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ドミナント戦略のメリット・デメリットとは?事例から学ぶ注意点や成功のコツ

ドミナント戦略のメリット・デメリットとは?事例から学ぶ注意点や成功のコツ

ドミナント戦略とは、同じ地域に同じ看板を持つ店舗を集中出店することで、店舗を地域に浸透させる戦略です。ドミナント戦略が成功した地域には、競合他社は参入しづらくなります。

他社がすでに確固たる地位を築いている地域に参入しても、勝てる見込みが少ないからです。

本記事では、ドミナント戦略のメリットやデメリット、出店エリアの選び方について解説します。また、ドミナント戦略を軸に出店を進めているチェーンストアに、フランチャイズ加盟するときの注意点も紹介。

ドミナント戦略について理解し、フランチャイズ選びに失敗しないようにしましょう。

ドミナント戦略とは?

ドミナント戦略とは、1つのチェーンストアを、同じ地域に集中出店する経営戦略です。

ドミナント(dominant)を直訳すると、「支配的な」「最も有力な」となります。同じ地域に、同じ看板を持った店舗を集中出店するドミナント戦略は、まさに「1つの地域を、自分のチェーンストアで支配してしまおう」という戦略といえるでしょう。

確かにドミナント戦略は、成功すれば地域の顧客からのシェアを一手に集め、競合他社の入り込む余地をなくすこともできる戦略です。しかし、同じ地域への集中出店には、相応のリスクもあります。

次に、ドミナント戦略のメリットとデメリットを、それぞれ見ていきましょう。

ドミナント戦略のメリット

ドミナント戦略のメリットは、主に下記の3つです。

【ドミナント戦略のメリット】
・各種コストを抑えられる
・地域に浸透しやすい
・競合他社の参入を防げる

同じ地域に集中出店するドミナント戦略では、商品の配送コストや店舗の宣伝コストを抑えられます。店舗同士の距離が近く、より少ない移動距離で商品を配送できるため、最小限の時間と費用で商品の配送が可能です。

宣伝費の節約にも、ドミナント戦略は効果的です。例えば地域を絞った宣伝をする場合、同じ地域に10店舗がまとまっていても5店舗がまとまっていても、一度の宣伝にかかる費用は変わりません。ドミナント戦略なら、同じ一度の宣伝で、より多くの店舗が宣伝の効果を受けられるのです。

また、同じ地域に集中出店することで、チェーンストアの看板が地域の人の目に触れる機会が増えます。「単純接触効果」といって、人は同じ対象に繰り返し接触することで、対象への好感度を無意識に高めていきます。ドミナント戦略に成功したチェーンストアは、単純接触効果でも地域に深く浸透し、競合他社は参入しづらくなります。

ドミナント戦略のデメリット

ドミナント戦略のデメリットは、主に下記の3つです。

【ドミナント戦略のデメリット】
・災害や人口減少の影響が大きい
・需要の変化による影響が大きい
・同じチェーンで顧客を奪い合うことも

同じ地域に集中出店するドミナント戦略では、災害や人口減少の影響が大きいです。集中出店した地域に大規模な災害や人口減少が起きると、地域内全ての店舗が被害を受けてしまうリスクがあります。

また、人口は変わらなくても、地域の需要が変化することはあります。エリア内に大きなショッピングセンターができたり、競合店が出店したり、地域の需要は些細なことで変わります。需要の変化が良い方向に働くこともありますが、悪い方向に働けば、少なくなった需要を同じチェーンストアで奪い合うことになってしまうでしょう。

ドミナント戦略の成功事例

ドミナント戦略は、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの生活に欠かすことのできない店舗や、カフェのような日常的に利用頻度の高い店舗に適した戦略といえます。

ここからは、アメリカ最大手のスーパーマーケットチェーン・ウォルマートの事例と、ドミナント戦略を軸に店舗のブランディングを進めるカフェの事例を紹介します。

ドミナント戦略を軸に地域客を囲い込むウォルマート

アメリカ最大手のスーパーマーケットチェーン・ウォルマートも、ドミナント戦略を軸に出店を進め、成功を収めてきた企業です。

1962年に創業したウォルマートは、低価格で生活必需品を販売している店として、評判を集めてきました。いわゆる「薄利多売」ではなく、購入頻度の少ない商品までも低価格で販売することで、顧客満足度を高め続けてきたのです。

1960年代後半になると、ウォルマートはドミナント戦略に基づく出店をはじめました。物流センターを中心に集中出店し、発注を集中管理することで、配送や発注管理にかかるコストを削減。人口の少ない町を狙って出店することで、地域No1の座をほしいままにしたのです。

結果、2020年現在のウォルマートは、世界有数のスーパーマーケットチェーンとして誰もが名前を知る企業になりました。

ドミナント戦略を軸にブランディングを進めるカフェ

「ドミナント戦略=フランチャイズ」というイメージのある人は多いかもしれませんが、ドミナント戦略は直営・フランチャイズにかかわらず活用できる戦略です。

ドミナント戦略を軸に、出店を進めてきた国内の某カフェは、ほとんどが直営店です。

某社は、ある程度栄えている地域に出店エリアを絞り、まずは駅構内に自社のカフェを出店します。たとえ駅でカフェを利用しなくても、多くの人がほとんど毎日、店舗の看板や賑わいを目にするための仕組みです。

駅周辺にも、同じ看板のカフェを複数出店します。毎日、頻繁にカフェの様子を目にすることで、親近感が湧いてきます。実際に店舗を利用する機会があり、サービスや味が良ければ、親近感はさらに高まるでしょう。

同じ地域に集中的に出店することで、店舗自体が他店舗の宣伝役になるようにしているのです。ドミナント戦略は、配送やスーパーバイザーの巡回にかかるコストを下げながら店舗のブランディングを進める、効率的な出店計画といえます。

ドミナント戦略に基づく、出店エリアの選び方

ドミナント戦略において、出店エリアをどう選ぶかは、非常に重要です。

同じ地域に集中的に出店することには、出店に失敗した場合、地域の店舗全てが共倒れになってしまうというリスクがあります。

次に、ドミナント戦略における出店エリアの選び方と、ドミナント戦略でフランチャイズに参入するときの注意点を解説します。

ドミナント戦略に必要な、4つのエリア調査

ドミナント戦略で出店エリアを決める際は、下記の4項目を重視して、エリア調査を行いましょう。

【ドミナント戦略に必要な4つの調査項目】
・人口増減
・夜間と昼間の人口差
・競合調査
・需要特性

人口が減少傾向にある地域に集中出店しても、利益は見込みづらいでしょう。店舗を利用する人(=需要)は年々減っていくのに、店舗数(=供給)が増えていくことになります。減っていく需要を、同じチェーンストアで奪い合う可能性があります。
出店地域の人口に合わせた戦略設計が重要です。
夜間と昼間の人口差も重要です。例えば、昼間は人がほとんどいないベッドタウンに、カフェを出店したらどうなるでしょうか。店舗の開店に合わせて人がいなくなり、閉店に合わせて人が増える地域では、売り上げは見込めません。人の動きを分析し、出店場所を考える必要があります。

競合と需要特性の調査も重要です。出店しようとしている地域に、サービスの需要がある場合、競合他社がすでに浸透している可能性があります。競合他社が浸透している地域に同じ種類の店舗を出店するには、差別化を図るなどの工夫が必要になります。

ドミナント戦略で、フランチャイズに参入するときの注意点

ドミナント戦略を行っているチェーンストアに、フランチャイズで参入するときは、注意が必要です。競合他社ではなく、同じチェーンストアのほかのオーナー店舗とシェアを取り合うことになってしまうかもしれないからです。

チェーンストアを地域に浸透させ、出店エリアで確固たる地位を築くドミナント戦略は、フランチャイズに加盟する側にとって魅力的です。加盟前からチェーンストア自体にブランド力があるため、自分の店舗も成功する可能性が高いと感じられるからです。

しかし、自分が出店した近くにも、同じチェーンストアが増えていく可能性があります。競合他社だけではなく、同じチェーンストアが自店の周りに増えることで、自店の顧客が減ってしまうリスクがあります。

ドミナント戦略を軸に出店を進めているチェーンストアにフランチャイズ加盟するときは、将来的に自店の周りに同じチェーンストアが増えることも視野に入れて、慎重に考えましょう。

ドミナント戦略には、綿密なエリア調査が必要

ドミナント戦略には、綿密なエリア調査が必要です。エリア調査に基づき、出店エリアをどう選ぶかが、ドミナント戦略の成否をわけるといっても過言ではありません。

エリア調査では、人口の増減や競合他社の動向を調べ、顧客獲得の戦略を考える必要があります。人口が多くても、自社の需要に合った顧客が少なかったり、同じチェーンストアと顧客の奪い合いになったりするリスクも見極めましょう。

ご説明してきた通り、ドミナント戦略にはメリットだけでなく、デメリットも多くあります。特に、ドミナント戦略を軸にしているチェーンストアに、フランチャイズ加盟するときは注意が必要です。本部の出店計画やエリア調査なども加盟前にしっかり確認するようにしましょう。

ドミナント戦略での出店エリアの選び方について、もっと詳しく知りたい方は、下記の記事もお読みください。

内部リンク:経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第2回 開業場所は「街の性格」で決める

https://entrenet.jp/magazine/6850/

PROFILE

赤塚 元基

新潟県新潟市在住のフリーライター。
SaaSなどのIT系、投資やベンチャー企業の動向、オウンドメディアなどビジネス系を主に執筆。

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