独立・起業をする際に必要な手続きとは?
今回はフリーランスの方が独立・起業(開業)をする際に、税務署(ここで言う「税務署」とは「納税地を所轄する税務署」とします)に対して行うべき税務の手続きについて、簡単にご紹介します。
※今回は、法人ではなく、個人事業主の方を前提としたお話です。
1)個人事業の開業届
"まずは開業届を提出しましょう。"
1.内容
起業(開業)して、まず初めに行う税務手続きは「個人事業の開業届」です。なお、この「開業届」の控えは、各種行政手続きや、金融機関との取り引き(屋号付の口座開設や、融資申し込みなど。)に必要な場合がありますので、必ず手元に保管しておいて下さい。個人事業者は法人と異なり登記がないため、この「開業届」の控えが「事業を行っていること」の証明となります。
2.提出方法
事業の開始日から1ヶ月以内に提出しましょう。
3.都道府県にも提出
納税地を所轄する都道府県税事務所に対しても、開業届を提出する必要があります。これが、個人事業主に対して課税される、個人事業税についての届け出となります。
なお、この個人事業税は、税務署に提出した所得税の確定申告書に基づき、その都道府県が税額を計算する仕組みであるため、原則として個人事業税に関する確定申告は不要です。
2)所得税の青色申告承認申請
"青色申告は節税の第一歩です。"
1.内容
所得税の確定申告を青色申告で行うと、税務上の特典(節税になるもの)を受けられます。青色申告には要件がありますが、会計ソフトを使用することにより、おおむねそれを充たすことが可能です。
青色申告の主なメリット
●青色申告特別控除の適用がある(最高65万円又は10万円)
お金の出ていかない経費です。
●青色事業専従者給与
配偶者などの親族に支給する給与を必要経費とすることができます。
●貸倒引当金
売掛金や貸付金に対して一定割合の貸倒引当金を必要経費とすることができます。
●純損失の繰り越し
事業から生じた赤字を3年間繰り越すことができます。
2.提出方法
事業を開始した年の3月15日までに提出して下さい。
もし、事業開始日が1月16日以後の場合には、その開始日から2ヶ月以内に提出することになります。
3)源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請
"源泉徴収は、給与だけではありません。"
1.源泉徴収が必要な場合
従業員を雇って給与を支払う場合、その給与に対する所得税を源泉徴収する必要があります。また、給与の支払いだけではなく、税理士等へ報酬を支払った場合や、個人へ一定の業務委託料等を支払った場合も、源泉徴収をする必要があります。
この源泉徴収は、支払う側の義務であり、原則として、支払い先の意志によりその有無を選択できませんので、徴収漏れの無いように気をつけましょう。
2.納期特例の内容
源泉徴収した所得税(復興特別所得税を含む。以下同じ)は、原則として、その徴収した月の翌月10日までに税務署へ納めなくてはなりません。
しかし、納期の特例の承認を受けると、一定のものについては、半年に一度の納付で済むことになります。
(納期特例の承認を受けた後の納期)
●1月~6月支払い分 7月10日
●7月~12月支払い分 翌年の1月20日
3.納期特例を申請するための要件
給与の支給人員が常時10人未満であることが必要となります。
4.特例の対象となる源泉徴収
給与や退職手当、税理士等の報酬・料金についての源泉徴収が該当します。
なお、デザイン作成や原稿料等についての源泉徴収は、この特例の対象外ですので、原則通り納める必要があります。ご注意下さい。
5.提出方法
期限は特に定められていません。
ただし、原則として、提出した日の翌月に支払う給与等から適用されることになりますので、開業と同時に提出する場合がほとんどです。
6.給与支払事務所等の開設届は不要
個人が新たに事業を始めた場合、個人事業の開業届を提出することになりますので、「給与支払事務所等の開設届」は提出不要です。
よって、納期特例の承認申請のみの提出で問題ありません。
4)青色事業専従者に関する届け出
"配偶者への給与を必要経費とするには事前の届け出が必要です。"
1.内容
個人事業主が、生計を一にしている配偶者やその他の親族に対して給与を支払う場合、原則として、その給与を必要経費にすることはできません。しかし、青色申告を行う際には、一定の要件の下に実際に支払った給与の額を必要経費とする青色事業専従者給与の特例があります。
2.青色事業専従者とは
この特例の対象となる青色事業専従者とは、次の要件のいずれにも該当する人をいいます。
(1) 青色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族であること
(2) その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること
(3) その年を通じて6月を超える期間(一定の場合には事業に従事することができる期間の2分の1を超える期間)、その青色申告者の営む事業に専ら従事していること
3.青色事業専従者給与(必要経費)として認められる要件
次の4つの要件を全て充たす必要があります。
(1) 青色事業専従者に支払われた給与であること
(2) 「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出していること
(3) 届出書に記載されている方法により支払われ、しかもその記載されている金額の範囲内で支払われたものであること
(4) 青色事業専従者給与の額は、労務の対価として相当であると認められる金額であること
4.提出方法
青色事業専従者給与額を必要経費に算入しようとする年の3月15日までに提出して下さい。ただし、その年の1月16日以後に開業した人は、その開業の日から2か月以内に提出することになります。
また、新たに専従者がいることとなった人も、その専従者がいることとなった日から2か月以内に提出することになります。
5.注意点
青色事業専従者給与の支払いを受ける方は控除対象配偶者、又は扶養親族にはなれません(つまり、配偶者控除や扶養控除を受けることができないということになります)ので、ご注意下さい。
5)消費税に関する届け出(課税事業者を選択する場合)
"開業初年度から課税事業者を選択したい場合には、届け出が必要となります。"
1.消費税課税事業者選択届出書
個人事業主は原則として、開業してから2年間は免税事業者(消費税の申告・納付を行う必要がない事業者。)となります。
しかし、開業初年度から課税事業者を選択したい場合は、この「消費税課税事業者選択届出書」を提出することにより、可能となります。
2.開業初年度から課税事業者を選択する場合
一般的には免税事業者の方が得ですが、初年度から多額の設備投資を行う場合や、輸出業を主な業務とする場合には、課税事業者を選択した方が得をする場合もあります。
ただし、いったん課税事業者を選択すると、少なくとも2年間は免税事業者に戻ることはできません。届け出を提出する前に慎重な判断が必要となるのです。
3.提出方法
開業初年度から課税事業者を選択する場合は、その開業した年の12月31日までに提出する必要があります。
まとめ
今回は、個人事業の方が独立・開業をする際に必要な手続きについてお伝えしましたが、いかがでしたでしょうか?
ご紹介した手続きはいずれも電子申告システムの利用が可能です。また、実務上では、今回の手続きはまとめて一度に行うことが多いです。
税務手続きは、一見難しく思われがちですが、何も税務署のためだけに行うものではなく、皆さんにとってメリットになることも多くありますので、必要な手続きは最初にまとめて行い、経営に専念していただくことをおすすめします。
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目次
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- 2.会社の種類は?4つの形態の違いを比較
- 3.新会社法は会社が守るべきルール
- 4.会社は6万円の費用で設立できる
- 5.最短時間で会社を設立するための流れとは?
- 6.会社設立の際に決めるべき5つのこと
- 7.定款の作り方とは?定款は会社のルール集
- 8.電子定款の作成手順を完全解説
- 9.オンラインで電子定款を送信してみよう
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