スタイルのある生き方へシフトしたいビジネスパーソンのためのニュース・コラムサイト。
検索
独立ノウハウ・お役立ち

自営業(個人事業)の会社を相続するにはどうすればいい?

自営業(個人事業)の会社を相続するにはどうすればいい?

親が自営業をしているという方は意外と多いのではないでしょうか。

しかし、どういう組織で自営業を行っているか詳しく知っている方となると、数は少し減るでしょう。

また、今回取り上げる個人事業主では、屋号という本名以外のお店の名前などをもって自営業をしている方が多いです。

この屋号は会社名のように登記をすることはなく、商標などの縛りがある場合を除いて自由につけることができます。

今回は個人事業主をしていた事業の相続について説明いたします。

自営業者=個人事業主ではない

何かの申し込みやアンケートなどで、自営業者というくくりを目にすることがあります。

この自営業とは“自分で事業をしている”という意味で、会社組織になっているかどうかは関係ない場合が多いです。

また、上記したように個人事業主でも屋号を使うことが多いので、違いに気が付かなかったということもあるでしょう。

法的な違い

会社は登記をすることで「法人格」という法律的な人格を持つことができます。これに対して、個人事業主の人格は事業主本人だけです。

会社は株主の出資により設立されるため、自営業者である社長だけが出資者であり、ほかに株主がいない場合が多いです。

また、株式会社や合同会社は出資した額を限度として会社の債務をそれ以上は負わない有限責任なのに対し、個人事業主は本人しかいないため無限に責任を負います。

税法上の違い

会社はすべての収益と損金の差額の利益に対して法人税などがかかるのに対し、個人事業主は所得税が課税されます。

所得の種類によって計算を分けることとなり、所得間の相殺(損益通算)ができない所得があるほか、譲渡所得や利子所得のようにほかの所得と合算せずに税率が一律なものもあります。

今回取り上げている個人事業主の主な所得は、事業所得や不動産所得に分類されることが多いと思います。

個人事業主の相続

まず、個人事業をしていた方が亡くなった場合には、亡くなった日までの準確定申告を提出し納税をしなければなりません。

消費税の課税事業者だった場合には消費税の申告書の提出と納税も必要です。

生前、複式簿記により書類の作成をしていた場合には、どの銀行に口座をもっていたか・売掛金や買掛金がどうなっているかなど記載があるはずなので、相続の手続きを進める上でも大変有用になります。

遺族はどんな事業をしていたかまで知らないケースが多く、そうするとなかなか大変です。

せめて日ごろから書類・通帳・過去の申告書がある場所や確認をしておいた方がいいでしょう。

準確定申告を提出し、納税が終わったら相続の手続きに入ります。

事業関係の債権や負債を含めた財産と債務を相続することになります。

ただし、事業に係る不動産は評価の特例もあり、有利な評価になることもあります。

準確定申告時に納税した税金

債務として控除することが可能です。

現金や預金

事業に関係あるものかどうかは関係なく、亡くなった日の残高が相続財産になります。屋号のついた普通預金も同様です。

売掛金や未収入金

亡くなった日の残高が相続財産になります。亡くなった日より後に入金になったものは相続とは直接関係ありません。

事業で使用していた車

亡くなった日の時価で評価します。

不動産

事業をしていたかどうかに関係なく、まずは路線価などを使って評価します。

その後で不動産を貸している場合の評価を行い、小規模宅地の評価減の特例を使える場合には減額します。

不動産賃貸にかかわる事業をしている場合には、この評価減が使えるところがポイントです。

債務

事業をしていた場合には、事業にかかわる債務も含めて計算することになります。所得税や買掛金など亡くなった日時点で存在していた“払わなければならないもの”は債務として財産から控除します。

事業を継続する場合には法人成りも視野に

生前に行っていた個人事業を亡くなった後に引き継いでいく場合には、個人事業から法人へ組織を変更することも検討してみましょう。

法人の場合、代表取締役が亡くなったら別の人が代表取締役に就任することで形式的には存続が可能です。

相続に関係があるのは、株式と会社との間の債権や債務です。遺族に事業を引き継ぐ意思がない場合には会社の売却も可能です。

従業員がいる場合には会社の存続は大きな安心となるでしょう。

個人から法人への事業の引き継ぎはそれほど難しくはありません。法人を設立したら売掛金や買掛金などの会社への引き継ぎをして、取引先へは法人成りした旨を連絡をする流れになります。

法人設立後に株式を第三者へ売却することも可能ですが、例えば個人事業時代から働いていた方が株式をもったまま代表取締役に就任することも可能です。

遺族が株主として、もしくは社外取締役として会社の運営にかかわっていくこともできます。

まとめ

個人事業の場合には事業主の自由がききやすいというメリットはあるものの、相続時の手間がかかり、相続人が事業にかかわっていない場合には準確定申告時から専門家の知識が必須になります。

相続時に廃業してしまう場合には法人より個人事業の方が圧倒的に簡単ですが、事業存続を考える場合には相続財産や債務の確定も手間がかかるため法人の方が対外的な説明も楽で信用度も高いでしょう。

どちらにしても、事業のことにかかわらず生前中から財産や債務について聞いておくことは大切です。

PROFILE

税理士 須栗 一浩

税理士法人エムエスオフィス 代表税理士
平成7年税理士登録・開業。平成27年より税理士法人へ合流。現在に至る。会社税務から個人の確定申告、相続税に至るまで活動範囲は広い。固くない、いつでも話せる税理士としてクライアントからの信頼は厚い。

開業資金を抑えて起業したいという方は開業書類作成ツールの利用も検討してみてはいかがでしょうか。

アントレ 独立、開業、起業をご検討のみなさまへ

アントレは、これから独立を目指している方に、フランチャイズや代理店の募集情報をはじめ、
さまざまな情報と機会を提供する日本最大級の独立・開業・起業・フランチャイズ・代理店募集情報サイトです。