「どうしたら商売繁盛するのか」
多くの独立・起業予定の方が悩むところはやはりココ。繁盛するビジネスを漠然と考えても、なかなかいい具体的な案やイメージは思いつきません。
そんな都合のいい必殺技なんてないか…と、起業に踏み込めない人は多いのではないでしょうか。
しかし実は、商売繁盛のコツは意外と簡単に見つかります。答えは業態での業績を因数分解し、掛け算と足し算で分けて考えること。あとは、その式の中で一番大切な部分を攻略するだけで、商売繁盛のヒントをつかむことができるのです。
本シリーズでは、そうした商売繁盛の秘訣を業種別に解説。第2回は、自宅でも起業でき、初期投資が抑えられる「便利屋業(=生活関連代行サービス業)」。アントレnet Magazine』編集部が総力を挙げて解説する便利屋業の攻略法をさっそくご覧ください!
便利屋業は売上を追うな!「粗利」だけ見て商売するべし!
今までのシリーズでは、売上を分解して説明してきました。しかし今回は、“粗利”を分解して説明していきます。その理由は、便利屋業界特有の仕事方法にあります。
便利屋業は別名、生活関連代行サービスと称するように多様な仕事を引き受けます。そのため、時には自社では対応できない仕事を依頼されることも。その際は、外部に再委託することになります。このようなケースが増え続けると薄利になりがち。
だからこそ、全体的な利益がどの程度残るのかを把握することが重要なのです。そのため“粗利”を常に確認・意識しましょう。そうすれば、便利屋業における業績も正しく知ることができます。
便利屋業における粗利の因数分解は以下の掛け算で考えます。
粗利(売上高-売上原価)
=問い合わせ件数×現地調査訪問率×契約率×契約単価×粗利率
上記の掛け算では、左にいくにつれて重要度が増します。つまり、便利屋にとって問い合わせ件数が最重要項目ということになります。それぞれどのような点に気をつけなければならないのかをご説明しましょう。
●問い合わせ件数
チラシの作成・配布やタウン情報紙への広告出稿など、ある程度コストをかけて受注の件数を増やします。自らが行う便利屋を商圏に住む人々に知ってもらうことで困った時に問い合わせしてもらえるようにします。
●現地調査訪問率
電話では、依頼主はやってほしいことしか頼みません。実際に現場を訪問して見てみることで、プラスαの価値を提供し、客単価をあげることができます。丁寧にお願いすれば断られることは少ないので、なるべく現地に訪問しましょう。
●契約率
仕事柄、生活に関わることが多いのでお客さんとの信頼関係は非常に重要です。数回の訪問で信頼を得るためには、第一印象が大切。そこで試していただきたいのがスーツにネクタイを締めての訪問。それだけでも、仕事を任せてくれる可能性がアップします。
●契約単価
単価を上げるには、訪問した際にお客さんのニーズを深く聞きとり、依頼された案件だけではなく付加価値(オプション)を付けていくのがベスト。
●粗利率
先に触れたように、再委託してしまうと粗利が減ります。そこで、出来るだけ内製できるようにします。そのためには、スタッフのスキルを上げることが必要。しかし、これは時間がかかります。スタッフ育成は早めに計画を立て実施していきましょう。
便利屋業における粗利を構成するこれら5つの因数。それぞれ気を付けるべき点を踏まえて、粗利の向上を目指しましょう。
【便利屋業における粗利の考え方 まとめ】
粗利(売上高-売上原価)
=問い合わせ件数×現地調査訪問率×契約率×契約単価×粗利率
●問い合わせ件数…チラシや広告出稿で増やしていく
●現地調査訪問率…電話問い合わせ時、丁寧にお願いして伸ばす
●契約率…スーツで訪問し信頼感を上げて契約数アップを狙う
●契約単価…ニーズを聞き取りオプションを付けて増加させる
●粗利率…自分・自社でできることを増やし内製を増やすことで上げる
経費=原価+固定費+変動費のうち、どこを削るかは戦略に応じて決めていく
経費は、原価+固定費+変動費の足し算で算出されます。経費を削る方法は、便利屋業においては多様です。自分がどのような戦略で経営していきたいかで削り方は変化します。
●原価について
上述したように、再委託すると原価は必然的に上がります。そのため、内製率を上げて原価を下げることを目指すべきです。しかし、内製にはスタッフのスキルが問われるので、育成には時間がかかる…。
ではどうするか。薄利多売の方法をとるのが、もう1つの手です。
営業間口を広げることで、再委託してでも多種多様なニーズに応えていきます。そうして「あの便利屋なら何を頼んでも大丈夫」とお客さんに認識してもらえれば、それが自社の強みになります。薄利になっても受注を増やす作戦です。
●固定費について
便利屋は、事務所を構える必要はありません。事務を行うスペースと道具を置く場所さえ確保できれば成り立つからです。自宅兼事務所にすることで、賃貸料を0円にできます。
また創業期においては、人を雇う必要さえありません。そのためには、自分でできる作業範囲が広ければ広いほど固定費を抑える面からは理想的です。人を雇わず、再委託をすることも不要となるので固定費(人件費や従業員の教育コスト)を抑えられるからです。
●変動費について
問い合わせ件数を増やすための販売促進費が大半を占めます。ですが、問い合わせ件数を増やそうとしてチラシを作っても、工夫もなく作ったチラシはすぐに捨てられてしまいます。また、何度も同じチラシを配っていては費用がかさんでしまう一方。
それを防ぐため、一家に一枚保存してもらえるような“保存版”のチラシを作成しましょう。困った時には「これを見れば安心!」と思わせるチラシを配ることで、問い合わせ件数が増加します。さらに、保存版なので何度もチラシを制作し配布するコストも不要となり、変動費も抑えられるのです。
以上のように、経費は自分の裁量で削ることができます。人を雇うよりも自分がスキルアップして内製率を上げる。あるいは、ちょっと狭いけど自宅兼事務所にする。そうして、どこにお金を使うのか決めることで経費は減らしていけるのです。
【便利屋業における経費の考え方 まとめ】
経費=原価+固定費+変動費
●原価…再委託費を抑えれば下げられる
●固定費…事務所賃貸料と人件費
●変動費…ほぼ、販売促進費
捨てられるチラシを作ってどうするの?集客の武器「保存してもらえるチラシ」のススメ
上述したように、すぐ捨てられてしまうチラシは無駄な出費。また、人は、よほどのことがなければ細部まで記憶できません。よって、チラシにサービスの内容を載せても、困った時に思い出してもらうことは難しいでしょう。
そこで、保存してもらえるようなチラシの出番です。イメージとしては、冷蔵庫に貼ってあるゴミの日を曜日別にまとめたもの。表側には大掃除などの時期のニーズに応えるような情報を載せます。裏側は、宅配ピザのメニュー一覧のように自社のサービスを一覧化。
生活に必要な情報を載せてチラシが捨てられることを防ぎ、困った時にすぐに見てもらえるようにするのです。こうして、粗利の因数分解で一番大切な「問い合わせ件数」を増やすことにも一役買ってくれます。
次の依頼と口コミ拡散は、「信頼感の向上」に注力して叶える!
便利屋業の業務は人の生活に沿ったものがほとんど。生活に沿う仕事ならば信頼してもらうことが前提であり、そのための努力は惜しんではいけません。
生活の中で困ったことがあった
↓
チラシを見てもらい受注
↓
作業に納得してもらい信頼
こうした循環を作ることが理想。生活を助けることで、生活関連代行サービス=便利屋の良さが認識され信頼が増します。そうして、再度の依頼も望めるのです。
今回の記事では「便利屋」「生活関連代行サービス」と記してきました。便利屋と言うと、人はいろいろなイメージを持ってしまいがち。なかには良いイメージを持たない方もいます。そこで便利屋ではなく“ライフサポートビジネス”と呼び方を変えるのも1つの対策になります。呼び方を変えることでイメージが一変し、信頼感を向上できるからです。
契約率のところでオススメした「スーツ × ネクタイ」も信頼感向上に役立つのはもちろん、行動でも信頼感を高めたいところ。たとえば家に上がった後には、頼まれなくても玄関を掃除して帰るというひと手間を加えることも有効。お客さんがこれで満足すれば信頼感が向上し、再度の依頼だけにとどまらず、口コミで評判が広まることも見込めるからです。
「信頼感の向上」に常に気をつけながら“ライフサポートビジネス”を行うことで、成功へ一歩一歩近づいていきましょう。