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株式譲渡にともなう税金について! 発生する税金の種類や計算方法を紹介します!

株式譲渡にともなう税金について! 発生する税金の種類や計算方法を紹介します!

個人や法人が所有する株式等を譲渡する場合には、所得税や法人税などが課税されます。

株式等の譲渡が個人間で行われる場合、個人・法人間で行われる場合と法人間で行われる場合で、税金の計算方法や注意点が異なってきます。

ここでは税理士である筆者が、株式等の「売り手が個人の場合」を中心に、税金の種類や計算方法を解説していきます。

M&Aで株式譲渡をした場合の税金

M&Aとは、Mergers and Acquisitions(合併と買収)を意味し、事業承継方法のひとつとして昨今注目を集めています。

一般的には「事業の売買」と「事業の統合」を指します。

中小企業の場合、多くは株式譲渡もしくは事業譲渡の方法によって事業承継が行われます。

今回は“株式譲渡”の方法に焦点を当て、M&Aで株式譲渡を行った場合の税金について、その取り扱い方を紹介します。

発生する税金の種類および税率

売り手が個人の場合と法人の場合で、整理して考えてみましょう。

①株式の売り手が個人の場合

株式譲渡の方法によりM&Aを行った場合、通常その売り手はその会社の株主である個人となります。
株式譲渡が行われた場合は、株主である個人は買い手側である法人から、現金を受け取ります。その際、株式の譲渡益に対して、ほかの所得とは区分して、下記通り税が課税されます。

・15%の所得税(2037年までは復興特別所得税もあわせて15.315%)
・5%の住民税の計20%(2037年までは復興特別所得税もあわせて20.315%)

このようにほかの所得と区分して課税する制度を、「申告分離課税制度」と呼びます。

②株式の売り手が法人である場合

売り手が法人という場合も確認しておきましょう。
売り手が法人の場合でも、譲渡益の計算方法については基本的に個人と同様になっています。異なるのは、個人のようにほかの所得と区分して税金が計算されるのではなく、本業等すべての利益と合計して下記が課税される点です。

・法人税
・地方法人税
・法人住民税(都道府県および市区町村)
・法人事業税
・地方法人特別税

法人の場合、その法人の規模や利益の金額により税率は異なりますが、全税率の合計はおおよそ24%~42%程度となります。

株式譲渡で発生した譲渡所得税の計算方法

株式等の譲渡所得等の概要

株式等を譲渡した場合には、その株式等の譲渡を「一般株式等に係る譲渡所得等の金額」または「上場株式等に係る譲渡所得等」の金額に区分します。
そして、それぞれについて、総収入金額からその株式の取得価額や借入金の利子、売買委託手数料などの譲渡費用の合計を控除して譲渡所得の金額を計算していきます。

株式等の譲渡所得等の総収入金額

“株式等の譲渡所得等の総収入金額”は、原則その株式等の譲渡の対価として、その年において「収入すべき金額」を指します。
ここでの「収入すべき金額」には、“売却はしたが代金が未回収”である場合の未回収の金額も含まれるので注意してください。

株式等の譲渡所得等の取得費

株式等の譲渡所得等による取得費の金額は、原則、その株式等を取得したときに支払った“払込代金や購入代金”と“購入手数料や購入時の名義書換料”など、その株式等を取得するために要したものとなります。
昔に購入したものや、相続で取得した場合など、その株式等の取得価額が不明の場合には、売却価額の5%を概算取得費として計算することも可能です。この概算取得費の規定は個人にしか適用がありません。

株式等の譲渡に係る主な特例

株式等の譲渡に係る所得に関する特例のうち、主なものは次のとおりです。

・特定口座制度
・上場株式等に係る譲渡損失と上場株式等に係る配当所得等との損益通算
・上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除
・特定管理株式等が価値を失った場合の株式等に係る譲渡所得の課税の特例
・非課税口座内の少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税措置(NISA)
・未成年者口座内の少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税措置(ジュニアNISA)

該当するものがないか、確認しておきましょう。

国税に関する相談は、国税局電話相談センター等でも対応してくれます。税金についての相談はそちらも参考にしてみてください。
税についての相談窓口

参考:国税庁「No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)」

非上場企業の株式譲渡で発生する税金

非上場企業の株式を譲渡した場合には「一般株式等に係る譲渡所得等の金額」の区分に該当します。上記で解説した計算方法により計算した譲渡益に対して、20.315%の税率により計算された所得税等の税額が課税されます。

株式譲渡には確定申告が必要なのか?

株式譲渡を行った場合、譲渡益が発生したら原則、所得税等の税金が課税されます。そのため、譲渡益が発生する場合には、その売買をした年の翌年3月15日までに確定申告を行い、納税しなければなりません。ただし、「源泉徴収選択口座を有する居住者等」で「上場株式等に係る譲渡所得等」の金額を有しているなど、一定の要件を満たす場合には「申告不要の特例(確定申告を要しない上場株式等の譲渡による所得)」の規定を選択して適用することにより、確定申告が不要となる場合もあります。

参考:国税庁「第9 特定口座内保管上場株式等の譲渡による 所得等の源泉徴収事務」

まとめ:株式譲渡の税金は事前に確認しておこう

今回は個人における株式譲渡にともなう税金について解説をしてきました。株式譲渡についてはここで紹介した以外にもさまざまな注意点が存在します。今回は株式譲渡が適正な価格で行われた場合を前提に説明をしましたが、適正な価格より高額な金額で譲渡された場合や、逆に安価な金額で譲渡された場合などにおいては、低額譲渡による“みなし贈与の規定”が適用されたり、みなし譲渡の規定が適用されて利益がないにもかかわらず税金が課税されたりと、その取り扱いが異なります。
また、売り手・買い手が個人なの法人なのかでも異なってきます。知らなかったがために不要な税金を支払わないようにするためにも、株式譲渡を行う場合には必ず事前に税務署、あるいは税理士に相談のうえ実行することをおすすめします。

PROFILE

冨川 和將

税理士・FP2級
全国青年税理士連盟 法対策部副部長。
起業支援、創業支援、会社設立支援、節税対策や、資金繰り計画を含めた銀行対策による融資のお手伝い、税理士の1%も経験していない、税務訴訟の補佐人としての経験を生かした税務調査対策・対応まで、幅広く経営をサポートしている。

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