酒井 裕司さん(41歳)
VOL.170地元の米づくりを応援する米俵マラソンの発起人
米俵担いでマラソンを走る。
そんな町ほかにないでしょ
長
野県飯島町は「25年後に消滅する可能性のある町」の上位。こどもが13人しかいない学年もあります。でも地域の人は「町の宝」と言ってうちの子をいつも気に掛けてくれた。その恩返しがしたかったんです。僕は11年前に隣町から越してきた「よそもの」ですけど、こどもが生まれ育った故郷が消えるなんて、嫌だ。
目をつけたのが米とマラソンです。飯島は古くから米づくりが盛ん。マラソンは僕の趣味です。今どき地域おこしのマラソンは珍しくないですが、1~5㎏の米俵をかついで走ったら、世界に飯島町だけのマラソンになる。さんざん走った後のランナーには炊きたてピカピカの新米を腹いっぱい食べてもらいます。これ以上ない飯島のPRになるじゃないですか。
「米俵マラソン」は2016年で4回目を迎えて、参加者800名、協賛企業は100社超です。でも4年前、ゼロから立ち上げた時は何をどうしたらいいのかさっぱりでした。稲作の衰退で米俵をつくれる人もいなくなっていた。やっと見つけた職人さんに弟子入りして、1年目は50個全部、1人で夜なべしてつくりましたよ。
15年に「南信州米俵保存会」という会社を設立したのは、その米俵をつくる体制を整えるため、というのが理由です。でも会社にするからには、ちゃんと飯島のためになることがしたい。今はわら細工の技術を継承して、地元のお母さん方と一緒に米俵や猫用の「つぐら」を手づくりしています。これなら町の雇用創出につながりますし、わら細工を産業にできたら、稲作農家さんのことも支えられるはず。
アントレ2017.冬号 「これが私を生かす道 ライフワークで食べていく!」より