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経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第7回・ゲリラ豪雨を予測する

経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第7回・ゲリラ豪雨を予測する

起業家、経営者にとって大事なのは、世の中を見抜く力です。1つの事象をどう捉えるかで、ものの見え方も、そこから得られる情報も大きく変わります。そうした「着眼点」、実はトレーニングによって鍛えることができるのです。累計20万部を超えるベストセラーとなった『戦略思考トレーニング』シリーズでおなじみの経営コンサルタント・鈴木貴博氏に解説してもらいましょう。

いきなりですが、クイズです!

Q.ここ数年で多発している、局地的に大雨が降る「ゲリラ豪雨」。これからの季節は特に注意が必要です。さて、このゲリラ豪雨がいつ起こるかを予測し、的確に警報を出すために、街でよく見かける“あるもの”を活用しようという動きがあります。さて、それは一体何でしょうか?

ヒントは、集中豪雨になると何がどうなるのかを考えてみることです。頭を柔らかくして、発想してみてくださいね。

クイズの答えの中に、着眼点を鍛えるポイントがある

ニュースや新聞を見ていても、「AI」「IoT」といった言葉を見かけることが増えました。

ご存じかとは思いますが、AIは「Artificial Intelligence」の略で、いわゆる「人工知能」のこと。IoTは「Internet of Things」の略で、モノがインターネットでつながって相互に制御する仕組みのことです。

既にAIやIoTは我々の生活の中に入ってきており、数年前までは考えられなかったような便利な状況を作り出してくれています。そして、新聞の報道によると、2020年には世界中で約500億台の機械がインターネットにつながると言われているようです。

身の回りのあらゆるものがインターネットにつながる未来を想像してみてください。そして、そのような未来は、このままいくと近い将来、確実にやってきます。そこにビジネスチャンスが間違いなくあるはずです。

それでは解説します!

話をクイズに戻しましょう。

突発的な集中豪雨である「ゲリラ豪雨」。雲行きが怪しくなったと思ったら、突然大雨が降り出した…ここ数年においては、誰もが経験したことがあると思います。

ゲリラ豪雨は「突発的」かつ「局地的」に起こるため、予測が難しいとされています。しかし、AIやIoTなどの最先端技術を活用することで、豪雨を予測してピンポイントで警報を出せるようにしようという取り組みが進められています。

そこで注目されているのが、自動車についているワイパーです。

大雨が降ると、運転中のドライバーは前が見えにくくなりますから、ものすごい速さでワイパーを動かして視界を確保します。ワイパーがインターネットにつながっていれば、ものすごい速さで動いているワイパーがどの位置にあるかをデータとして収集・分析することができ、次にゲリラ豪雨がありそうな場所や、降り始めまでの時間が予測できるのではないか、というわけです。

モノがインターネットにつながるようになると、このように様々な事象がデータとして集められるようになります。それらをまとめて「ビッグデータ」と呼んだりしますが、日々の人々の動きや、暮らしの中のちょっとしたことがデータ化され、AIなどによる高度な解析が可能となれば、我々の生活は大きく変化するでしょう。

今回のポイントは、いろんなものがインターネットにつながるような次の時代を見越しておくことと、そこから逆算して、起こりうる変化にどう対応すべきかを自分なりに考えてみることです。

我々の生活に何がもたらされるのか、そこでどういうニーズが発生し、どのようなことがビジネスになり得るのか。そうしたことを今のうちから考えておくのは、起業家としてとても大切だというわけですね。

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AIやIoTの活用例をいくつか紹介します

身の回りで、既に「AI」や「IoT」が活用されているものに、どんなものがあるでしょうか。参考までに、いくつかピックアップしてみましょう。

先ほどのワイパーの例も含め、自動車に関連したものは比較的多そうです。

例えば、映像や音声を記録するための車載装置「ドライブレコーダー」は、最近よく、犯罪捜査で使われていますが、これも1つのビッグデータです。また、位置情報がわかる機能であるGPS(Global Positioning System:全地球測位システム)を活用して、道路の渋滞情報をより細かく正確に捉えることも可能になっています。

自動車のブレーキの踏み方がデータとして収集できるようになると、いろいろなところで活用できます。例えば、自動車保険。「急ブレーキが多い人は保険料が高くなる」というような算出指標にできます。また、GPSを活用して急ブレーキが多い場所を特定できれば、事故多発地域として対策もとりやすくなるわけです。

電化製品では、電気ポットの例が分かりやすいかもしれません。高齢者は電気ポットを使ってお茶を飲む習慣を持つ人が多いことに着目し、インターネットにつながった電気ポットの使用状況から、1人暮らしの高齢者を見守ることができます。玄関のドアやトイレの便座も同様で、しばらく使われていないことがわかれば、「何かあったのかもしれない」と予測することができるわけです。

その他にも、携帯電話やスマートフォンのGPS機能から、その人の自宅と職場は簡単に割り出せると言われています。日中に長く過ごす場所は職場、夜間に過ごすのは自宅、というふうに予測を元に特定できるというわけですね。また、その間の移動も全て丸わかりです。こうした個人のデータが多数集められることで、人の流れの分析や、町づくりなどに活用できるのです。

「どこにお店を出すべきか」についてもビッグデータが教えてくれる!

もし、あなたがどこかにお店を出すとしましょう。どの場所がいいか判断するために、事前に人通りを確認したり、交通量を測定したりするはずです。こうしたことも、ビッグデータを使えば簡単に測定できるようになるでしょう。

時間帯別、年代別、性別といった通行人の細かい情報が簡単にわかるようになりますし、さらに開業後に人の流れの変化が起こった場合、その原因の分析やとるべき対策についてもデータが導いてくれるかもしれません。

繰り返しになりますが、AIやIoTといった技術の進化は、我々の生活を大きく変えていきます。そして、その変化によって、新たなビジネスチャンスが生まれるのは間違いありません。

今のうちからいろいろと考えておくことは、非常に有意義なトレーニングになるはずです。自分には何ができそうか、どんなチャンスがありそうか、ぜひいろいろと発想してみてくださいね。

最後に、もうお分かりだと思いますが、冒頭のクイズの答えは「自動車のワイパー」でした。自動車はAIやIoTといったものとの相性がよく、今後もあらゆる取り組みが発表されていくと思われます。最先端事例を知るためにも、注目してみるといろいろなことが分かってくるかもしれませんね。


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プロフィール写真

経営戦略コンサルタント
百年コンサルティング株式会社
代表取締役
鈴木貴博

東京大学工学部卒業後、ボストン・コンサルティング・グループに入社し、数々の大企業の戦略立案プロジェクトに従事。1999年にはネットイヤーグループの創業に取締役として参加。2003年に独立し、百年コンサルティングを創業する。大手企業の経営コンサルティング経験を元に2013年に出版した『戦略思考トレーニングシリーズ』(日本経済新聞出版社)が累計20万部を超えるベストセラーに。現在はビジネスをエンタメクイズ化する経済エンタテナーとしても活動中。『パネルクイズアタック25』(優勝)、『カルトQ』などのクイズ番組出演経験も豊富。

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