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無償で事業譲渡した際に発生する税金と行う際に気を付けるべき点とは

無償で事業譲渡した際に発生する税金と行う際に気を付けるべき点とは

近年、事業譲渡という言葉を聞く機会が増えてきました。

この事業譲渡は、社会状況の変化により要望が高まり、国も後押しをする形で推進されています。

会社拡張の結果による不採算部門の切り離しや、後継者不足が主な理由です。

不採算部門の切り離しの例はニュースにもなっているように、大手電機メーカーが不採算部門を切り離して売却し、再建をはかっているケースが挙げられます。

後継者不足の例には、中小企業の事業譲渡があります。

日本は、企業数のうち99%以上、全従業員のうちでも69%が中小企業(2018年時点)の従業員という、まさに中小企業で成り立っている国です。

最近では、中小企業が資金的な事情や人手不足により後継者を見つけることが困難になっていることが多く、この先、大きな問題になってくることは間違いありません。

そのような後継者がいない会社を、事業を引き継ぎたい会社などへ売却し、雇用や技術・負債が引き継がれることで問題を解消しようというものです。

事業譲渡とは

では、事業譲渡とは一体なんのことなのでしょうか。

事業譲渡には、会社の株式を売却し会社ごと受託者へ渡す方法があります。

ほかにも、会社ごと渡すのではなく部門を切り離して売却するケースや、技術のみを売却するケースも見られます。

これらをあわせて事業譲渡と呼ぶのです。

今回は、主に中小企業が対象になる事業の“無償譲渡”と“株式を無償で譲渡するケース”について説明します。

無償で事業譲渡をする際に発生する税金(課税)とは

企業はなぜ無償で事業を譲渡するのでしょうか。

株の価値が大きく、現金に換価することも可能な会社の場合、株主は会社を解散してしまって現金化をしてしまう方法をとるでしょう。

それでも無償で譲渡をするケースで考えられるのは、親族間での事業の引き継ぎです。

ここで問題になるのは、価値があるものを無償で譲渡してしまうと税金が大きくかかってしまうことです。

無償譲渡にかかわる税金は、登記のための税金を除くと、所得税・贈与税・法人税のいずれかです。

これらのうち、どの税金がかかるかは、課税される側が個人か・法人か、また、株式の移転が個人からか・法人からかによって決まります。

つまり、無償の事業譲渡の組み合わせは、

①旧株主が個人→新株主が個人
②個人→法人
③法人→個人
④法人→法人

のいずれかになるのです。

①旧株主が個人→新株主が個人

両者とも個人なため、譲渡した側は所得税、譲渡された側には贈与税が課税されます。

譲渡する側は無償であるため所得(利益)は発生せず、所得税の課税はありません。

譲渡された側へは贈与税が課税され、基本的には財産評価基本通達に基づいて計算した株の価額をもとに贈与税を計算します。

贈与税は税額が高額になりやすいのが特徴です。

②旧株主が個人→新株主が法人

譲渡した個人は、株式を譲渡したものとして所得税(譲渡所得)が課税されます。

株式の時価を売却価額として、出資額などの原価や譲渡のためにかかった費用を差し引いた利益が課税対象になります。

譲渡された法人側は時価をもって譲り受けたとして利益を計上し、決算時に通常の利益と合算して法人税が課税されます。

③旧株主が法人→新株主が個人

少し複雑です。譲渡した側の法人は資産が減少し、その額の法人税上の扱いは、譲渡された側との関係によって変わります。

経費は経費なのですが、法人税の計算上で損金(課税利益の減少)になるもの・損金にならないもの・一部が損金になるものなどさまざまです。

また、譲渡された側には所得税が課税されますが、相手側の法人税上の扱いに従って、所得・退職所得・一時所得となります。

④旧株主が法人→新株主が法人

譲渡した側は③と同様、譲渡された側は②と同じ扱いです。

はじめのほうで触れた親族間の事業譲渡は①(旧株主が個人→新株主が個人)のケースが多いと考えられます。

せっかく事業を継続しようとしても、譲渡される側に高額な贈与税が課税されてしまっては、事業譲渡が現実的には難しくなってしまいます。

そこで、事業譲渡(事業承継税制)にかかわる贈与税の課税を猶予する制度を利用できます。

これは、譲渡され事業を引き継いだ後に一定の条件を満たしている場合には、贈与税の課税を引き継ぎ時にしない(課税の猶予)というものです。

条件を満たしているうちは贈与税の課税は猶予され、最終的には免除されます。

この税制は無償譲渡を推進するために二度改正され、現在は比較的容易に適用できるものになってきました。

無償で事業譲渡を行う流れ

最後に、株式を譲渡する際の手続きについて説明しましょう。

まず、株式譲渡契約書を作成します。記載が必須なのは、譲渡日・譲渡金額(今回の場合は無償)・譲渡する側/譲渡される側の氏名・住所です。

また、譲渡対象会社の定款に「株式の譲渡制限」の項目がある場合には、譲渡対象会社の株主総会や取締役会への申請が必要なため、契約書上で「譲渡された後に第三者へ譲渡しない」などの記載をしなければなりません。

次に、譲渡する側は、譲渡対象会社へ株式の譲渡承認申請をします。

譲渡対象会社は、申請を株主総会や取締役会の決議にかけ、承認することで譲渡が可能になります。

これをもって、無償譲渡契約は成立です。譲渡対象会社では株主名簿の株主名を書き換えます。

以上で株式譲渡の手続きは完了です。

まとめ

中小企業の事業譲渡はこれからの日本に必須であり、中でも事業継続を目的とした無償譲渡はとても重要です。

ただし、これには税金を検討することが重要で、しっかりとした計画の下で進めていかないと多額の課税を受けることになってしまいます。

しっかりとした計画を立て、トラブルにならないような契約を結ぶことが重要です。

PROFILE

須栗 一浩

税理士
税理士法人エムエスオフィス 代表税理士
平成7年税理士登録・開業。平成27年より税理士法人へ合流。現在に至る。会社税務から個人の確定申告、相続税に至るまで活動範囲は広い。固くない、いつでも話せる税理士としてクライアントからの信頼は厚い。

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