“新設分割計画書”という名称をご存知でしょうか?
会社分割の方法の一つに新設分割というものがあります。新設分割計画書とは、新設分割を行うために必要な書類であり、会社法によって記載内容などが定められています。
M&Aなどで事業規模を広げたり、買収した会社とのシナジー効果を出したりするために、事業の統廃合は重要です。今回は、新設分割計画書の作成方法や記載項目、作成時の注意点などを解説していきます。
新設分割の概要
新設分割とは、会社分割の方法の一つで、新しい会社を設立したうえで、その新会社に対して、1社もしくは2社以上の会社から事業を移管することを指します。
一方で、既に存在している会社に事業を移管する方法を吸収分割と呼びます。
自社の事業を他社に売却するときなどは吸収分割が用いられることが多く、2社以上の会社の事業を統合するときなどには新設分割が用いられることが多いです。
事業を移管するといっても、ただ宣言すれば良いものではありません。事業が行われていれば、そこには契約や債権、債務といったものも存在します。分割においては、事業に関するものをすべて承継させなければ、取引先は保護されません。したがって、分割に関する手順が会社法において厳格に定められています。
新設分割計画書とはどういったものか?
新設分割の手順の中で最初に行うのが新設分割計画書です。この計画書によって、取引先、債権者などは新設分割の中身を知ることができます。もし反対であれば異議を申し立てすることが可能です。内容に問題がなければ株主総会での承認を経て、新設分割計画書に沿って分割が行われます。したがって、新設分割計画書の作成は、新設分割にとって非常に重要なものです。
新設会社は、まだ設立されていないため、新設分割計画書を作成するのは、事業を分割する会社ということになります。
新設分割計画書の記載項目
新設分割計画書の記載項目については、会社法第763条に規定されています。主な内容は以下のとおりです。
①新設分割設立会社の目的、商号、本店の所在地及び発行可能株式総数
②新設分割設立株式会社の定款で定める事項
③新設分割設立株式会社の設立時取締役の氏名
④新設分割設立株式会社が新設分割により新設分割をする会社から承継する資産、債務、雇用契約その他の権利義務に関する事項
⑤新設分割設立株式会社が新設分割に際して新設分割会社に対して交付するその事業に関する権利義務の全部又は一部に代わる当該新設分割設立株式会社の株式の数又はその数の算定方法並びに当該新設分割設立株式会社の資本金及び準備金の額に関する事項
参照:e-Gav「会社法」
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=417AC0000000086#5055
新設分割計画書記載での注意点
上記の記載項目のうち、①から③については、新たに会社を設立するときと同じ項目になります。
①は設立する会社の商号や住所、資本金の額です。
②は定款であり、会社の目的に承継する事業が網羅されていなければなりません。加えて、新設会社で想定される事業についても目的に加えておいたほうが良いでしょう。
③は新設会社での取締役の氏名です。
この中で重要となってくる項目は④と⑤となります。
④において、新しい会社に移管する事業全体を定義します。資産や債務といった資本的な項目から、雇用関係や取引先との関係など契約関係を詳細に定めておく必要があります。新会社の事業にとって大切な部分ですので、漏れのないようにしましょう。税制の適格要件というものがありますので、確認が大切です。この税制適格要件を満たさなければ、譲渡された資産などにつき、譲渡益課税がされることもあるので注意しましょう。
⑤においては、分割する対価について定義します。対価といっても、新設会社には支払うお金がないため、新株を発行して事業分割をした会社に渡すことになります。この際、分割会社が完全支配関係を継続する継続保有要件を満たさないと税制適格とならないので、注意してください。
2社以上の会社が共同で新設会社を設立して行う共同新設分割においては、別途、注意が必要となります。共同新設分割の場合には独占禁止法の届出制度があり、共同設立分割の計画を公正取引委員会に届け出る必要があることがあるため、よく確認しましょう。
まとめ
会社分割で新設分割を選択した場合には、新設分割計画書は大切な役割を果たします。新設分割計画書は、会社法によって記載項目が決められていて難しい要件なども含まれているので、専門家に相談しながら新設分割計画書を作成しましょう。
ファイナンシャルプランナー・行政書士 青野 泰弘