- ギャンブル
- 会社の運転資金
- 浮気
今後について検討する
必要な情報を入手したところで、避けては通れないのが、今後についての話し合いです。
借金総額や理由によっては、夫婦で話し合って、借金返済に向けて協力する道もあるでしょう。一方で、「離婚は避けられない」というケースもあるかと思います。
相手の話をしっかりと聞き、自身の考えもきちんと伝えてみてください。状況によっては、相手の両親も巻き込んで話し合うのもおすすめです。
借金を合法的に減らせる方法であれば、借金が解決に進む可能性が高いです!
借金減額シミュレーターで、借金が減らせるか?を確認してみましょう。法律の専門家のものであれば安心して活用することができます!診断は無料です。
といった方法で借金を整理することで生活再建を目指すことができます。借金のことばかり考える日々からすぐ抜け出したいのであれば、早く動くことが大変重要です。
そもそも借金があるかどうかわからないときはどうする?
配偶者に借金があるのでは?と疑っていても、具体的な情報がつかめないケースも少なくありません。
とはいえ、できるだけ早く真実を知りたいところ。こんなときは、いったいどう対処すれば良いのでしょうか。
個人の借金の全貌を知るために、頼りになるのが「信用情報機関に対する信用情報の開示請求」ですが、請求できるのは本人のみ。配偶者であっても、夫(または妻)の信用情報を、内緒で取り寄せることはできません。
以下のような方法で状況証拠を集め、最終的には「配偶者本人と向き合って、直接聞き出す」しかありません。
- 郵便物の差出人を確認する
- 配偶者あての電話に注目する
- 財布の中身を確認する(利用明細やローンカードなど)
- クレジットカードの利用履歴を確認する
借金返済が滞った場合には、金融業者から電話や郵便物が来ます。宛先に心当たりがない郵便物が届いた場合は、送付元の名称をネットで検索してみましょう。
電話の場合は、個人名を使われるケースも多いですが、「個人名での連絡が増えること自体がおかしい」と考えることもできます。
条件を満たしていれば、払いすぎた利息を取り戻せる「過払い金の請求」手続きを取ることもできます!
配偶者の借金は自分が返済(肩代わり)しないといけないの?
配偶者の借金が発覚し、その理由に到底納得できなかった場合、気になるのが「自身の返済義務について」です。
自分が肩代わりして返済する義務はあるのでしょうか。
法律では、借金は「個人」が負うもの。たとえ配偶者であっても、他人の借金返済義務が、自分に回ってくることはありません。
ただし、例外として覚えておきたいのが、以下の2点です。
- 借金の理由が「日常家事債務」に当たる場合
- 配偶者の借金の保証人・連帯保証人になっている場合
日常家事債務とは、「日常生活を送る上で必要な物を購入するための債務」のこと。
たとえば、夫婦二人で使う家具や家電、毎日一緒に食べる食品を購入するために、妻が借入を行っていたとしたら、その返済義務は、夫にも及びます。
また、もう一つの「保証人」についても、忘れてはいけないポイントとなります。以下で詳しく解説していきます。
保証人になっていた場合は返済義務あり
もしも自分が、配偶者の借金の保証人や連帯保証人になっていた場合、返済義務が発生します。「自分の借金ではない」という言い分は通用しないので、注意しましょう。
- 保証人とは?
- 債務者本人の借金返済が難しくなった場合に、代わりに返済義務を負う人
- 連帯保証人とは?
- 借金に対して、債務者本人と同等の返済義務を負う人
連帯保証人の場合は特に責任が重いため、注意が必要です。
たとえば、夫が妻の借金の連帯保証人になっている場合、妻が返済できる場合においても、債権者側は夫に対して返済を求める権利があります。
配偶者の借金を放っておくとどうなる?
肩代わりする義務がない場合において、気になるのは、「配偶者の借金を放置すると、その後どうなるのか?」という点です。
たとえば、夫が借金を返済しないまま放置しても、妻のもとに取り立てが来ることはありません。対応を求められるのは、あくまで夫となるでしょう。
しかし取り立てや督促に応じないままでいると、いずれ夫はブラックリストに登録されます。ブラック扱いになると、日常生活に支障が生じます。個人の範囲で済まず、家族に悪い影響がある場合も。
特に注意したいのが、夫が借金をしている場合、ブラック扱いになっている間は新規ローンを組めないことではないでしょうか。
もし住宅購入や車購入を直近で考えていたり、教育ローンを組みたい子どもがいるという場合は注意が必要です。
新たにローンを組みたくても審査に通らない、夫名義のクレジットカードを作れない使えない、スマホの分割払いができない、裁判になって差し押さえになれば家や車を失う可能性や給料差し押さえのも可能性も…。
そうなる前に、「債務整理」を検討する場合も、夫個人が行うことになります。
配偶者が亡くなっている場合はどうなる?
夫もしくは妻の借金が明らかになったものの、「すでに相手が亡くなっている」という場合もあるかと思います。
この場合、返済義務は負の遺産として、相続の対象に。たとえば、借金をした夫が亡くなった場合、相続人である妻や子どもが、借金の残りを返済することになるでしょう。
「借金なんて相続したくない」という場合には、相続の開始を知ってから、3ヶ月以内に相続放棄の手続きをする必要があります。
相続放棄の手続きは、煩雑で複雑なもの。確実に進めていくためには、司法書士に相談しながら進めていくのがおすすめです。
「配偶者の借金」は離婚理由として認められる?
「借金の存在を妻に隠されていた…」となれば、夫婦間の信頼関係が、崩れ去ってしまう可能性も。そもそも「借金」を理由に、離婚は認められるのでしょうか。
まず、配偶者に離婚を切り出し、相手方も応じた場合、もちろん離婚は可能です。問題は、相手が離婚を認めなかった場合。この場合、法律が定める離婚原因がなければ、離婚できません。
法律で認められている離婚原因には、以下のようなものがあります。
- 不貞行為(浮気や不倫など)
- 生死不明(3年以上)
- 婚姻関係を継続しがたい重大な事由
配偶者の借金が原因で離婚を希望する場合、その借金が、「婚姻関係を継続しがたい重大な事由」に当たるかどうかが、判断のポイントとなります。
- 借金問題に関連して、相手側から暴言や暴力を受けている
- 何度も同じ問題が繰り返されていて、改善されない
- 借金問題を機に夫婦の会話がなくなり、別居に至っている
このような場合には、離婚が認められる可能性も十分にあるでしょう。
おすすめの借金精算方法とやり方
「離婚せずに、今後も夫婦として頑張っていく」という場合、一刻も早く借金を清算する必要があります。
借金の全貌をつかんだ上で、「家計のやりくりの中で返済できる」と判断できれば、そのまま返済を続けていきましょう。繰り上げ返済をしたり、より金利が安いとこへ借り換えしたりすれば、返済負担も軽減できます。
一方で、借金がふくらみ過ぎて、家計内での対処が難しい場合は、妻または夫個人の債務整理を検討することになります。
債務整理には、主に任意整理・個人再生・自己破産の3つがありますから、適切な方法を選択しましょう。
債務整理を行う場合、弁護士や司法書士など、専門家に相談の上で話を進めていくのがおすすめです。
配偶者が債務整理を進めることはできるのか?
配偶者にあまり危機意識がない場合、自分の判断で債務整理の手続きを進めたいと思うこともあるかもしれません。
しかし、残念ながら、債務整理の手続きは本人にしか進められません。弁護士や司法書士に依頼する場合も、必ず本人が依頼する必要があるのです。
各債務整理をすることでの家族への影響
実際に「妻」が債務整理を行った場合、家族への影響が気になるところです。任意整理・個人再生・自己破産のそれぞれについて、家族への影響をまとめます。
任意整理の影響は少なめと言われているが…
任意整理では、それぞれの借金について、債権者と任意で話し合いを行います。将来利息をカットの上で、元本分を原則3~5年で返済するスタイルが一般的です。
たとえば、妻が自身の借金について任意整理を行った場合、妻はブラックリストに登録される可能性が高いですが、家族にはあまり影響はないでしょう。
なぜなら、夫名義でローンを組むこともクレジットカードを作ることも可能。ブラックリストに登録された妻も、夫名義のクレジットカードの家族カードであれば、問題なく使用できるからです。
ただし借金をしているのが「夫」で、クレジットカードの主会員が夫の場合は影響が出てくる可能性が高いです!妻や家族が使っている家族カードは基本全て使用することができなくなると思っておきましょう。
家族カードがないカードのみ任意整理すれば、妻や家族に迷惑がかからないかというと、それは断言できません。
なぜなら、信用情報に任意整理をしている旨が記載されるため、もし任意整理の対象から外していたとしても、そのカード会社の利用も停止される可能性があるからです。
こういったところから、任意整理をすることで「内緒にしていた借金がバレてしまう」ケースもあるようです。
個人再生の影響は「保証人」次第
個人再生の場合、家族への影響が出るかどうかは、保証人になっているかどうかで変わってきます。保証人になっていなければ、任意整理の場合とほぼ同じです。
任意整理の場合、全ての債務が強制的に手続きされてしまうため、「夫が保証人になっているローンのみを外す」ということができません。
つまり、妻の借金に対して個人再生が認められれば、妻の借金は整理されます。しかし、夫が保証人になっているローン分については、夫の元に請求がやってくるのです。
自己破産の影響は「配偶者が所有する財産」次第
自己破産の場合も、基本的には個人再生と同じです。ただし、配偶者が何らかの財産を所有している場合は、強制処分の対象になってしまいます。
配偶者個人の持ち物であれば、家族への影響はそれほど大きくはないでしょう。一方で、マイホームを共同名義で購入している場合、配偶者の所有分は強制処分されてしまいます。
住む家を失くすことにもなりかねませんから、家庭全体への影響を見極めながら、債務整理の方法について検討しましょう。
配偶者が借金を繰り返す場合の対処法
借金問題を抱えている人の中には、何度も繰り返してしまう人がいるのも事実です。自身の夫、もしくは妻がこのタイプの場合、どう対処すれば良いのでしょうか。
まず、何度も借金を繰り返し、日常生活に支障をきたしている場合、離婚事由として認められる可能性は十分にあります。見切りをつけ、新たな人生を歩みだすのも、選択肢の一つです。
離婚を回避し、なんとか借金癖から抜け出してほしいと思う場合、以下の対処法を実践してみてください。
- 家計管理を配偶者に任せない
- 離婚や慰謝料について、夫婦間契約書を作成する
- 借金問題の根本を解決する
まず、借金癖がある人に、家計管理を任せるのは非常に危険です。家計は自身で管理し、配偶者に渡すお金は制限しましょう。
また、「このまま借金を繰り返した場合のリスク」について、知ってもらうのもおすすめの方法です。借金を繰り返した場合、離婚すること、その場合の慰謝料について決め、夫婦間契約書を作成してみてください。
配偶者の借金が発覚したら…まずは冷静に「確認」と「相談」
配偶者の借金が発覚したら、まずは冷静になりましょう。大切なのは、状況確認と、然るべき場所への相談です。離婚するかどうかは、その後に判断しても遅くはありません。
たとえ配偶者が借金をしていても、保証人になっていない限り、ご自身への影響は限定的です。家族全体への影響がどの程度なのかを確かめるためにも、情報は重要です。
わからないことや不安なことがあれば、まずは専門家に相談してみましょう。「何から手を付けて良いのかわからない…」という場合でも、アドバイスをもらえるはずです。





