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経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第125回・沖縄で見つけた珍しいカレー

経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第125回・沖縄で見つけた珍しいカレー

起業家、経営者にとって大事なのは、世の中を見抜く力です。1つの事象をどう捉えるかで、ものの見え方も、そこから得られる情報も大きく変わります。そうした「着眼点」、実はトレーニングによって鍛えることができるのです。累計20万部を超えるベストセラーとなった『戦略思考トレーニング』シリーズでおなじみの経営コンサルタント・鈴木貴博氏に解説してもらいましょう。

いきなりですが、クイズです!

先日沖縄に行った際、何かお土産を買おうと地元のスーパーに足を運んだのですが、そこで見つけたのが古いパッケージの「ボンカレー」でした。現在は全国的に「ボンカレーゴールド」がスタンダードになっている中、沖縄ではあえて昔のパッケージのままの「ボンカレー」を販売しているのだとか。さて、それはどうしてでしょうか?

クイズの答えの中に、着眼点を鍛えるポイントがある

私は旅行などでお土産を買う時、お土産屋さんではなく地元のスーパーに行って何か面白いものがないか探すことを習慣にしています。それで沖縄で見つけたのが「ボンカレー」です。

「ボンカレー」は大塚食品が1968年に発売したレトルトカレーです。78年には、日本人の嗜好の変化に合わせた新しい味の「ボンカレーゴールド」が発売。当初はオリジナルとゴールドを併売していましたが、現在は「ボンカレーゴールド」になっています。

沖縄のスーパーで見つけた「ボンカレー」は、一定の年齢以上の方ならわかると思いますが、女優の松山容子さんがパッケージに写っている懐かしいものです。古いものが売っているのかと思わず賞味期限を確かめてしまいましたが、ちゃんと最近作られたものでした。

私が住む東京で見かけることはない商品です。なぜ、沖縄では普通に販売しているのでしょうか。

それでは解説します!

実はこの理由について、大塚食品のホームページには見解が掲載されています。

昔のままの「ボンカレー」を売り続けている理由は、「沖縄の人は最初に食べたものを好きになるから」なのだそうです。

ゴールドと併売されるようになってからも、地元の人たちは「ボンカレー」との最初の出会いを大切にし、支持し続けていることから、沖縄ではオリジナルの「ボンカレー」が主力商品として販売され続けているのだとか。何事にも長く付き合う県民性がそうさせているのかもしれませんね。

実際に食べてみると、昔のカレーはこうだったなあと思い出すような、懐かしい味がするような気がします。

私はもう1つ理由があると考えていて、それは沖縄の「暑さ」との関係です。

暑いと人はどうしても汗をかいてしまいますから、体が無意識に塩分を欲しますよね。「ボンカレー」の方が暑い沖縄の土壌により合った味なのではないか、と想像しています。

実際のところ。私が買ってきた沖縄の「ボンカレー」と、都内で購入した「ボンカレーゴールド」を比較してみたところ、一袋あたりの塩分の含有率が違うようです。「ボンカレーゴールド(中辛)」が2.3gであるのに対し、沖縄の「ボンカレー(中辛)」は2.7gと塩分が多いことが分かりました。

やはり暑い沖縄だからこそ、塩分が欲しくなるということだと私は考えています。

地域ごとに根強く親しまれる味

カレーの話に限らず、同じものでも地域ごとで好まれる味が違う場合はよくありますよね。

よくいわれるのが、関西と関東ではうどんのだしが違う話です。関西は昆布のすっきりした味を生かした風味豊かな薄味で、関東は濃口醤油を使った「つゆ」に近いどっしりとした味が特徴です。同じブランドのカップ麺でも、製造された場所で味が違うことから、お土産として買っていく人も多いようですね。

名古屋は「名古屋味」といわれる、味噌煮込みに代表されるような濃い味が好まれる傾向にあります。

地域性という話でいうと、北海道では「ガラナ」という植物由来の飲み物が人気なように、その土地ならではの食習慣が古くから根付いているのは明らかです。

沖縄や、海外ですがハワイでは「ポーたま(ポークたまご)おにぎり」が定番でよく売れるのは、やはり暑いがゆえに塩辛いものを欲することと関係があるでしょう。

このように、食べ物については地域差が出やすく、「ご当地ならでは」が入り込める余地がたくさんあるのです。

改めて俯瞰してみると分かるのは、例えば洗剤や衛生用品、雑貨などの日用品の多くは巨大メーカーが市場を支配しがちですが、食品に限っては「ご当地」が残りやすいということです。

例えばビールは、日本中でサントリー、キリン、アサヒといった大手メーカーが席巻していると思いきや、沖縄ではオリオンビールが主流になっています。このように、ご当地の企業が存在感を発揮しやすいのが、食品の分野といえるかもしれませんね。

スモールビジネスは「食」から始めるのが基本!?

今回は、沖縄で販売され続けている「ボンカレー」の話から、食と地域性について考えてみました。

改めて感じたのは、何かスモールビジネスを始めようと思った時に、「食」に関するものから入るのが実は基本ではないか、ということ。新しいビジネスを考える際の1つの視点として、参考にしてもらえたらと思います。

最後に、もうお分かりだと思いますが、冒頭のクイズの答えは「沖縄の人は最初に食べたものを好きになるといわれているから」でした。ちなみに、「ボンカレー」の方がゴールドに比べてとろみが強いそうで、それが硬く炊かれることが多い沖縄のお米とよく合うという説もあるようです。食品の分野は奥が深いですね。


PROFILE
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経営戦略コンサルタント
百年コンサルティング株式会社
代表取締役
鈴木貴博

東京大学工学部卒業後、ボストン・コンサルティング・グループに入社し、数々の大企業の戦略立案プロジェクトに従事。1999年にはネットイヤーグループの創業に取締役として参加。2003年に独立し、百年コンサルティングを創業する。大手企業の経営コンサルティング経験を元に2013年に出版した『戦略思考トレーニングシリーズ』(日本経済新聞出版社)が累計20万部を超えるベストセラーに。現在はビジネスをエンタメクイズ化する経済エンタテナーとしても活動中。『パネルクイズ アタック25』(優勝)、『カルトQ』などのクイズ番組出演経験も豊富。近著に『戦略思考トレーニング 最強経済クイズ[精選版]』(日本経済新聞出版社)、『日本経済 予言の書 2020年代、不安な未来の読み解き方』『「AI失業」前夜―これから5年、職場で起きること』(ともにPHPビジネス新書)など。

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