起業家、経営者にとって大事なのは、世の中を見抜く力です。1つの事象をどう捉えるかで、ものの見え方も、そこから得られる情報も大きく変わります。そうした「着眼点」、実はトレーニングによって鍛えることができるのです。累計20万部を超えるベストセラーとなった『戦略思考トレーニング』シリーズでおなじみの経営コンサルタント・鈴木貴博氏に解説してもらいましょう。
経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第67回・うず高く積み上がるゴミ
いきなりですが、クイズです!
クイズの答えの中に、着眼点を鍛えるポイントがある
新宿・歌舞伎町でここ最近人気なのが、本場中国仕様の火鍋店です。
お客の多くは中国人ですが、日本人を拒む雰囲気は特にありません。中国に行ったことがある人なら、エレベーターを降りた瞬間に「これは中国で見た光景だ」と思うでしょう。お店の雰囲気も接客の仕方も、実にそんな感じなのです。
話は変わって、ここ最近、池袋に中華料理店が急激に増えています。中華といえば横浜の中華街を思い浮かべる人が多いでしょうが、池袋がそのポジションを奪いかねないくらい、一気にチャイナタウン化が進んでいます。
お店の多くは、メニューが中国語で書かれていて、店員さんは日本語が苦手な中国人ばかり。日本の中華料理店で人気の天津飯などは間違っても置いてなく、中国人の知り合いを連れて行かないと何を食べたらいいのかわからないような雰囲気があります。
この2つの事象を、ブームと見るか、トレンドと見るか。今回は2択の問題ですが、できれば理由も合わせて考えてみてくださいね。
それでは解説します!
まず、ブームとトレンドはどう違うのでしょうか。
簡単にいうと、トレンドを支えているのは「人口が根雪のように多くなったかどうか」です。逆にいえば、ブームとは支えるものが弱いため、結果的に一過性で終わってしまいます。
2019年を振り返ると、タピオカが非常に人気となりましたが、あれはまさにブームでしょう。人気を支えていたのは根雪のように集まった人々の思いではなく、「インスタ映え」だったからです。一時的には盛り上がっても、定着するまでには至りませんでした。
その観点でいえば、今、歌舞伎町や池袋で起こっている中華料理人気は、間違いなくトレンドです。支えているのは「たくさんの中国人たち」だからです。
今後、国内の中国人労働者は確実に増え続けるでしょう。これは国の政策ですから間違いありません。また、訪日外国人は現在も着々と増えています。国は訪日外国人の目標数を2020年に4,000万人、2030年には6,000万人と掲げているくらいですから、今後も増えることは容易に想像できます。
その中でも、「爆買い」を好む中国からの旅行者は、当然、後を絶たないでしょう。
分かれ道は「その先に起こること」が想像できるかどうか
国内の中国人が増え、中国人コミュニティが本格的に立ち上がり始めるとどうなるか。
人気観光地である新宿の歌舞伎町は、今以上に中国人好みのお店ばかりになるだろうと予測できます。また、中国人が多く集まっている池袋のような場所は、さらにその規模を拡大していくに違いありません。
今はまさにその「兆し」であり、「何やら変わってきたな」というのが見え始めた段階なのかもしれません。
こうした何か小さな変化があった時、その先に起こることを考えると、ビジネスの発想は間違いなく広がります。
今回の話でいうと、日本に来る中国人が増え始め、中国人コミュニティが国内で拡大することで、都心の繁華街が中華街のように発展し、池袋が一大中華拠点となり、中国人御用達のようなお店が増える…という流れまでを想定できるかがポイントです。
想定できた場合、じゃあその中でどのようなビジネスのチャンスがありそうか、自分が入り込めそうなところはどこなのかを想像してみる。それがまさしく「トレンドに乗った商売」というわけですね。
トレンドを見極める力を鍛えよう
商売をしていると、何かが人気になった時に「その人気に乗るべきか・乗らないか」を考えなくてはいけない時があります。しかし、普段からブームとトレンドを見分ける習慣づけをしておけば、いちいち悩まなくてもいいわけです。
一過性のブームとトレンドを見極めていく目をいかに持つかは、ビジネスをする上では非常に重要ですので、世の中の出来事に積極的に目を向け、考える習慣を作ってみてくださいね。
最後に、もうお分かりだと思いますが、冒頭のクイズの答えは「トレンド」でした。ちなみに、「激辛ブーム」というのがありましたが、あれはブームといっておきながら定着し、トレンドになりつつあります。最初はエクストリームな味がほしいと始まったものですが、そのうちに若い人たちの味覚が破壊され、定着してしまいました。何とも残念な話です。
経営戦略コンサルタント
百年コンサルティング株式会社
代表取締役
鈴木貴博