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時計作りも子育ても真剣に。15年以上愛される腕時計を作る、ある女性職人の働き方

時計作りも子育ても真剣に。15年以上愛される腕時計を作る、ある女性職人の働き方

自宅のひと部屋に設けられた工房。作りかけの時計に真剣なまなざしを向けるのは、時計職人の宮井ありささんです。

宮井さんは時計作りに情熱を捧げる職人でありながら、「花屋」を営む夫を支える妻でもあり、ふたりのお子さんを育てる母親でもあります。出産・育児のために一旦は時計作りをリタイアしたものの、2年ほど前に復業しました。

一度は止まった時計が再び時を刻み始めたのは、ほかでもない、宮井さん自身の情熱によるもの。時計職人も子育ても真剣に向き合う。自分の感情に素直にしたがい導かれるようにたどり着いた“今”、彼女は何を思うのでしょうか。

プロフィール:宮井ありさ

スタイリストに憧れて専門学校に進学するが、その職業に対して疑問を抱くようになる。そして専門学校卒業後、語学留学でイギリスへ。帰国後、アクセサリーショップの販売員として就職。

無為な時間に焦りを感じていた頃、JHA(Japan Handcraft-watch Association)の社長を通じて時計作りに巡り合い、のちに20代半ばで時計職人として独立。結婚・出産を機に一旦は時計作りから離れたが、10年のブランクを経てふたたび時計作りを始めた。

クラフトウォッチとの出合い。そこから時間は動き始めた

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——ふたりのお子さんを育てながら、ハンドクラフトウォッチを制作する時計職人である宮井さんですが、そもそもどのような経緯で腕時計作りをするようになったのですか?

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宮井さん

実はもとから時計職人を目指していたわけではなく、昔はスタイリストになりたいと考えていたんです。雑誌なんかでモデルをスタイリングするような。そのために、バンタンデザイン研究所という専門学校へ通いました。

ですが当時、スタイリストという仕事がとても人気で。それはもう原宿に石を投げればスタイリストに当たる、というくらい(笑)。

そこで私は「これは人のスタイリングをやっている場合ではないな」と、思ってしまったんです。スタイリストという仕事の魅力が失われたような気がして、すっかり憧れから醒めてしまいました。

もともと「自分のためにお金を貯めて好きなことやろう」と思って、専門学校に通いながらバイトをしていました。卒業後、先も決まらぬまま何かを求めて語学留学という形で独りイギリスへ飛んだんです。

そして帰国後、販売員として恵比寿のアクセサリーショップに就職しました。

それでも自分のやりたいことがはっきり見つからなかった。販売の仕事もある程度までできるようになったのですが、そのうちに「私、ここで何やってるんだろう…」と思うようになって。

そんな時、時計作りに巡り合いました。

——仕事をしながら自分の好きなことを探しているうちに、やっと見つけたんですね。

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宮井さん
はい。しかもハンドクラフトの時計を出品しているお店、JHAが私の職場の目の前にブースを出していたんです。それはもう目と鼻の先にありました(笑)。

それからは働きながら時計作りのレッスンに通いました。そして25歳のとき、時計作りの師匠が「そろそろ自分で作ってみるか?」と言ってくれたんです。こうして、会社を辞めて時計作家としてのキャリアが始まりました。

結婚、そして出産。職人から母親への転身

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——「職人」というと、男性を想像しがちですが、女性の時計職人というのは宮井さん以外にもいらっしゃるんですか?

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宮井さん
はい、私以外にも活躍されている女性の方はたくさんいらっしゃいますよ。力が必要な仕事は少ないですし。

ちなみに私は、市販されている普通のブランドではなく、ファッションに馴染むようなものを自分の手で作りたい、という気持ちから時計作りを始めました。

——時計職人として独立後、苦労されたことはなんですか?

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宮井さん
苦労という苦労はそんなにないですが、昔は今以上にたくさんの時計を作っていました。

だいたい月に50本くらい作っていましたね。今ではとてもそこまでの量を作るのは大変なので(笑)。

——今はそこまでの量は作っていないんですね。

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宮井さん
はい。今は昔と違い、1本1本にかけられる時間が多くなったので、より丁寧に質の向上ができるよう心がけています。

——現在宮井さんはご結婚されてお子さまもいらっしゃいますが、結婚、出産のタイミングでもお仕事は続けたのでしょうか?

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宮井さん
いえ、1人目が生まれる直前で一旦仕事はストップしました。

時計を作る仕事では火や尖った工具を使うのでこどもが小さいうちは危険ですし、私自身一度に1つのことしかできないんです。

何より中途半端な仕事をしたくなかった。私がつくったものの修理品の依頼だけは受けていましたが、新たな時計作りを安請け合いしてしまったら結果的にお客さんに迷惑をかけてしまうかもしれない。それが1番嫌でした。

それから10年ほどは子育てに専念して、時計作りをお休みしていました。

10年越しの再チャレンジ。そして旦那さんの「宮井商店」開業

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——お子さんがある程度大きくなってきて、近年ようやく復帰したんですね。

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宮井さん
はい。2年ほど前、JHAの師匠に「また時計作りをやらせてもらえますか?」とお電話をしました。師匠は快く協力してくれて、私は時計作りを再開することができました。

ちなみに現在は昔と違い、量をたくさん作るのではなく自分の好きなものを自由に作っています。1本1本、時間をかけて大事に。もうキリがないんですけどね。

あとは自分が作った作品の修理も手がけています。

つい先日、15年くらい前に作った時計が修理品として私のところへ返ってきました。

ひとつひとつ自分の手で作ったものなので、いつ、どんなときに作ったものかだいたい覚えているんです。15年も前に作った時計が私のもとに戻ってきてくれて、それを直してあげられるのはとても幸せです。

直しているとき「とても大切に使ってもらっているんだなあ」と感じます。100円でも時計が買えるこのご時世、顔も知らない誰かが自分の作った時計を、15年も大切にしてくれるなんて、作り手としてこんなにありがたいことはないですよ。

——宮井さんの今後の展望を教えてください。

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宮井さん
はい、将来的には自分のお店を持ちたいなと思っています。ですがその前に、主人が会社を辞め、独立して近日中に花屋を開業する予定です。

現在開業に向けての準備を進めているところなので、そちらをまず軌道に乗せることが直近の目標ですね。

ちなみに「宮井商店」という屋号で花屋を経営していくんですが、そのお店に私の時計も置いてもらう予定です。

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——まずは「宮井商店」の開業準備で大忙しですね。もし自分のお店を持つとしたら、どんなお店にしたいですか?

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宮井さん
直接お客さんと顔を合わせて一緒に素敵な時計を作っていきたいですね。やっぱりせっかく付けてもらうなら愛着を持って大切にしていただきたいですし。

そのお店を出店するためにもまずは「宮井商店」をがんばりたいですね。

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