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株式譲渡と第三者割当増資の違いを比較!どちらがおすすめ?

株式譲渡と第三者割当増資の違いを比較!どちらがおすすめ?

M&Aでよく耳にする手法として株式譲渡と第三者割当増資が挙げられます。

今回は、両手法を概説し比較した上で、よく使われるケースについて解説します。

株式譲渡とは

株式譲渡とは文字通り、株式を譲渡すること、もっと平たくいうと第三者に株式を売却することです。

株主はその対価として、金銭(金銭以外の場合もありますが、ここでは単純化のため割愛)を得ることになります。

原則として、株主が代わる以外に大きな影響はありません。

そのため、事業承継によく使われていますが、非公開会社(=株式譲渡制限がある会社)の場合は会社法に定められた一定の手続きを踏む必要があります。

第三者割当増資とは

特定の第三者に新しく株式を発行して(自己株式、つまり会社が自身で保有している株式の場合もありますが単純化のため割愛)引き受けてもらうことをいいます。

“第三者”という表現ですが、引受先が既存株主であるか否かは問いません。

会社はその対価として金銭を取得し株主資本が充実します。

第三者割当増資を行うと既存株主の持株比率が低下(希薄化)するため、発行手続きは会社法により詳細に決められています。

ここでは、その手続きを“非上場会社、非公開会社かつ取締役会設置会社”であるという前提で概説します。

1.募集要項の決定と通知

会社は

・募集株式の数
・募集株式の払込金額またはその算定方法
・払込期日または払込期間
・増加資本金および資本準備金

などの主な項目を決めて、引受先へ申し込みの通知を行います。

非公開会社の場合、募集事項の決定には株主総会の特別決議が必要です。

“募集株式の数”を決定する時には発行可能株式数に留意しないといけません。

発行可能な新規の株式数=発行可能株式数-発行済みの株式数 となります。

2.募集株式の申し込み

引受先は、必要な情報[住所・氏名(会社の場合は商号)・引受株式数等]が記載された申込書を申込期日までに提出します。

3.割り当ての決定・通知

申込期間終了後、会社は取締役会決議により募集株式を割り当てる先と新株発行数を決定し、通知します。

ここでのポイントは、“取締役会決議で決定されてしまう”ということです。

経営者は自主的に、あらかじめ既存株主に情報を共有しておいて了解を得るほうが無難でしょう。

4.出資金の支払い

割り当てを受けた者は、募集事項によって決められた払込期日(または払込期間中)に払い込みを実施します。

期日・期間を過ぎてしまうと株主となる権利を失います。

5.登記申請

会社は払込期間の末日から2週間以内に、資本金額や発行株式数などを変更登記申請書に記載し、法務局に提出して登記変更を行います。

この際、登録免許税として、増資額の1,000分の7の金額(合計が3万円未満の場合は3万円)が必要になります。
※総数引受契約という方法を使用すれば上記手続きに必要な期間を大幅に短縮できますが、ここでは割愛いたします。

株式譲渡と第三者割当増資の違い

最も大きな違いは“誰が対価を受け取るか”です。

株式譲渡を行う場合、株式を譲渡した元株主が対価を受け取りますが、第三者割当増資の場合は会社が対価を受け取ります。

次に、株式譲渡では100%の株式取得(譲渡)が可能ですが、第三者割当増資だと既存株主の希薄化はするものの、持株数はそのままであるため“100%取得”はできません。

株式譲渡と第三者割当増資がよく使われるケースとは

株式譲渡は上述したとおり基本的に“株主以外はそのまま”であるため、既にキャッシュフローが安定している成熟企業などの事業承継に向いています。

創業株主であれば、株式売却による創業者利得の実現(現金化)が可能ですし、取引先や従業員も“変わるのは株主だけ”と、安心して勤務を継続できる心理的な効果も期待できます。

一方で、第三者割当増資は会社が対価を受け取ることを背景として、株式譲渡とは異なる局面で利用されることが多いです。

例えば、私は未上場会社(スタートアップ)のCFOを務めていますが、スタートアップが成長資金を確保する手法としては一般的です。

資金だけでなく、新たな株主の参画により有形無形のシナジー(相乗効果)も期待できます。

また、私は過去、財務アドバイザリー業務に従事していましたが、上場会社の業務資本提携や再建(資本注入)の一環として第三者割当増資を活用する事例は少なくありません。

さらに、ケースとしてはそこまで多くありませんが、上場会社で“招かれざる株主”に一定の持分を持たれた場合、その株主の持株比率低下を狙い、買収防衛策として第三者割当増資を行う事例もあります。

このような事態になる前に、安定株主作りの一環として行う事例もありました。

まとめ

株式譲渡と第三者割当増資はそれぞれまったく違う手法のため、特徴と手続きを把握した上で自社にとって適した手法を選択してください。

なお、両手法は組み合わせて使うことも可能です。

PROFILE

坂本 隆宣

国内証券会社、外資系投資銀行にて主にクロスボーダー・大型取引のM&Aアドバイザリーに従事後、コンサルティング会社にて資本政策アドバイザリーチームを立ち上げ。現在はFinTechスタートアップであるクラウドクレジット㈱にて取締役CFOを務める。

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