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株式を自社の社員に譲渡する際の注意点と、第三者に譲渡した場合の社員の扱い

株式を自社の社員に譲渡する際の注意点と、第三者に譲渡した場合の社員の扱い

株式譲渡は中小企業のM&Aにおける一般的な手法です。

通常、会社対会社の取引になりますが、最近の中小企業のM&Aでは後継者不足などの理由から、事業継承や福利厚生を目的として自社の社員(従業員)に株式を譲渡するケースが増えています。

今回は社員に株式を譲渡する際の注意点と、第三者に株式譲渡した場合の社員の扱いについて解説します。

自社の社員への株式譲渡を検討する理由とは

1.後継者不足

高齢により引退を考える経営者が、自分が発展させた会社の存続を考え「会社を任せられる・信頼できる」人材に、後継者として自社の事業を承継しようとするケースがあります。

その後継者には、これまで一緒に働いてきた社員が選ばれることが多いようです。

2.安定した株主の確保

会社のTOB(株式公開買い付け)などで敵対的な株主が現れることがあるので、対策として社員を安定した株主として確保し、市場の株式を少なくする狙いがあります。

3.社員のモチベーション向上を図る

おもに中小企業では、“会社経営への一体感”や“会社の業績向上への意識向上”などを期待して、社員に株式を譲渡することがあります。

4.社員の福利厚生

福利厚生の一環として、株式を譲渡してモチベーションの向上を図るケースがあります。

自社の社員に株式譲渡を行うには

1.社員(役員)に報酬として渡す

2016年に経済産業省より、特定譲渡制限付株式(リストリクテッド・ストック)に関する手引きが発表され、社員(主に役員)に報酬として株式を直接譲渡することが簡潔になりました。

2.持株制度で譲渡する

多くの上場企業や未上場企業では「従業員持株制度」を採用しています。

これは、社員を会員にすえ給与天引きなどの方法で毎月一定の金額を出資させ、共同で自社の株式を買い付けるという仕組みです。

社員が「持株会」を通じて持ち分に応じた配当金を得ることができるため、福利厚生の一環として位置づけられます。

3.社員への売却・贈与

現経営者が所有している株式を、後継者となる社員から対価を貰って売却します。

しかし、後継者の資金が不足しているなどの場合は、贈与・遺贈するケースもあります。

第三者に株式を譲渡した場合、自社の社員はどうなる?

会社の経営を企業である第三者に渡す目的での株式譲渡では、経営者が変わるため、自社の社員にもメリットとデメリットがあります。

メリット

1.雇用の継続を図ることができる

第三者に譲渡しなければ廃業していたというようなケースでは、株式譲渡を行わなければ自社の社員が解雇になっていた可能性もあります。

第三者への株式譲渡を選択した場合、ほとんどの譲受企業は社員の雇用を継続します。

2.新たなチャンスが広がる

経営が順調な企業に譲渡されると、昇給・昇進などの雇用条件の向上や事業内容の変更により自社の社員の業務やキャリアの幅が広がり、新しいチャンスが生まれる可能性が高まります。

3.モチベーションの向上につながる

社員が現在の職場で上司・同僚との人間関係に悩んでいる場合、株式譲渡により同僚・上司の移動や譲渡先の企業文化で職場環境が変化し、モチベーションの向上につながる可能性があります。

デメリット

1.モチベーションの低下につながる

譲受企業との企業文化の違いにより新しい同僚・上司との人間関係がうまくいかなかった場合、社員のモチベーション低下につながります。

異なる企業文化にいた社員同士が一緒に働くと、簡単な事務処理一つをとっても「これまでのうちのやり方とは違う」と感じるシーンが自然と発生するものです。

したがって、社員が業務をやりやすくなるように業務ルールをあらためて周知するなどの対策が必要になります。

2.処遇の悪化

通常、譲受企業は譲渡企業より規模が大きいことが多いため、社員にとっては現状より仕事量が増えることが考えられます。

また、今まで行っていた業務より多くの業務をこなすようになる、業務の質やレベルが変わり処遇が悪化する、といったことが考えられます。

特に、譲受側社員と譲渡側社員間で給与に差が出る可能性が生じることには注意が必要です。

3.大量退職者が発生する可能性

第三者への株式譲渡の場合、企業文化の違う社員同士が多くの場面で交わることになります。

労災事故や労働問題などのトラブルが出たりすれば、職場への不安を感じて、結果として大量退職者が生じるケースが考えられます。

まとめ

社員への株式譲渡は社員のモチベーションアップに効果が期待でき、今までの社風を継承していくことも見込めます。

一方、第三者への株式譲渡は社員にとってメリット・デメリットがあり、必ずしも良い点ばかりとは限りませんが、会社にとってはシナジー効果や事業基盤の強化が見込め、成長するきっかけとなる可能性が大いにあります。

ただ、いずれの場合も法的な知識や専門知識が必須となるので、具体的には弁護士や司法書士などの専門家とともに進めていくことをおすすめします。

PROFILE

善木 誠

岡山県岡山市在住でビジネスコンサルタント(株式会社スコーレメディア代表)として小規模事業者向けの経営コンサルタントをしています。
[資格]働き方改革マスター、個人情報保護審査員、経営士

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