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経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第111回・共通点は何だ?

経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第111回・共通点は何だ?

起業家、経営者にとって大事なのは、世の中を見抜く力です。1つの事象をどう捉えるかで、ものの見え方も、そこから得られる情報も大きく変わります。そうした「着眼点」、実はトレーニングによって鍛えることができるのです。累計20万部を超えるベストセラーとなった『戦略思考トレーニング』シリーズでおなじみの経営コンサルタント・鈴木貴博氏に解説してもらいましょう。

いきなりですが、クイズです!

突然ですが、次に挙げる3つのものに共通することは何でしょうか?
・東芝テックのセルフレジ
・くら寿司の回転寿司レーン
・アメリカ横断ウルトラクイズのクイズハット

クイズの答えの中に、着眼点を鍛えるポイントがある

今回はいつもとちょっと趣向を変えて、共通点を見つけるクイズです。

分かる人は一瞬で分かるかもしれません。全く見当がつかないという人は、ぜひいろいろな角度から考えてみてくださいね。

それでは解説します!

いきなり当たり前の話から入りますが、「少子高齢化」が進んでいますよね。

それによりいろいろな業界が打撃を受けていますが、その1つが「小学館の子ども向け雑誌」です。いわゆる『小学1年生』といった付録付きの雑誌ですね。

以前は1年生から6年生まで全て出ていましたが、今はというと、2年生から6年生は休刊となり、まとめて『小学8年生』という雑誌になっています。

そんな縮小傾向が続く中にあって、健闘しているのが『幼稚園』です。

なぜならこの雑誌、付録にものすごく力を入れているのです。実は今回のクイズで挙げた3つのものは、すべて『幼稚園』の付録になったものなのです(厳密にいうと、「アメリカ横断ウルトラクイズのクイズハット」は、2021年11月発売予定号の付録です)

雑誌の付録というと、紙を切り抜いて組み立てて遊ぶようなものが定番でしたが、『幼稚園』の場合は電子部品を使ったりして、かなり本格的です。「東芝テックのセルフレジ」は、ちゃんとバーコードが読み取れて、本格的な音も鳴るので、子どもは大喜びです。

何より、作りごたえがあるのが一番の魅力かもしれません。そこはまさに大人の出番であり、子どもに頼まれたら「腕まくりをして挑んでしまう」ようなやりがいがあるわけです。

この「大人も子どもも楽しめる」というのが、今回の戦略志向トレーニングのポイントです。

あの人気クイズ番組にも仕掛けがあった

先日残念ながら終了してしまいましたが、「パネルクイズ アタック25」という、日曜日のお昼に放送されていたクイズ番組がありました。

『幼稚園』の付録の話で思い出したのが、この番組でのクイズの作り方の話でした。

放送作家が番組の裏側を語っていたのですが、実は問題の作り方には相当こだわっていたのだとか。

それは、「メインターゲットは小学5年生の子どもとそのお父さんで、日曜のお昼に一緒に番組を見ている」という設定で問題を考えるのだそうです。つまり、親子で競い合っているはずなので、「お父さん、なんでそんなことを知っているの?」と子どもに言われるようなお父さん向けの問題と、子どもや若い人なら分かるような問題をうまく盛り込むわけです。

私はクイズが好きで、いろいろなクイズ番組にも出ましたし、クイズサークルを主宰しているのでよく分かりますが、難しい問題を作るのは、実は結構簡単です。しかし、お茶の間で楽しめて、それでいて簡単すぎない問題を作るのは、難しいのです。

そうした工夫があったからこそ、番組は長きにわたって親しまれたのでしょうね。

『幼稚園』の付録同様、こうした「世代を超えて楽しめる工夫」を取り入れたものが、いろいろなところで増えています。例えば、最近の特撮ヒーローものは、イケメン俳優をキャスティングすることで、親子で楽しめるものになっているのは有名ですよね。

ブロック遊びの定番であるレゴ®も、いろいろなものとコラボレーションしたり、本格的な仕様のシリーズを出したりすることで、子どもだけでなく大人も夢中になれる工夫がされています。

回転寿司やファミレスも、子どもだけでなく大人も楽しめるメニューが揃っていますよね。特に食べ物は、そういうマーケティングをしているものが多いといわれます。

余談ですが、私は名古屋の出身で、名古屋人のソウルフードである「寿がきや」の味噌煮込みうどんが大好きです。たまに東京でも袋入りの乾麺が売られるので買いだめしておくのですが、その結果、名古屋では育っていないうちの娘も、気がついたら大好物になってしまいました。まさに世代も場所を超えて楽しんでいるわけですね。

お客が広がり、商品としての魅力も増す「ひと工夫」を

世代を超えて親しまれてきたものというのは、それだけ長く愛されているものであり、商品としては強いですよね。

今回取り上げた雑誌の付録や、クイズ番組のように、意識的に世代を超えて楽しめる要素を入れるのは、マーケティングの新しい手法の1つとして有効ではないかと感じています。

ぜひみなさんの商売でも、何かできることがないか考えてみてくださいね。

最後に、もうお分かりだと思いますが、冒頭のクイズの答えは「雑誌の付録になっている」でした。ちなみに、プロフィールのところにも入れてあるのですが、私は『パネルクイズ アタック25』で優勝したことがあります。最終回のチャンピオン大会の予選会には参加しませんでしたが、クイズ好きとしては、つくづく番組の終了は残念でなりません。


PROFILE
プロフィール写真

経営戦略コンサルタント
百年コンサルティング株式会社
代表取締役
鈴木貴博

東京大学工学部卒業後、ボストン・コンサルティング・グループに入社し、数々の大企業の戦略立案プロジェクトに従事。1999年にはネットイヤーグループの創業に取締役として参加。2003年に独立し、百年コンサルティングを創業する。大手企業の経営コンサルティング経験を元に2013年に出版した『戦略思考トレーニングシリーズ』(日本経済新聞出版社)が累計20万部を超えるベストセラーに。現在はビジネスをエンタメクイズ化する経済エンターテイナーとしても活動中。『パネルクイズ アタック25』(優勝)、『カルトQ』などのクイズ番組出演経験も豊富。近著に『戦略思考トレーニング 最強経済クイズ[精選版]』(日本経済新聞出版社)、『日本経済 予言の書 2020年代、不安な未来の読み解き方』『「AI失業」前夜―これから5年、職場で起きること』(ともにPHPビジネス新書)など。

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