起業家、経営者にとって大事なのは、世の中を見抜く力です。1つの事象をどう捉えるかで、ものの見え方も、そこから得られる情報も大きく変わります。そうした「着眼点」、実はトレーニングによって鍛えることができるのです。累計20万部を超えるベストセラーとなった『戦略思考トレーニング』シリーズでおなじみの経営コンサルタント・鈴木貴博氏に解説してもらいましょう。
経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第125回・沖縄で見つけた珍しいカレー
いきなりですが、クイズです!
クイズの答えの中に、着眼点を鍛えるポイントがある
株主優待制度とは、自社の株を持つ株主に対して年に数回、配当金以外のものをプレゼントする制度のことです。
投資家によっては、株主優待でもらえるものを目的に、その銘柄を選んでいる場合もあるようです。実際の商品や、お得な優待券などがもらえることが多く、株式投資の1つの楽しみとして定着しつつありますよね。
それでは解説します!
しかし、その株主優待制度がもらえずに、「不公平だ」とクレームを入れる株主が増えているのだそうです。
というのも、個人投資家から見たら、株主優待でもらえるものを含めた利回りで計算して「お得だから」と株を買い支えることもあるようです。ですから、株主優待がもらえなければ「不公平だ」と考える人も当然出てくるわけですね。
その「もらえない人」が誰かということですが、実は海外に住む投資家です。
株主優待券は国内にある住所宛に配られることを前提にしているため、国内に住んでいなければ基本的にはもらえないのです。そもそも海外に送ることを想定していないからでしょう。商品ならともかく、割引クーポンなどの優待券ならなおさら、国ごとの通貨に合わせて発行するのは難しいのです。
今回のテーマは、広い意味で「顧客の変化」という話です。
企業から見たら株主は重要な利害関係者であり、その人たちを喜ばせるために株主優待制度を始めたはずです。しかし、令和に入って状況は変わっています。
海外の投資家が増えている大きな要因として円安が挙げられます。また、アメリカ株が好調だったことから、日本株に対して割安だと考える投資家が多く、今、日本の株を買っている投資家には海外在住の個人を含む外国人投資家が非常に多くなっているようです。
そんなわけで、今までは当たり前だった「お客さん」の中身は実は変わっていて、その変化に合わせて彼らのニーズそのものも変わってきているんだというわけですね。
お客さんの変化に対応できているか?
皆さんの商売でも、「お客さんはこんな人だろう」という想定があると思います。ただ、もしかしたら層が変わっていたり、ニーズも変わっていたりすることが起きているかもしれません。
お客さんの変化と、それにうまく対応した例としては、東京・日暮里にある繊維街の話があります。
元々は繊維店が多く並ぶ問屋街として賑わった町ですが、日本文化としての繊維生地や手芸が注目されるようになったことで、外国人観光客が集まり始めました。
そこで、観光客向けに品揃えを変えたり、外国人旅行客が欲しがるような柄や素材の着物を充実させたりと、観光地として盛り上げることに成功しています。
一方で、先日、創業74年の老舗和菓子メーカー・紀の国屋が廃業したというニュースがありましたが、和菓子は洋菓子と比べて若者を取り込むことに失敗したといわれています。
洋菓子が早いうちからコンビニエンスストアなどに積極的に並べて幅広い世代にアピールすることで、お客さんの変化に対応し、うまいこと新たなニーズを取り込んでいきました。一方で、和菓子はその辺りがいまいちうまく進められず、「和菓子離れ」が加速してしまったといわざるを得ない状況です。
インバウンドの復活で客層が大きく変わる可能性
今回は顧客の変化という話でしたが、一つの契機として、この6月からインバウンドが復活します。
一日あたりの外国人観光客の入国上限数を2万人に増やすことで、多くの観光客が日本を訪れるようになると予測されることから、6月に入って客層がガラッと変わることも考えられます。
後からそれに気づいてうろたえなくて済むように、準備しておくといいかもしれませんね。
最後に、もうお分かりだと思いますが、冒頭のクイズの答えは「海外の投資家」でした。インバウンドが増えることで、また新たなビジネスのチャンスが増えるかもしれません。ポストコロナの時代に有効な、新たな商売を考えてみてくださいね。
経営戦略コンサルタント
百年コンサルティング株式会社
代表取締役
鈴木貴博