スタイルのある生き方へシフトしたいビジネスパーソンのためのニュース・コラムサイト。
検索
独立ノウハウ・お役立ち

経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第6回・ブックオフをどう再建させるか

経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第6回・ブックオフをどう再建させるか

起業家、経営者にとって大事なのは、世の中を見抜く力です。1つの事象をどう捉えるかで、ものの見え方も、そこから得られる情報も大きく変わります。そうした「着眼点」、実はトレーニングによって鍛えることができるのです。累計20万部を超えるベストセラーとなった『戦略思考トレーニング』シリーズでおなじみの経営コンサルタント・鈴木貴博氏に解説してもらいましょう。

いきなりですが、クイズです!

Q.「ブックオフ」の苦境がニュースで報道されることが増えています。ブックオフが得意とする「中古」のマーケットには実は未来はないのか…。ニュースを見ながらそんなふうに考えた方がいるかもしれません。では、同じく中古品を扱うサービスとして人気の「ヤフーオークション(以下ヤフオク)」の売上は、伸びているのでしょうか? それとも停滞しているのでしょうか?

今回は2択です。理由もあわせて考えてみてくださいね。

クイズの答えの中に、着眼点を鍛えるポイントがある

今後伸びる市場について考えてみたときに、「中古」「シェアリング」といったキーワードは1つの大きなテーマとなるのは間違いなさそうです。

『アントレ』に掲載されている独立支援情報を見ていても、中古品の買い取り業やカーシェアリングなど「シェアエコノミー」を取り入れた仕事は多くなっていますし、リユース・リサイクルといったテーマで事業を行う新しい会社も出始めています。

世の中の全体がリユース、シェアという方向に進んでいるのは明確ですから、「時代を映す鏡」とも言われるフランチャイズビジネスで、こうした流れが加速しているのも当然といえば当然です。

一方で、少し前から「ブックオフ」の苦境がニュースで報道されることが増えています。ブックオフといえば、ご存じ、リサイクルショップの中でも最大手の1つです。時流という追い風に乗って成長業界を牽引していてもおかしくなさそうな同社が、なぜ苦境に立たされているのか。

今回は、このブックオフのケースから、いろいろと考えてみたいと思います。

それでは解説します!

ブックオフの主要取り引き商品は、「本」「CD」「ゲーム」です。これらは、今の時代における「3大市場縮小コンテンツ」と言っていいものでしょう。

ブックオフも当然それはわかっているはずです。最近は店舗だけでなくネットでの買い取りや販売も行って間口を増やしています。また、携帯電話やタブレットなどデジタルアイテムの取り扱いを増やし、ラインナップの強化にも取り組んでいます。黙って売上が落ちるのを見ているだけではないのです。

さて、中古品を売り買いするサービスとしてもう1つ代表的なものが「ヤフオク」です。そのヤフオクの売り上げはどうなっているのでしょうか。

発表されている数値を見てみると、2年ほど前までは年7〜8%の成長を続けていましたが、最新の調査では3.5%の成長となっています。この数字だけを見れば勢いが止まったようにも見えます。しかし実際のところは、「メルカリ」のような新しいサービスが出てきたことで一時的に売り上げを落としているのではないか、というのが、専門家たちの見立てのようです。

こうした状況から言えるのは、中古品を扱うマーケットそのものはやはり着実に伸びているということです。新しいサービスが次々に生まれ、活性化しながら市場規模は間違いなく大きくなっています。

しかし、ブックオフはその流れに乗れていません。

そして、こうした状況は将来、あなたのビジネスでも起こり得る可能性があるのです。

つまり、成長業界にいるにもかかわらず、自分のところの主力製品が伸びを欠き、事業がうまくいかなくなるという状況です。それが起こった時にどう対応すべきかという思考訓練は、常にしておいた方がいいでしょう。

magazine_0523-2

コンサル視点で考えた「3つの対処法」とは

ブックオフの苦境の理由を一言で言ってしまうと、「主力製品の売り上げの落ち込みにビジネスの転換が追いついていない」ということだと思います。

ここで私ならば、今後の対処法について3つの方向性を考えます。

「業態転換」「ビジネスモデル転換」「イノベーション」です。それぞれについて説明します。

(1)業態転換
コンサルがこのような時に最初に何をするのかと言うと、徹底的にヤフオクを分析します。どういう出品カテゴリが増えているのかを調べ、出品が多いということは売り上げも多いだろうという推測のもと、売り上げの構造を徹底的に調べていきます。

その視点でブックオフの商品構成を見ると、本やCD、ゲームというのが時代遅れになってきていること、ハードウェアといってもスマホみたいに頻繁に何度も買い替えないものを扱っていてはダメだということがわかってきます。そして、扱うべき「伸びるコンテンツ」を考えます。

ただし、新しいコンテンツを扱うには、ノウハウが必要です。明日から突然、ブランド品や金券を扱おうと思っても、その商品を扱うためのノウハウがなければうまくいきません。その点、ブックオフは上場企業ですから、財務力があります。企業を買収するなどして、新しいビジネス領域に入っていくための方法を考えることができるのです。

(2)ビジネスモデル転換
同じ領域で続けていく場合に、ビジネスモデルを転換するのは1つのやり方として有効です。現在のような店舗型で在庫を持つビジネスモデルからの転換を考えます。

たとえば「Amazonマーケットプレイス」のような出品者と買いたい人をつなげるビジネスモデルや、「ヤフオク」や「メルカリ」のようなフリーマーケットをモデルにしたビジネスへの転換・参入を検討します。

(3)イノベーション
アメリカに「True Facet」という、時計とジュエリーを専門で扱う人気のフリマサイトがあります。この会社は、イノベーションの会社として注目を集め始めています。

何がすごいのかというと、画像解析技術が活用されている点です。出品されたものを画像解析し、商品のデザインやフォントなどの細かい違いを見極めることで、偽物があれば即座にはじかれる仕組みを整えているのです。つまり、偽物が出品されないという価値が、イノベーションによって担保されているわけです。

このサービスは、中古流通における最新のイノベーション事例と言えるかもしれません。そして、こうしたイノベーションを取り入れることで、現状打破を図ります。

苦境に備え、あらかじめ選択肢を持っておこう

たとえ成長業界に身を置いていたとしても、様々な理由から、自社の成長が止まってしまったり、苦境に立たされることはあり得ます。起業家として経営を行っていく以上、その時の対処法について選択肢を持っておくことは大切なことです。

今回はブックオフのケースを参考にしてみました。この手のニュースに触れた時に、思考トレーニングだと思って「自分ならどうするか」を考えてみることは、経営者として必要な力を養うにはもってこいですから、ぜひ訓練だと思ってやってみてくださいね。

最後に、もうお分かりだと思いますが、冒頭のクイズの答えは「売り上げは伸びている」でした。 何かと話題の「メルカリ」のように、今後も新たなビジネスが次々と立ち上がっていきそうな「中古」「シェア」のビジネス。目が離せません。


PLOFILE
プロフィール写真

経営戦略コンサルタント
百年コンサルティング株式会社
代表取締役
鈴木貴博

東京大学工学部卒業後、ボストン・コンサルティング・グループに入社し、数々の大企業の戦略立案プロジェクトに従事。1999年にはネットイヤーグループの創業に取締役として参加。2003年に独立し、百年コンサルティングを創業する。大手企業の経営コンサルティング経験を元に2013年に出版した『戦略思考トレーニングシリーズ』(日本経済新聞出版社)が累計20万部を超えるベストセラーに。現在はビジネスをエンタメクイズ化する経済エンタテナーとしても活動中。『パネルクイズアタック25』(優勝)、『カルトQ』などのクイズ番組出演経験も豊富。

アントレ 独立、開業、起業をご検討のみなさまへ

アントレは、これから独立を目指している方に、フランチャイズや代理店の募集情報をはじめ、
さまざまな情報と機会を提供する日本最大級の独立・開業・起業・フランチャイズ・代理店募集情報サイトです。