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凹んだままじゃ終われない!介護タクシードライバー荒木正人さんの山あり谷あり10年記

凹んだままじゃ終われない!介護タクシードライバー荒木正人さんの山あり谷あり10年記

今から約10年前「サン・ゴールド介護タクシー」の代表・荒木正人さんは、当時としては珍しい介護タクシーのサービスを立ち上げるため、長年勤めた会社を早期退職。57歳にして起業しました。

独立して10年。酸いも甘いも知り尽くしている荒木さんにこれまでの歴史、そして今の仕事に対する想いをお聞きしました。

「車が好き」×「人から”ありがとう”を言われる仕事」それが、介護タクシードライバー

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ー最近ではよく見るようになった介護タクシーですが、荒木さんは10年も前から介護タクシーの事業を立ち上げているんですよね。そもそも事業を立ち上げようと思ったきっかけはなんですか?

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―荒木正人さん(以下、荒木)
前職のシステム系の会社にいたときから、シニアライフアドバイザーの養成講座に通っていました。そこで出会った先輩に影響されたことがきっかけです。

介護タクシーサービスをボランティアでやっているその先輩の講演を聞いて「私も介護タクシーの仕事をしたいのでノウハウを教えてください!」と、弟子入りを志願しました。

そこで車を調達したりサービスの認可を取ったりなどサービスを立ち上げるまでの手順を教えてもらいました。

ー弟子入りを志願してっていうのがすごい熱量ですね。なぜ介護タクシーを選んだのでしょうか?

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―荒木
元々車を運転するのが好きだったのと、会社員時代からずっと「人から”ありがとう”を言われる仕事」がやりたいと思っていました。その2つがマッチングしたのが介護タクシーの仕事だったからです。

ーまさに荒木さんのやりたいことがマッチした仕事だったんですね。天職として始めた介護タクシーの仕事、立ち上がりはどうでしたか?

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―荒木
滑り出しはまずまずよかったです。杉並と世田谷の2区を中心にやっているのですが、大きい家や有料老人ホームなどを狙ってポスティングをしたり、HPを作ったりして。最初は地道な営業活動をして徐々にお客さんを増やしていきました。

そんな時、HPを見たある病院から、患者の送り迎えを担当してほしいと声がかかったんです。そこからさらに人を雇って車を調達して。その後3、4年でグッと業績が伸びました。

当時は同業者も少なかったこともあり、順調に業績を上げていきました。タクシー業に病院の送り迎えと大忙しで、最盛期には7〜8人雇って運営していました。

病院との摩擦、収入3割減、ドライバーの引き抜き……順風満帆から一転、荒木さんを襲った”谷の時代”

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ー立ち上がりから3、4年で仕事も人も増えて、業績も上がり、全てが順調だったわけですね。

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―荒木
最初の5〜7年くらいはよかったんですが、実は今そんなに余裕はないんです。というのも、3、4年目から売れ行きがよくなって人も車も増やしたので、当然コストもそれに応じてかかってきます。

特に病院にはかなりの頻度で送迎をやっていたので、病院側に請求するお金もだんだん増えていって。コストが膨らんでいくにつれて、病院側との間に摩擦が生じてきたんです。

ー事業がある程度成熟してきたからこそ、出てきた問題なのかもしれませんね。費用に関して摩擦が生じたのは、他に競合がいたからなのでしょうか?

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―荒木
いえ、競合がいたわけではないんです。ただ、額面上費用が上がってしまったので、病院側から「こんなに払えない!」と言われてしまったんです。

いろいろと交渉もしてみたのですが、結局今までいただいていた料金から、3割も引いた金額で取引をすることになってしまいました。

ー3割も引かれてしまうなんて……。

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―荒木
それだけではありません。その後、今度は運転手の引き抜きがあったんです。休日に病院側が無断でドライバーを雇ったりだとか。

当時契約していた病院には車があったので、その車のドライバーとしてうちのドライバーを引き抜いたんです。当時は知識もなく、契約で引き抜きを禁止するなどのこともやっていなかったので、その様子をただ見ていることしかできませんでした。結局、その病院とは契約を解除して雇っていたドライバーの多くはやめてしまいました。

ー順風満帆から一転、大変なことになってしまったんですね。とてもお聞きしづらいのですが……、現在はどのように運営をされているのですか?

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―荒木
現在はある病院と新たに契約して、現在8人の患者さんを週3で送り迎えしています。前回の反省を活かし専門家に契約周りから相談をしているので、引き抜きの心配もありません。

それ以外の仕事もあるのですが、やはりきちんと定期的に収入が入ってくる環境がひとつはないと、とてもやっていけませんから。

今は全盛期に比べると仕事は少ないのですが、やっといいドライバーさんが2人見つかって地道に、堅実に運営しています。

それでもこの仕事を続けたいのは、お客様の「ありがとう」が聞きたいから

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ーまさに山あり谷ありの10年を過ごしてきた荒木さんですが、今後新たなビジネスを展開していこうとは考えているのでしょうか?

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―荒木
もちろん、新しいビジネス案を常に考えてはいるのですが、現状あまりいい案が出てきてはないですね。私が事業を始めた10年前と異なって、今は競合もとても多くなりましたし、大手の企業さんもこの市場に目をつけて手を打ってきています。

やるとしたら、企業さんができない個人レベルならではのサービスがいいのですが……。むしろいい案があるなら教えてほしいくらいです(笑)。

ー介護タクシーの事業から離れて、全く新しい事業を立ち上げることも視野に入れているのでしょうか?

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―荒木
それはないですね。新しいサービスを展開するなら、介護タクシーの事業に付随するような形で広げていきたいと考えています。

様々なところで大変な思いをしますし頭を抱えることも多いのですが、それでも自分の好きな運転で、お客様に「ありがとう」と言ってもらえる喜びは、何ものにも代えがたいやりがいです。このままじゃ終われないなと思っています。

サラリーマン時代にはなかなか味わうことができなかったこの喜びがあるからこそ、この仕事が続けられているんだと思います。

ーどんなにつらくてもお客様のためにならがんばれる仕事。とても素敵ですね。最後に、独立や起業を考えている人にメッセージをください。

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―荒木
まずは自分の好きなことや興味のあることを仕事にできるよう考えてみてください。私の場合、それは「運転」そして「人の役に立つこと」という2つが独立のカギでした。

独立はたしかに不安もつきまとうし、勇気がいることだと思います。そしていざ独立してからも、私のように10年もやっているといい時もあれば悪い時もあります。

いい時はともかく、悪い時に乗りきれるか否かは、やはり自分が自分の仕事を好きでいられるかどうかです。だから自分の好きを仕事にできるよう、一歩を踏み出してみてください。

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