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経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第77回・思いがけず伸びたビジネス

経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第77回・思いがけず伸びたビジネス

起業家、経営者にとって大事なのは、世の中を見抜く力です。1つの事象をどう捉えるかで、ものの見え方も、そこから得られる情報も大きく変わります。そうした「着眼点」、実はトレーニングによって鍛えることができるのです。累計20万部を超えるベストセラーとなった『戦略思考トレーニング』シリーズでおなじみの経営コンサルタント・鈴木貴博氏に解説してもらいましょう。

いきなりですが、クイズです!

以前この連載でアメリカの小売業「ウォルマート」が伸びている話をしましたが、最近は、そのウォルマートが導入して人気となっているサービスがアメリカで話題となっています。新型コロナウイルスの影響で注目されているそのサービスとは、アルファベット5文字で何と呼ばれているでしょうか。

クイズの答えの中に、着眼点を鍛えるポイントがある

世界最大の小売業といわれるウォルマート。その株価が、コロナ直後の消費者による「商品買い占め」騒動による影響で上がったという話は以前紹介しました。

そのウォルマートが始めた「新しいサービス」についても、コロナショックで売り上げが伸びると注目が集まっているようです。

正確にいうと、ウォルマートは新型コロナウイルスとは関係なく以前からそのサービスを導入していました。騒動を機にサービスに注目が集まることとなり、「これは便利だ」と多くの利用客に支持されることになったというのです。

今回は、新型コロナウイルスの騒動によって「思わぬ形で成長したビジネス」の話をしていきましょう。

それでは解説します!

日本では「密」な状態を作らないように入場を制限するお店がたくさんあります。お店によっては「一度手にとった商品は棚に戻してはいけない」など、いろんな方法で感染対策がとられています。

そしてそれは日本に限らず、感染者数がもっと多いアメリカでも当たり前のように行われています。

そんな中で注目されたのが、「BOPIS」というビジネスです。「Buy Online Pick-up In Store」の頭文字をとってそう呼ばれているのですが、簡単にいうと「ECサイトで購入した商品をお店で受け取るサービス」のことです。

利用者はお店のECサイトでオーダーを済ませたら、あとは店舗の外に設置されたロッカーから商品を自分でピックアップするだけ。通販のように送料はかかりませんし、ピックアップのついでに他の買い物をすることもできます。

このサービスが、人との接触を避けなくてはいけないこの事態にピタリとはまったわけですね。買い物をするのに混雑する店内に入らなくてもよく、人との接触なしに必要な買い物を済ますことができます。

昨年あたりからいろいろな企業が導入を進めていたようですが、その背景にあるのはアマゾンへの対抗です。あらゆるビジネスのオンライン化が進むご時世ですが、実は「食品」だけはネット販売の割合が低く、アマゾンでさえ取り扱い品目の中での割合は低いといわれます。ウォルマートもそこに着目し、食品分野でアマゾンに勝とうと考えてBOPISを導入したというわけですね。

結果、コロナ以降の食品分野におけるインターネット通販の新規顧客は、圧倒的にウォルマートに流れているのだとか。便利がゆえに、このまま時流に乗って主流なサービスの1つになっていくと期待されており、まさに「コロナショックを味方につけて成長したビジネス」といえそうです。

ただ、逆に考えると、コロナショックがなければ「便利な通販サービスの1つ」程度で終わっていた可能性もありますし、ここまで注目されなかったかもしれません。そう考えると何が功を奏するかは本当に分からないものですね。

人々の慣習や意識が変われば、そこに新たなチャンスができる

間違いなくいえるのは、今回のコロナショックをきっかけに、いろんな慣習が変わる可能性があるということです。

例えば、テレワークを導入する企業が増えたことで、「Zoom」のようなツールを使ったオンラインミーティングが一気に普及しました。

今までは「特別な設備がないとオンラインミーティングなんてできない」と多くの人が思っていたのに、実はすでに持っているスマホでも簡単にできてしまったわけです。それだけでも、人々の意識に変化が起こっているはずです。「オンライン飲み会」も同じで、今まではそんなことをしようとは思わなかったですよね。

自粛生活中にオンラインショップでものを購入した人も多いと思いますが、コロナショックの影響が長引いていることで、グローバルなサプライチェーンが壊れ始めてきています。少しずついろいろなところで品不足が起こり始めていて、もしかするともうしばらく続くかもしれません。

そうなると1つ考えられるのは、人々の「ブランド志向の変化」です。つまり「これしか買わない・使わない」と決めていた人が、やむを得ず別の商品を使い、「意外といいなあ」などと思うようになるかもしれません。

企業にとってブランド投資はすごく重要で、そこに注力してきたのは間違いありません。しかし、コロナショックを境にそこが根底から変わってしまう可能性があるのです。

他にも、ここにきてキャッシュレスが一気に普及しましたよね。「ポイント還元されてお得」みたいなそれまでに打ち出されていた戦略とは関係なく、人と接触しない、物理的にお金を介さない、という理由で使う人が増えたわけですが、これも後々を考えると間違いなく大きな変化の1つといえそうです。マイバッグを使う人が増えたのも同じですよね。

こうした日常のちょっとしたことも含めて、今回の騒動を機に人々の意識は間違いなく変わってきているのです。

思いもよらなかったことが新たなビジネスになるかも!?

今、私たちは大きな変化の真っ只中にいて、変化が起こるときは実は新たなビジネスのチャンスが生まれるときでもあります。

コロナショックが終わった後の世の中がどう変化するのかを発想してみるだけで、実は今までは思いもよらなかったような新たなビジネスが生み出せるかもしれません。ぜひ、いろいろなところに目を向けたり、あらゆる可能性について考えてみてくださいね。

最後に、もうお分かりだと思いますが、冒頭のクイズの答えは「BOPIS」でした。BOPISは今後日本でも普及する可能性のあるサービスですので、ぜひ注目しておいてくださいね。


PROFILE
プロフィール写真

経営戦略コンサルタント
百年コンサルティング株式会社
代表取締役
鈴木貴博

東京大学工学部卒業後、ボストン・コンサルティング・グループに入社し、数々の大企業の戦略立案プロジェクトに従事。1999年にはネットイヤーグループの創業に取締役として参加。2003年に独立し、百年コンサルティングを創業する。大手企業の経営コンサルティング経験を元に2013年に出版した『戦略思考トレーニングシリーズ』(日本経済新聞出版社)が累計20万部を超えるベストセラーに。現在はビジネスをエンタメクイズ化する経済エンタテナーとしても活動中。『パネルクイズ アタック25』(優勝)、『カルトQ』などのクイズ番組出演経験も豊富。近著に『戦略思考トレーニング 最強経済クイズ[精選版]』(日本経済新聞出版社)、『「AI失業」前夜―これから5年、職場で起きること』(PHPビジネス新書)、『令和を君はどう生きるか』(悟空出版)。

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