小林 俊広さん(44歳)
VOL.142消費者目線でのわかりやすい不動産コンサルティングを行う
「独立準備」は完璧じゃなくていい。
MBAとアパート経営で好機つかむ
会
社を辞めること自体が大きなハードルでした。なかでも、家族を養っていけるのか、お金を回す仕組みをつくれるのかが、最大の不安でしたね。
リーマンショックの影響で会社の業績が低迷し、失敗したプロジェクトの後始末ばかりをさせられたことが独立の転機になりました。
誰からも評価されない仕事に虚しさを味わう日々に、「会社でどんなに頑張っても、結局は歯車なのだ」と痛感。ならば、自分の能力を磨こうと、MBAを取得するため、ビジネススクールに通うことにしたんです。
それまでは会社をポンと辞めて起業する先輩を見ても、自分には関係ないと思っていました。でも、ここで経営判断能力を身につけたことが大きな自信になり、「起業したっていいんじゃないか」と思えるようになりましたね。
長年培った不動産業の知見を生かせば、人の役に立つ仕事ができると思えたし、目の前の人に感謝されるやりがいを味わいたかったんです。私が考えたのは、アレルギー体質だった自分の経験を生かし、自然素材の住宅を提供するビジネスでした。
ところが、実現に向けて通った起業塾では明確な評価を得られず、またも不安に。それでも、会社を辞めたい気持ちは止められませんでした。
「どストライクの正解じゃなくても、お金が回る仕組みがあれば飛び出したっていいじゃないか」と。
以前から起業の不安を解消する方法として、アパート経営で収入を得ようと考えていたので、自然素材を使って一から自分で建てれば、コンセプト商品もできて一石二鳥! これなら一歩を踏み出せると思えましたね。
現在は、土地活用やマイホーム取得などの不動産コンサルティングを手がけています。食べていけるだけの2本柱をつくれたのは、自分で経験し、そこで感じた意義を伝えたいと思えたからこそ。「社会問題を不動産で解決する」という大きな目標もでき、やりがいもさらに大きくなりました。
「100%完璧だ」と思える独立準備はないと思います。私自身も、そこまで待っていたらチャンスを逃していたかもしれませんね。不完全な部分があっても、ほかの手段で補うことでクリアできると実感しています。
アントレ2016.冬号 「いざ独立!私たちの第一歩」より