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「法人成り」した個人事業主は確定申告でココに気をつけよう

「法人成り」した個人事業主は確定申告でココに気をつけよう

そもそも「法人成り」って?

個人事業主だった人が法人を設立することを「法人成り」といい、ゼロから法人を設立することと区別しています。個人事業主が「法人成り」すると、持っていた資産や商品を法人に引き継ぐ処理が必要になります。
では、処理が増えてまで、なぜ「法人成り」するのでしょうか。それは、個人事業主より法人のほうが、下記のようなメリットがあるからです。

①信用が増す
会社法により資本金が1円でも株式会社を設立できるようになりましたが、世の中には資本金が数百万円以上という法人が多く存在します。一般的には株式会社というと、後者のイメージが強いのではないでしょうか。

「資本金がある」ということは、「お金を調達する力がある」ということを表しているので、取引先や銀行などからの信用が個人事業主のときよりも増します。企業によっては、取引先の条件として法人であることが求められたり、経営状況を確認してくるところもあります。また、一般的に、個人事業主よりも法人のほうが銀行からの融資も受けやすいといわれています。

②節税できる
個人事業主と法人では、法人のほうが節税できることがたくさんあります。

・社長の給料を経費にできる
個人事業主の場合は個人事業主=自分のため、自分への給料を経費にすることができませんが、法人の場合、法人と自分(社長)は別人格のため、社長への給料を経費にすることができます。

・消費税納付の免除がある
資本金1,000万円未満の法人は、設立から2年間は消費税の納付が免除されます(2年目については、前年度上半期の売上高や給料の支払額などの判定により免除されないこともあります)。

・税率が低い
個人事業主の場合、所得税は累進課税という課税方式です。これは利益がでればでるほど税率が高くなる仕組みです。最も高い税率だと、住民税と合わせて50%を超える税率になります。一方、法人の場合は、法人税・法人地方税を合わせ、おおよそ30%前後の税率といわれています。

・赤字を繰り越せる期間が長い
個人事業主も法人も、赤字は翌年以降に繰り越すことができますが、繰り越せる年数が違ってきます。個人事業主の最長3年間に対し、法人は9年間繰り越すことができます。

「法人成り」で必要になる処理

先述したとおり、「法人成り」は個人事業主が法人を設立することです。そのため、個人事業主=法人の代表取締役であることが多く、社長からしてみると組織が変わっただけで、実際に資産や商品が移動したということはありませんし、事実上は個人事業主と法人の間でお金のやり取りもありません。
しかし、法人と社長とは税法上、別人格となるため、「法人成り」するときには「個人から法人へ資産や商品を売った」という処理をしなくてはなりません。
つまり、「個人事業主の申告」と「法人の申告」両方の処理が必要になるのです。
具体的に処理方法をみていきましょう。

<個人事業主の申告>
①商品
「法人成り」する前日に在庫として持っていた商品は、法人に売却したことにしないといけません。「売上金額」にも決まりがあります。通常販売価格の70%以上にしなければならないのです。

②固定資産
「法人成り」する前日に持っていた固定資産も、商品と同じで法人に売却したことにしないといけません。その「売却価格」は、「法人成り」した前日の帳簿価額です。
一般的には、その年の期首の帳簿価額から、「1月1日から『法人成り』した前日までの減価償却費」を引いた金額になります。(ただし、確定申告では譲渡所得として処理します)

例)期首帳簿価額が320万円
1月1日から「法人成り」した前日までの減価償却費が50万円
よって、この場合は270万円で売却したことになります。

③債権・債務
売掛金や未収入金などの債権や、買掛金・借入金などの債務は、法人に引き継がなくてもよいことになっています。引き継ぐ場合は「法人成り」した前日の帳簿価額で引き継ぎます。

<法人の申告>
①商品
個人事業主の申告とは逆で、商品を仕入れたことになります。仕入れ金額は、個人事業主の申告で売り上げにした金額と同じ金額で処理します。

②固定資産
こちらも個人事業主から固定資産を購入した処理が必要になります。金額は、「法人成り」した前日の帳簿価額です。

ここでの注意点は、新品ではなく、あくまで中古の固定資産を購入したことになるという点です。新品の固定資産の購入と中古の固定資産の購入では、減価償却費の計算に使う耐用年数が異なります。中古の固定資産では新品のものより耐用年数は短くなるので気を付けましょう。

※中古資産の耐用年数の計算式
(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20%

例)法定耐用年数が10年で、経過年数が5年の中古資産の耐用年数
(法定耐用年数10年-経過年数5年)+経過年数5年×20% =5年+1年=6年
ただし、耐用年数は最低2年なので、耐用年数の全てを経過した中古資産は、耐用年数2年で計算することになります。

③債権・債務
個人事業主で説明したように、債権・債務は引き継がなくてもかまいません。引き継ぐ場合は「法人成り」した前日の帳簿価額で引き継ぎます。
あくまで個人から法人への売却です。現金の動きがない場合、上記の資産や負債の差額は
「未払い金」で処理します。

例)【資産】 商品100万円 固定資産270万円 売掛金50万円 合計420万円
  【負債】 買掛金30万円
上記の額で引き継いだ場合、資産420万円と負債30万円の差額390万円が未払い金になります。 仕訳は、下記のとおりです。

借方:仕入れ(または商品) 100万円  貸し方:買掛金  30万円
借方:固定資産       270万円  貸し方:未払い金  390万円
借方:売掛金         50万円

このように「法人成り」にメリットはたくさんありますが、「法人成り」した年度は処理が複雑になりますので、注意して申告するようにしましょう。

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目次

  1. 1.個人経営主と法人のメリットを比較
  2. 2.会社の種類は?4つの形態の違いを比較
  3. 3.新会社法は会社が守るべきルール
  4. 4.会社は6万円の費用で設立できる
  5. 5.最短時間で会社を設立するための流れとは?
  6. 6.会社設立の際に決めるべき5つのこと
  7. 7.定款の作り方とは?定款は会社のルール集
  8. 8.電子定款の作成手順を完全解説
  9. 9.オンラインで電子定款を送信してみよう
  10. 10.紙で行う定款作成・認証方法まとめ
  11. 11.これで完了、登記の手順

※公開は終了しました

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元記事はこちら
https://keiei.freee.co.jp/2016/09/08/houjinnari_kojinjigyonushi/

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