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経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第105回・幕末ものの大河ドラマが長らくヒットしなかった理由

経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第105回・幕末ものの大河ドラマが長らくヒットしなかった理由

起業家、経営者にとって大事なのは、世の中を見抜く力です。1つの事象をどう捉えるかで、ものの見え方も、そこから得られる情報も大きく変わります。そうした「着眼点」、実はトレーニングによって鍛えることができるのです。累計20万部を超えるベストセラーとなった『戦略思考トレーニング』シリーズでおなじみの経営コンサルタント・鈴木貴博氏に解説してもらいましょう。

いきなりですが、クイズです!

NHKの大河ドラマには、かなり前から「1つの法則」があるといわれています。それは「戦国時代を扱うとヒットしやすいが、幕末ものは視聴率が伸びにくい」というものです。歴史好きの中に幕末ファンは非常に多いはずですが、ドラマにおいては苦戦しているようです。さて、その理由を考えてみましょう。

クイズの答えの中に、着眼点を鍛えるポイントがある

毎週日曜日に放送されるNHKの大河ドラマを楽しみにしている人も多いでしょう。約1年間の長丁場の放送ということで、どの時代のどんな人物にスポットが当たるかには注目が集まるところです。

さて、その大河ドラマでは、昔からいわれている面白い法則があります。それが「戦国時代を扱うとヒットしやすいが、幕末を扱うと視聴率が苦戦する」というものです。

幕末といえば日本の歴史における非常に大きな転換期であり、歴史好きの中でもファンが多いことで知られます。「この人物が好き」「この局面が好き」を語り始めたらとまらない人はたくさんいるでしょうし、経営者の中には、尊敬する人物として坂本龍馬や渋沢栄一、大久保利通といった幕末の主要人物の名前を挙げる人も多いはずです。

そんな幕末が大河ドラマで苦戦しているのは、不思議ですよね。実際のところ、1968年の『竜馬がゆく』は、大河ドラマの歴史において長いこと最低視聴率を記録していたのは事実なのです。

一体なぜでしょうか。今回はその理由を考えながら、ビジネスにおけるマーケットのあり方について考えてみたいと思います。

それでは解説します!

実は「戦国時代」と「幕末」という構造は、「週刊少年ジャンプ(集英社)」の人気漫画にも置き換えることができます。

●「戦国時代」=
『北斗の拳(武論尊(原作)・原哲夫(作画))』
『ドラゴンボール(鳥山明)』
『NARUTO(岸本斉史)』
『ONE PIECE(尾田栄一郎)※最初の頃の』

●「幕末」=
『HUNTER×HUNTER(冨樫義博)』
『DEATH NOTE(大場つぐみ(原作)・小畑健(作画))』
『ONE PIECE(尾田栄一郎)※最近の』

漫画にあまり詳しくない人でも、聞いたことがある作品ばかりだと思います。前者のグループが「戦国時代」に、後者が「幕末」に置き換えられるわけですが、さて、皆さんはどちらが好きですか?

もちろん好き嫌いはそれぞれだと思いますが、それぞれのグループは「ある共通項」で大きく括ることができます。それが今回の答えというわけです。

実は、前者は「バトルもの」で、後者は「頭脳戦を楽しむもの」です。

つまり、前者の戦国時代はスポーツに近い感覚で「戦い」に比重が置かれ、「トーナメントで勝ち上がった強い人が勝者である」というような分かりやすさがあります。一方の「幕末」は、未来をどのように考えて、それにどう当てはめていくのかを楽しむ頭脳バトルが物語を下支えします。

そうすると、バトルものは分かりやすさがゆえに全国民がマーケットになるのですが、頭脳戦はそれが好きな人、つまり「見る人を選ぶ」ことになります。

象徴的なのが、漫画の例としてあげた『ONE PIECE』です。「最初の頃」と「最近」で対比させたのには理由があります。『ONE PIECE』は現時点でコミックスが100巻に迫る大人気漫画ですが、一方で最近は話についていけなくなっている人が増えているともいわれています。それは、誤解を恐れずにいうと、最近は頭脳戦の比重が高くなっていて、全体像が掴みにくくなっており、しかも伏線がいっぱい貼られすぎていて読み進めていくことが難しいからです。

話を大河ドラマに戻すと、視聴率が低かった『竜馬がゆく』は、幕末の混乱と近代日本の扉が開くまさに時代の節目の物語を、坂本龍馬を主人公にリアルに説明しようとしたものです。しかし、幕末に興味がある視聴者にはしっかりと刺さったものの、そうでない人は難しくてついていけなかったのです。

工夫によってマーケットは作り出せる

さて、この法則は、最近は少しずつ変わり始めているようです。

そのきっかけとなった作品が、三谷幸喜が原作・脚本を手がけた「新撰組!」だといわれています。同じ幕末を舞台にしたものでも、アプローチを変えて「群像もの」として仕上げたのです。

近藤勇を香取慎吾、土方歳三を山本耕史、沖田総司を藤原竜也、山南敬助を堺雅人、芹沢鴨が佐藤浩市・・・というように、主要な登場人物にキャラが立つ人気役者を揃えることで若者群像ドラマにしたわけですね。それにより、歴史のことをよく知らない人にもアピールでき、結果として幕末ものの中でも高い視聴率を記録しました。

また、『篤姫』も同じく幕末が舞台ではありながら、主人公の目から見た幕末をラブストーリー的な仕立てで作り上げたことで、同じく高い視聴率を記録しました。私が実際にプロデューサーに取材をした際に「複雑な時代を分かりやすく、単純に描くことをすごく考えた」とおっしゃっていたので間違いありませんが、幕末ものは難しいという法則を打破するための作り手によるチャレンジがあったわけです。

つまり、「幕末という時代を頭脳戦で語ってはいけない」と気づいてからは、幕末ものでも視聴率が取れるようになったというわけですね。

これを戦略思考トレーニング的に言い換えるならば、「マーケットがありそうだと思われていたところには実はマーケットがなかった」ということと、でも「そこで工夫することによってきちんとマーケットを作り出すことに成功し、製品化できた」ということでしょう。

身近なところにいろいろなヒントがある

今回は、戦国時代と幕末、週刊少年ジャンプの人気漫画の例を出しながら、バトルものやスポーツはほぼほぼ全方位のマーケットがあり、頭脳ものは対象を選ぶという話をしてみました。

もちろん、全方位のマーケットがあることが全てではなく、選んだ対象だけにアプローチしていくのも1つの手段です。ただ、そこからより大きなマーケットにしていくためには、別のアプローチが必要になります。身近なものから、マーケットの大きさを考えるのは面白いですね。

最後に、もうお分かりだと思いますが、冒頭のクイズの答えは「バトルものである戦国時代は広いマーケットがあり、頭脳戦の幕末は見る人を選ぶから」でした。ちなみに、『鬼滅の刃(吾峠呼世晴)』は、私の考察だと「頭脳ワールドの話を料理する時に、頭脳戦に興味のない人たちでも興味がわくようなかたちにうまく仕立てることに成功した」のが人気の理由だったと考えています。この話は、また別の機会にお話ししたいと思います。


PROFILE
プロフィール写真

経営戦略コンサルタント
百年コンサルティング株式会社
代表取締役
鈴木貴博

東京大学工学部卒業後、ボストン・コンサルティング・グループに入社し、数々の大企業の戦略立案プロジェクトに従事。1999年にはネットイヤーグループの創業に取締役として参加。2003年に独立し、百年コンサルティングを創業する。大手企業の経営コンサルティング経験を元に2013年に出版した『戦略思考トレーニングシリーズ』(日本経済新聞出版社)が累計20万部を超えるベストセラーに。現在はビジネスをエンタメクイズ化する経済エンタテナーとしても活動中。『パネルクイズ アタック25』(優勝)、『カルトQ』などのクイズ番組出演経験も豊富。近著に『戦略思考トレーニング 最強経済クイズ[精選版]』(日本経済新聞出版社)、『日本経済 予言の書 2020年代、不安な未来の読み解き方』『「AI失業」前夜―これから5年、職場で起きること』(ともにPHPビジネス新書)など。

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