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定年退職後もアクティブに生きていく。 シニア世代、これからの働き方。

定年退職後もアクティブに生きていく。 シニア世代、これからの働き方。

日本は高齢社会に突入し、社会や産業の構造が大きく変化していく最中にあります。そんな中で各産業の担い手として注目を集めているのが、シニア世代。これまでのシニア世代の働き方といえば、勤めていた会社の嘱託社員になる、同業の会社に再就職する、といった“キャリアの延長線”にあるものが一般的でした。

しかし、最近では、起業・独立という道を含め、30~40年以上続けてきた仕事・産業とは異なる分野にチャレンジしている人たちが増えています。多様化するシニア世代の働き方について、これまで約7,000人ものシニア世代にキャリアアドバイスを行ってきた、リクルートキャリアの柴田教夫さんが解説してくれました。

「ものづくり日本」から「おもてなし日本」へ。
産業構造の変化も要因の1つ

私はこれまで長くミドル~シニア世代の方々のキャリアや価値観に向き合ってきました。2000年ごろまでは、“50代後半でリタイアし、あとは悠々自適な老後を送りたい”という人生設計が可能な方も多くいらっしゃいましたが、現在は、“65歳までは働きたい”、“元気なうちは働き続けたい”と考えていらっしゃる方が非常に増えています。

たった15年ほどでシニア世代の考えが大きく変化したのは、主に年金受給年齢の引き上げが原因。しかし、起業・独立も含めたキャリアチェンジを考える方が増えたのは、それだけが要因ではありません。
彼らが働き盛りだったバブル絶頂期の1990年は、製造・建設といったものづくり産業の国内労働人口が約2,000万人。しかし、2020年には約1,000万人になると言われています。国内全体の労働人口もゆるやかな減少傾向にはありますが、ものづくり産業がほかの産業に比べ著しく減少しているのは、日本社会全体の産業構造が変化しているから。製造業の海外への工場移転などが加速した結果、現在の日本の成長産業は、IT、インバウンド(訪日外国人を対象とした産業)、介護といったソフトサービスに移行しています。

つまり、日本はかつての「ものづくり」が主役の時代から「おもてなし」への転換期にあり、昭和の成長産業を支えてきた人たちにとっては、定年後も同じ産業で働き続けられる機会が減っているということ。いわば、キャリアチェンジをせざるを得ない人が増えている訳ですが、「今更ゼロから仕事を覚えるのは、心身ともに辛い」「体力的にハードな割に収入が減ってしまいそうで、リスクが大きい」と二の足を踏み悩んでいらっしゃる人も多いのが現状です。

キャリアチェンジ成功の鍵となる、
「ポータブルスキル」とは

そこで私がシニア世代のみなさんにお話しているのは、「ポータブルスキル」という考え方。ご自身に備わっている力を、特定の産業に特化した技術や専門知識のみで評価するのではなく、他の産業や仕事にも持ち出し可能なスキルとして何を身に着けているかで評価してみましょうという考え方です。

例えば、某メーカーで定年まで勤め、その大半は工場の生産管理職として働いていたAさん。一見するとAさんの経験は工場での仕事にしか通用しないように思えますが、生産管理の仕事の本質は、製造工程をマネジメントし、日々改善を繰り返しながら生産量・品質・コスト・安全といった観点で改善策を実行していくことです。

つまりAさんのポータブルスキルは、「適切なPDCAサイクルによって業務改善を企画・実行できる」こと。

これを自覚していただくことで、Aさんはサービス業を新たなフィールドとし、現場の業務オペレーション改善にその力を発揮しています。

このように、ご自身の経験を「仕事の仕方」や「人との関わり方」で捉えてみると、あなたが予想している以上に経験が活かせる分野は多く、選択肢は広がっていくはずです。

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新たな産業の成長期は、
シニア世代の経験が活かせる時期でもある

一方で、過去の歴史を紐解いてみても、成長産業にはシニア世代が活躍できるチャンスが多く秘められています。新しい産業が生まれたばかりの時期には、当然そこで実績を積んだ人は多くありません。その産業や事業を大きく成長させる鍵になっていたのは、異業種で培われた知恵・力なのです。

例えば、自動車産業。かつては車の製造といえば、機械エンジニアが主役でしたが、今のハイテク自動車に移行する先駆けとして、電気エンジニアが重宝されはじめた時代がありました。その際に自動車産業の進化を牽引したのは、総合電機メーカーからキャリアチェンジした技術者たち。それも、若いエンジニアからは“過去の人”と思われていた、ローテクの電気エンジニアたちだったのです。自動車は何よりも安全性が最優先されますので、当時電機メーカーでは主流だった技術も信頼性の面で採用することができませんでした。だからこそ、アナログに近い部分の知見もある熟練のエンジニアが、自動車産業の変革を支えたのです。

このような現象は、いまの成長産業でも実際におこっていること。多くの事業者が新規参入するなかで、ノウハウを求めてシニア世代の知見を活用している場合も少なくありません。同じ産業の中では世代交代が避けられませんが、異なるフィールドならこれからも現役で活躍を続けられる可能性があるのです。

自分の存在意義や居場所を求めて、
新たなチャレンジをする人も

このように、シニア世代が活躍できるフィールドは社会全体で広がっている状況ですが、働くことを積極的に選択しているシニア世代が増えているのは、「働かざるを得ない事情がある」という理由だけではありません。もはや、「還暦をすぎたら隠居」という価値観は過去のもの。平均寿命が飛躍的に延びるなかでアクティブなシニアも多いですから、「これまでは家族のために働いてきたけど、これからは社会のために働いてみたい」「若い頃は諦めていたことに挑戦したい」と新たな仕事に挑戦する人も多いのです。

独立や転職も1つの選択肢ですし、これまでは就業規則で禁止する企業の多かった「副業」も、国の政策によって今後はより選びやすくなるでしょう。それだけ選択肢の多い時代になっていくということは、一人ひとりの価値観や生き方にあった働き方が選びやすくなるということ。ご自身の可能性を狭めることなく、次の一歩を踏み出していただきたいですね。

株式会社リクルートキャリア コンサルタント 柴田教夫
1982年、日本リクルートセンター(現:リクルートホールディングス)に新卒入社。新卒採用担当、広島/福岡拠点の総務人事課長、本社総務課長等を経て、91年のバブル崩壊瞬間には中途採用求人広告の営業所長に異動。95年、リクルート人材センター(現:リクルートキャリア)に転籍し、総務人事経営企画など管理部門全般を管掌。99年、脳梗塞で左半身不随となり車椅子でリハビリ生活を送るも、キャリアアドバイザーとして復帰。以来50~60代のビジネスパーソンの転職支援に特化してこれまで7000人余の方々に向き合い、1000人余の転職実現をサポート。社内の人材育成、業界他社への研修講師、業界団体のプロジェクト推進委員なども兼務している。

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