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ヒト・モノ・カネの専門家による【お金とフランチャイズ】ここだけの話

2017年2月23日

ヒト・モノ・カネの専門家による【お金とフランチャイズ】ここだけの話

今回は、2017年2月3日(金)に東京ビッグサイトで開催された国内最大規模のフランチャイズイベント「フランチャイズ・ショー」より、『リクルート × 日経FCショー コラボセミナー』のセミナーリポートです。

多くの人が「なんとなくわかっているつもり」でちょっと避けてしまいがちな『起業時の融資』について、赤裸々なデータと一緒にリアルなところを分かりやすく解説されています。

まだ自分にはあんまり関係ない…?なんて考えている方こそ、必見ですよ。

―モデレーター:アントレ編集長 菊池 保人
1987年、リクルート入社。2001年より新卒・中途・アルバイト、住宅、進学、学び、結婚、自動車、旅行、飲食、美容領域にてメディア・商品リニューアル・業務BPRを推進、事業のIT戦略立案・実行部隊責任者。09年、リクルート横断のネットマーケティング戦略立案・実行責任者。12年、リクルートキャリアにて新規事業開発を担当。13年『アントレ』編集長就任。

―菊池
アントレももう20年。本当に多くの『独立起業された先輩たち』のお話を聞かせていただいてきました。それぞれの方と深く向き合い、経緯や経験、どういった困難があるのか。様々な角度から多くの情報を蓄積・発信してきたつもりです。

そこで、ちょっとおもしろいデータがあります。

実は、独立時にいわゆる『借り入れ』をした人はわずか25%。残り75%の方は全く借り入れをしない自己資本のみで起業しているんですね。

話を伺うと、皆さん口をそろえて『借りるのが怖い』『返すことが嫌だ』と。

日本人は貯蓄はするのに、借りることや投資はあまりしません。実際、起業後3ヶ月たっての事業投資額も100万以下という方が過半数なんです。

では『その資本で十分だったのか?』と聞くと皆さん『そうではない』『足りなかった』『もう少しお金があれば…』と口にされる。

こういった妙に矛盾した現実に対して、今日は日本政策金融公庫の奥田さんから、「ではどう借りればいいのか?」「どんな数字を見ていけばいいのか?」あるいは「どういう人がOKなのか」といった部分について、お話しいただこうと思います。

100%政府出資の金融機関?「日本政策金融公庫」とはどんなものか

―講師:奥田 展久氏
平成6年 国民金融公庫(現:日本政策金融公庫)に入庫。現場にて6,000社を超える事業者の融資審査を担当。その経験を活かし、平成24年4月から中国創業支援センター所長として創業企業への実践的かつ親身な支援を第一線で展開。平成27年4月より現職。

―奥田
まず、私が所属している日本政策金融公庫…というのは、100%営利企業である民間機関には融資が難しい「これから事業を始めよう!」といった不確定要素の多いフェーズの事業に対してなんとかするための、政府が運営する金融機関。そんな感じで捉えていただければとりあえずOKです。

特徴は、とにかく融資先企業数が多いこと。


出展:日本政策金融公庫

信用金庫が267行が112万企業に対して融資しているのに対して、なんと単体で88万企業に対し融資しています。営利に繋がりにくい企業にも融資するので、1社あたりの平均融資額も700万円以下。

ではそんな公庫が、実際どんなスタンスで企業への融資を行っているのか。またその利点や注意点はどんなものがあるのか。ちょっとお伝えさせていただこうと思います。

起業後のリスクをどう取るか?増加する創業社数と統計データ

日本公庫の融資の比率は、現在担保融資:18.7%、無担保融資:81.3%です。いまは第三者の連帯保証人をとれないので、どうしても無担保融資…つまり、まったくの後ろ盾がない融資が増えるんですね。

で、その比率は実に8割以上。そしてそのほとんどが従業員9人以下の小さな会社相手。つまり、かなりリスクをとって融資している金融機関。ということですね。

さてここで、以下のグラフを見ていただきたいんですが…。実は、創業企業数(起業した会社の数)は、平成28年に前年比108%。増えています。


開業率出典:厚生労働省「雇用保険事業年報」

『景気がいいから起業しようという人が増えている』ともとれますし、当事者目線で『ライバルが多く厳しい時期だ』ともとれるでしょう。が、共通しているのは『起業しようという人にとって先の見立てが明るい(と感じる人が多い)時期』ということです。

では、「いける!」と見て起業してみたその後。借り入れを行った方と行っていない方ではどんな違いが出て来るのか。

さらに統計データで見てみましょう。


出典: 日本公庫 総合研究所「2016年 起業と起業意識に関する調査」

起業したのであれば、もちろん事業は軌道にのったほうがいい。売り上げだって増加傾向になってくれたほうがいい。当たり前ですよね。

さらにここから、公庫の融資先の成績についても触れてみたいと思います。以下は創業から1年が経過したタイミングでのアンケート結果です。


出典: 日本公庫 総合研究所「2015年度 起業と起業意識に関する調査」、「2016年度 新規開業実態調査」

いかがでしょう?

「自己資本のみで!」という決断は、ともすればシンプルで分かりやすく、リスクが少なそうに見える決断かもしれません。が、こういった情報を知っておくこと。

その上で経営上のリスクを全部自分で持つのか、公庫などと分散させるべきなのか。こういったところ、しっかり検討していただければと。

金融機関の機能とは何か?お金を返さない強さと「積み上げ方式」計算法

さて、ではここからは具体的に借り入れを行おう!と決めたと仮定して話を進めていきましょう。

まず大事になるのは事業計画書を作るプロセス。前述の通り、希望通り調達できれば成長していける可能性は上がるわけです。なのでここはしっかりとやる必要があります。

事業をはじめようというときに何をするのか?資金調達についての記載欄には何をどう書くべきなのか。ですね。

資産に対する見込み違いと勘違い

まず前提として、ほとんどの人は基本的にはお金の準備がととのってから創業するはず…。なんですが、これまた前述の通り、実際は4割が足りないと言っています。

ではなぜこんな見込み違いや勘違いが発生してしてしまうのか?その原因となるのが、『資産に対する見込み違いと勘違い』です。

言ってしまえばただこれだけなのですが、もの(商品)を買ったり売ったりすることで資金額はどうしたってデコボコしてしまう。

するとこれを見つめて。あるいは予期せぬ支払いなどに流されて、つい流動資産で見込み違いをしてしまうんです。

起業して1年が経過して、未だに赤字で…となると、つい受けた融資を返したくなってしまう。返済を優先したくなってしまう。どれだけ優良な企業であっても、平均7ヶ月以上かかる黒字化への道の途中で です。

これは正直やめたほうがいいです。創業されるのであればしばらくは元金の返済はやめましょう。返さなくていいものは返さないという強い態度で望んでほしいとさえ思っています。

確かに仕入れをすると商品は増えますし、見た目上資金は減ります。

でも、そこで現金は減らないんです。月締め月末払いが多いですからね。

支払いから販売についても同じです。売った後に現金化するまで時間がかかります。本部にお金が一旦渡ってとか...現金がない時間が多いほど、たいへんです。なので、現金がない時間をどう縮めるかを考えたほうがいいんですよ。

簡単に言ってしまえば、仕入れをしてからの支払いを延ばす。これが資金繰りを楽にする方法なんです。

日々の経費や人件費などについても同じくで、資金繰りをうまくコントロールすると余計な資金を借りなくてよくなっていきます。

積み上げ方式と損益分岐点方式

経営をうまくやっていく上での各指標の見方は、大きく分けて積み上げ方式と損益分岐点方式の2つ。

損益分岐点方式は固定費と原価率を固定化して固定資金としたもの。つまり必要な売り上げはいくらか逆算する方法ですね。

結構多くの企業で採用されてるんですが、これの難点は『リアリティがない』ことだったりします。だって後から追っ付けの戦略をくっつけてるだけでなりたっちゃうわけですから。非戦略的なんですね。

一方、積み上げ方式は『ここでこういった戦略を打つからこれくらいの売り上げがたつ』という、時間だとか環境で積み上げていく方式。なのでとても実務的です。

私の場合、積み上げ方式のほうを評価しています。

具体的なオススメ融資制度について

さてそして以下は、手前味噌になってしまいますが『実際に創業しよう!』という段階で非常に使いやすい公庫の融資制度についてです。

もし「知らなかった」という方がいたら、ぜひ知って活用してみてください。

新創業融資制度

他の融資制度と組み合わせて利用する無担保・無保証人の制度

新規開業資金

創業する方や創業後間もない方のニーズに幅広く対応可能な融資制度

女性、若者/シニア起業家資金

創業する方や創業後間もない女性または30歳未満か55歳以上の方に特化した融資制度

ソーシャルビジネス支援資金

地域や社会が抱える課題の解決に取り組む方を支援する融資制度

挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)

疑似資本を提供するベンチャー企業向けの劣後融資制度

創業支援貸付利率特例制度

創業する方や創業後間もない方向けの利率低減制度

ここで言う「自己資金」とは、かならず全部自分で蓄えたお金じゃなくても大丈夫です。身内からこのお金をやるからともらったお金でもOK。

ただ、証明責任があるので、明確に『これは借りてきたお金じゃない』と証明する必要があります。(例えばタンス預金など。ローンで借りてきたものと区別が付かないので)

ちなみにこの制度で融資を受けた場合、法人の場合は代表者の補償を求めません。

つまり『何かあった場合でも代表者に責任がこない』ということですね。営利を優先する民間金融機関の場合、なかなかこうはいきません。基本的には保証制度がつき、さらに保証料がついてしまうのが常識です。

重要なのは金利よりも期間

融資の期間…20年とか7年とか。据え置き期間2年以内とか。いろいろあります。ここ、非常に重要なので融資を受けることを検討される際にはぜひ着目してください。

金利はどこでも(そんなに大きくは)変わらないんですが、期間は大きく変わります。

公庫は20年以内。これは圧倒的に長い方が良いです。長めに借りておいて、業績が良かった時は次の投資にまわせばいいんですから。

結局どこまでいっても大事なのは「人」である

さて、ここまで長々と様々なデータをひっぱり出しながら「つまり融資は受けたほうがいいよ」「うけるならウチ(公庫)がいいよ」と、語らせていただいたわけですが、最後にここに集まった(企業や独立を考える)皆様へお伝えしたいことがあります。

あらゆる金融機関において融資の担当者というのは個別につくものですが、彼らを説得し望んだ条件での融資にOKを出してもらうコツ…みたいなものがあります。

それは優れた事業設計資料でも、洗練されたビジネスモデルでもありません。

大事なのは『その人が従業員から信頼される人物になり得るかどうか』。この一点だと、私自身思っています。

あらゆる事業は1人では成長の限界を迎えますし、そもそもたった1人でずっとやりつづける(≒規模を拡大しない)のであれば、融資などうけなくてもいいでしょう。

人が、人に信頼され、その上に事業は動いていきます。

その意識を薄れさせずに、事業と向き合う覚悟と意志を持っているかどうか。

もし今回の話を聞いて「よし。公庫に融資の相談をしてみよう」と思い、実際に担当者との面接にまで話を進めることになった際には、『担当者はそんなところを見ているんだな』と、心のどこかに留めていただければ。

皆様が従業員から信頼される経営者としてうまくいくことを、願っています。

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安田祐輔さん(35歳)

キズキグループ/東京都渋谷区
DVや一家離散、発達障害によるいじめを経験。偏差値30からICUに合格、大手商社への就職を果たすも4カ月で退職、引きこもり生活。2011年、不登校や中退などでブランクのある人のための「キズキ共育塾」を開塾。生活困窮者の支援や、うつや発達障害で悩む人の就労支援も行う。
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