スタイルのある生き方へシフトしたいビジネスパーソンのためのニュース・コラムサイト。
検索
独立ノウハウ・お役立ち

会社分割の手続きとは? 会社分割の種類や流れを解説します

会社分割の手続きとは? 会社分割の種類や流れを解説します

昨今、日本の企業では、新規事業や市場への参入、企業再編、経営不振企業の救済など、さまざまな目的でM&A(企業の買収や合併を行うこと)が実施されていて、中小企業でもその件数はここ数年来増加しています。

M&Aで使われる手法はいくつかありますが、その中のひとつが“会社分割”です。

会社分割とは

会社分割とは、会社が事業に関して有している権利義務(資産、負債、契約関係など)の全部または一部をほかの会社に継承させる行為のことです。会社分割には、大きく分けて“新設分割”と“吸収分割”の2通りの方法があり、いずれも手続きの方法などは“組織再編行為”として会社法で定められています。
今回は新設分割と吸収分割について、それぞれの意味や手続き方法の流れを中心に解説していきます。

会社分割手続きにおける流れ

<新設分割>
新設分割とは、会社が持つ事業の権利義務の全部または一部を新設した会社に承継させる行為です。おおまかな手続きの流れは以下のようになります。

①新設分割計画書を作成する
分割会社は、新たに設立する会社(新設会社)の目的や、新設会社へ分割する資産や権利義務に関する項目などの一定事項を決めます。取締役会を設置する会社では、計画書について取締役会での承認が必要です。

②必要書面の備置
分割会社は書面の備置開始日から新設分割設立会社の成立日後の6ヶ月を経過するまで、一定の事項を記載した書面などを分割会社・会社設立後の新設会社の本社に備え置きます。

③債権者保護に関する手続き
分割会社は債権者に対して「官報による公示」「個別への通知」などを行わなければなりません。債権者は、分割の実施に対して異議がある場合、異議申し立てを行う権利があります。

④株主総会で承諾を得る
分割会社は、新設分割の登記前に株主総会を開催して分割計画書に関する特別決議を行う必要があります。株主総会の際に新設分割に反対する株主がいた場合は、対象株主に株式買取請求権が与えられます。

⑤会社の登記
登記申請は、分割会社(変更登記)と新設会社(会社設立登記)を同時に行わなければなりません。新設分割の効力発生日は登記申請を完了した日となります。

⑥事後開示書類の備置
登記手続き完了後、一定の事項について記載した書面などを効力発生日から6ヶ月の間、分割会社、新設会社それぞれの本店に備え置きます。

<吸収分割>
吸収分割とは、事業や権利義務の全部または一部を分割後、ほかの既存会社に承継させる行為です。手続きの流れは以下となります。

①分割会社と承継会社の間で所定の事項につき“吸収分割契約”を締結する
分割会社・承継会社に取締役会がある場合は、締結に関し取締役会の承認が必要です。

②必要書面の備置
分割会社と承継会社は、所定の備置開始日から効力発生日の後6ヶ月経過日まで、一定の事項について記した書面などをそれぞれの本店に備え置きます。

③債権者保護に関する手続き
新設分割の場合と同じです。
分割会社は債権者に対して「官報による公示」「個別への通知」などを行わなければなりません。債権者は、分割の実施に対して異議がある場合、異議申し立てを行う権利があります。

④株主総会で承諾を得る
分割会社は、吸収分割の登記前に株主総会を開催して吸収分割契約に関する特別決議を行う必要があります。株主総会の際に新設分割に反対する株主がいた場合は、対象株主に株式買取請求権が与えられます。

⑤分割会社・承継会社双方にて変更登記を行う
吸収分割の効力発生日は、契約締結の際に定めた期日となります。また、登記手続きは効力発生日より2週間以内に行わなければなりません。

⑥事後開示書類の備置
登記手続き完了後、一定の事項について記載した書面などを効力発生日から6ヶ月の間、分割会社、承継会社それぞれの本店に備え置きます。

会社分割手続きにおける注意点

会社分割の手続きは、すべての手続きが終了するまでには最低でも数カ月程度の時間を要し、また手続きが順調に進まず登記希望日に効力が発生しなかった場合、その後の事業計画や実行に狂いが生じる可能性があります。手続きをスムーズに進行させるには、必要事項の一覧表やスケジュール表を作成するなどして、早い段階から準備を進めておくことが大切です。

会社分割を専門家に依頼する理由

会社分割の手続きは、会社法で定められたとおりに行う必要があります。そのほか、ケースによっては従業員に対する説明や許認可の引き継ぎなど、会社法で定めた以外の必要事項についても同時に進めていかなければなりません。書類の作成には専門的な知識が必要であることが多く、実務面において煩雑なスケジュールの作成や管理の困難さが伴います。そのため、会社分割を行う場合、早い段階から専門家に相談したり、手続きの実務を依頼したりする企業が存在します。

まとめ

以上、会社分割の種類や手続き方法について説明しましたが、詳細はケースバイケースのため、すべての対象会社が上記の手順に合致するとは限りません。手順の流れや注意点についての理解は必要ですが、実行する場合は、事前に専門家へ相談することもひとつの方法となるでしょう。

参考:中小企業著「2018年版中小企業白書・M&A件数の推移」
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H30/PDF/chusho/04Hakusyo_part2_chap6_web.pdf

PROFILE

FP・社会保険労務士 木村政美

2004年に、行政書士・社会保険労務士・FP事務所の「きむらオフィス」を開業。2017年より、ダイヤモンドオンラインにてコラム連載を持つ。年金や個人のマネープランの相談・講習、企業向けのメンタルヘルス研修など幅広い分野で活動している。

アントレ 独立、開業、起業をご検討のみなさまへ

アントレは、これから独立を目指している方に、フランチャイズや代理店の募集情報をはじめ、
さまざまな情報と機会を提供する日本最大級の独立・開業・起業・フランチャイズ・代理店募集情報サイトです。